Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (Start-up)
本研究課題では、ケミカルジェネティクス的手法を駆使し、肥満とがんの繋がりを分子レベルで解析することを目的とする。具体的には、細胞膜透過性かつ低分子量の、レプチン誘導性がん細胞増殖に対する阻害化合物の取得と、その化合物の持つ生物学的特徴の解明を目指す。初年度である平成19年度では、スクリーニング系の構築を行った。MDA-MB-231やMCF7細胞などの6種類の乳がん由来株化細胞を用い、組み換え体レプチンで直接処理した際の細胞増殖の速度変化を検討した。その結果、全細胞株でレプチンによる顕著な増殖促進は観察出来ず、レプチン処理による系では、化合物の取得が非常に困難であると判断した。そこで、レプチンの発現を正に制御する転写因子hypoxia inducible factor-1α(HIF-1α)に着目し、HIF-1α高発現細胞株選択的に細胞増殖を阻害する化合物の取得に切り替え、そのスクリーニング系を構築した。構築した系を用い、既に市販されている化合物(DNA作用薬、一酸化窒素供与剤、トポイソメラーゼ阻害剤、細胞骨格・細胞分裂阻害剤など)によるミニライブラリーでスクリーニングの予備検討を行った。その結果、陽性株選択的な阻害化合物は得られず、反対に陰性株でのみ選択的にカスパーゼを活性化する、又は増殖を阻害する化合物が複数得られた。すなわち、HIF-1α高発現株が薬剤耐性を有する可能性が示された。さらに、所有する全化合物ライブラリーを用いたランダムスクリーニングから、陽性株選択的に増殖阻害活性を有する化合物の取得に成功した。今後は、これら化合物の作用機序解明を行う予定である。