Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (Start-up)
浮遊粒子状物質の一つであるディーゼル排気微粒子は、大気汚染の主要成分であり、呼吸器系・循環器系・免疫系・生殖器系への影響を及ぼすことが明らかにされている。ディーゼル排気ガスにはさまざまな粒径の粒子が含まれており、体内での挙動は粒径により異なるが、ディーゼル排気中のナノ粒子(ナノDEP)の毒性は未だほとんど明らかになっていない。ナノDEPの長期曝露に伴う動脈硬化の発症も危惧されていることから、動脈硬化に関係のあるperoxisome proliferator activated receptor alpha (PPARα)に注目し、肝臓での脂質代謝と動脈での炎症を検討した。対照群(13.61μg/m^3)と、粒径23〜27nmのナノ粒子を含む24.49、36.25、133.69μg/m^3を、7週齢雄性F344ラットに1日5時間、週5日間、1カ月、2か月、3ケ月間吸入曝露を行った。曝露終了後、ラットを曝露チャンバーから取り出し、血清、大動脈、肝臓を採取した。血清中の炎症マーカーは1カ月曝露後濃度依存的に上昇していた。脂質代謝と炎症の両面で動脈硬化に関わるPPARα-mRNAやそのタンパク量、脂質代謝に関わるPPARα標的遺伝子-mRNAは肝臓で1ケ月曝露後のみ誘導されていたが、2ケ月、3ケ月曝露後変化は見られなかった。一方動脈中のTNFα-mRNAは、2ケ月、3ケ月曝露後濃度依存的に上昇していた。ナノDEP曝露によりPPARαは早期に誘導されるものの、その標的遺伝子が誘導されないため、脂質代謝の促進や抗炎症作用が十分に発揮されず、3ケ月曝露により中性脂肪の蓄積と動脈での炎症が始まるのではないかと考えられた。
All 2008
All Presentation (1 results)