Research Abstract |
目的 開口障害の多くは左右の症状に差がある.これまでの開口訓練器は歯列の両側同時に局所のみに圧が加わる開閉運動のみで,効率的な開口訓練が難しかった。昨年度は開口障害に左右差がある症例にも適応する開口訓練器を試作した.今年度はさらに改良を重ね試作し,開口障害患者に対し臨床応用した. 作用原理 ホタテ貝の殻を背中合わせにした形状を呈し,接する部分が支点となり,てこの原理で作用させるもので,支点と作用点が自由に可変することで,左右の症状に違いがある症例にも適応する. 方法 開口訓練器15セットをABS樹脂にて試作し臨床応用を行った.患者対象は,口腔悪性腫瘍術後4例,脳外科での側頭骨開頭術術後症例1例,顎関節症2例(顎関強直症1例),下顎骨骨折,顎変形症術後,下顎枝異物迷入摘出術後各1例,計10例の開口障害患者に対し,本開口訓練器の臨床応用を行った. 訓練方法は,患者自身がマウスピース部を口腔内に入れ,顎関節部に抵抗が感じられる位置まで両手にて握り開口させ5〜6秒間保持し,その後口を閉じ10秒間休み.このストレッチを5回で1セットとし1日5セット行うよう指導した.開口量はプラスチック製ノギスにて訓練前と訓練後の測定を患者自身が測定した.なお,臨床応用にあたっては当大学の倫理委員会の承認を得た. 成果 下顎骨骨折術後・顎変形症術後・顎関節症(1例),下顎枝異物迷入摘出術後の計4症例の開口量10〜15mmは,訓練開始10〜30日以内で開口量が35〜40mmに改善した.また,顎関節症の強直症例では開口幅は1〜2mmでほとんど改善は見られなかった. 悪性腫瘍術後の開口障害5症例の内4症例は訓練開始50日目で,開口幅が7〜10mmと経時的に改善が見られ,現在も訓練継続中である.しかし,術前術後の放射線療法による組織瘢痕化の強い1症例では,開口幅が1〜2mmとほとんど改善は見られなかった。 脳外科での側頭骨開頭術術後の開口障害例では,訓練120日目で開口量が10mmから38mmと経時的に改善が見られ,現在も訓練継続中である. 今後の課題 顎関節強直症や放射線照射による組織瘢痕化の強い症例で,材質による強度不足と思われるマウスピース基部より破折が延べ4例起こった.今後,材質の再検討が必要である.
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