Research Abstract |
スターリングエンジン(以下,SEとしるす)は廃熱利用に適した高効率のエンジンである.しかし小型SEはSE本来の熱効率の良さを持っていない.その理由として,実用型SEで出力向上のために行われる作動ガスの高圧化が困難であることが挙げられる.作動ガス高圧化は,機械損失の増加,軸トルク変動の増加によるフライホイールの大型化への対策が求められる. 本研究では上記の問題を解決するため,改良型傾斜板機構,6気筒複動型構成,動力伝達用磁気継手を採用している.ピストン上下空間を利用する複動型はSEの高出力化のために採用実績の多い手法であるが,本研究で目指す廃熱利用エンジンでの採用例はほとんどない.低温度差熱源を利用する場合にはピストン駆動位相差は120度程度が望ましいが,その場合に複動型構成では6個のピストンを駆動することとなり機構が複雑になる.そこで申請者は傾斜板機構の一種である,Zクランク方式を改良した機構を採用した.Z型クランク軸の傾斜軸部に回転方向の運動を拘束したヨークを組み合わせる点は通常のZクランク方式と同様であるが,ヨークの運動拘束はフレームとボールリンクで連結する一般的な方法ではなく,ヨークに取付けた2個のローラベアリングがフレームに支持された各ガイド面を転動する方法とした.これにより6個のピストンを駆動する機構がわずか6個の転がり軸受(Zクランク軸受として2個,ヨーク軸受として2個,ヨーク拘束用として2個)のみで構成できた. 性能計測の結果,機械効率は最大正味出力時で70%程度の値を示した.この値は既存の実用型スターリングエンジンに近い値であり,提案手法の有効性を確認できた.現段階では既存品を流用した磁気継手の伝達トルク容量不足のために作動ガス加圧状態での運転確認はできていない.今後は十分なトルク伝達容量をもつ磁気継手に交換し,さらなる高出力化をめざす予定である.
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