Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (Start-up)
本年度は、西鶴と団水の俳諧・浮世草子諸作品の分析作業を中心に行った。西鶴晩年の俳諧には当時の流行を踏まえた疎句化の傾向が認められ、それが浮世草子の創作活動と関係することについては「西鶴晩年の俳諧と浮世草子」(『東京大学国文学論集』2号、2007年5月)でその見通しを述べたが、今年度はさらに、西鶴作浮世草子が『難波みやげ』(菊子編、元禄6年刊)など複数の雑俳書に与えた影響の諸相を通観・分析し、上記の見通しを具体的に裏付ける調査結果を得た。また、特に『俳譜団袋』(団水編、元禄4年刊)所収西鶴・団水両吟半歌仙2巻の成立事情については、元禄俳諧との隔絶を西鶴が意識し、歌仙を半ばで中断せざるをえなかったものと従来見なされてきたが、当該半歌仙ならびに他の西鶴・団水作の分析により、西鶴の俳諧と、元禄当流の俳諧師として活躍中であった団水の俳諧とは、俳論上のみならず実作面でも関連性を有しており、西鶴晩年の俳諧が元禄俳諧ひいては蕉風俳諧と相関する面をもつことも分かった。本年度の研究は主に西鶴・団水作の内容分析に焦点をあてたものであったが、両者の特徴をより正確に捉えるには、他の俳人との相互影響関係についても調査対象をさらに広げて検討する必要がある。来年度は、国内外の各所蔵機関における資料調査・分析を継続しつつ、本研究の成果を一連の論文にまとめ発表する予定である。以上、新たな検討課題が浮上したものの、ほぼ当初の予定通り研究を進めることができた。なお、その他の研究成果としては「<作品の研究史>『西鶴織留』」(『西鶴と浮世草子研究』3号、笠間書院、2008年刊行予定)の執筆がある。