Project/Area Number |
19H00607
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 一般 |
Review Section |
Medium-sized Section 8:Sociology and related fields
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Research Institution | Hitotsubashi University (2019, 2021) Asia University (2020) |
Principal Investigator |
小井土 彰宏 一橋大学, 大学院社会学研究科, 教授 (60250396)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北川 将之 神戸女学院大学, 文学部, 教授 (00365694)
森 千香子 同志社大学, 社会学部, 教授 (10410755)
宣 元錫 大阪経済法科大学, 公私立大学の部局等, 研究員 (10466906)
惠羅 さとみ 法政大学, 社会学部, 准教授 (10535165)
園部 裕子 香川大学, 経済学部, 教授 (20452667)
上林 千恵子 法政大学, その他部局等, 名誉教授 (30255202)
堀井 里子 国際教養大学, 国際教養学部, 助教 (30725859)
定松 文 恵泉女学園大学, 人間社会学部, 教授 (40282892)
平野 恵子 お茶の水女子大学, ジェンダー研究所, 特任リサーチフェロー (50615135)
眞住 優助 金沢大学, GS教育系, 講師 (50747582)
柄谷 利恵子 関西大学, 政策創造学部, 教授 (70325546)
伊藤 るり 津田塾大学, 総合政策学部, 教授 (80184703)
塩原 良和 慶應義塾大学, 法学部(三田), 教授 (80411693)
鈴木 江理子 国士舘大学, 文学部, 教授 (80534429)
飯尾 真貴子 一橋大学, 大学院社会学研究科, 講師 (50906899)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2021)
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Budget Amount *help |
¥43,160,000 (Direct Cost: ¥33,200,000、Indirect Cost: ¥9,960,000)
Fiscal Year 2021: ¥16,380,000 (Direct Cost: ¥12,600,000、Indirect Cost: ¥3,780,000)
Fiscal Year 2020: ¥12,740,000 (Direct Cost: ¥9,800,000、Indirect Cost: ¥2,940,000)
Fiscal Year 2019: ¥14,040,000 (Direct Cost: ¥10,800,000、Indirect Cost: ¥3,240,000)
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Keywords | 移民政策 / 出入国管理 / 国際労働移動 / 国際交渉 / 外国人労働者 / エスニシティ / 国境管理 / 統合政策 / 移民労働者 / 国際社会学 / 移民受入れ / 移民送出し / 国際比較 |
Outline of Research at the Start |
本プロジェクトの目的は、越境移動のグローバル化の中で、個別の送出し国の視点に立った移民政策の分析を乗り越え、移民受入れ国と送出し国の政策の相互関係を、その交渉・対立・妥協について検討することにある。この視点から、2018年に改定された入管法によって始まる新たな受入れがどの様な変動を引き起こすかを、国内における制度形成過程を分析しつつ、同時にベトナム、フィリピン、インドネシア等の国々との交渉過程と現地での送り出しの制度化の比較分析を行う。この上で、さらに日本とアジア諸国、合衆国とメキシコ、EUと周辺国という3大地域の対照を軸としながら、各国の国際比較を行う。
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Outline of Annual Research Achievements |
第1年度は、移民政策に関して後発的であるという点で日本と比較可能なスペインから代表的な研究者3名と世界的に著名な移民研究者を招聘し国際シンポジウムを開催した。他方アジアにおける調査に関しては、第1年度と第2年度に、恵羅・上林らはベトナムを訪問し、その技能実習生送り出し機関での訓練の実態と団体を取り巻く利害状況を調査した。他方、平野は、インドネシアにおける家事労働者や介護人材の育成とその国内への流し込みの制度的回路について調査を行った。以上より、関連分野への発信と研究連携への口火を切る一方、実証的に各地域での政策相互依存の実態解明への橋頭保づくりを行った。メキシコ-アメリカ関係については、第1年度に、小井土が北メキシコのティファナ市における難民収容施設の聞き取り調査を実施し、この結果北部における難民の状況が南部の国境規制と強く連動することが明確となった。これを受けて、コロナ緩和後の2022年度には、小井土と飯尾でメキシコ南部国境調査を実施した。小井土はチアパス州西部の太平洋側のタパチュラ市における難民の滞在施設と認定機関を訪問し、他方飯尾は、同州のメキシコ湾岸に近いタバスコ州とそれに近い国境地帯の施設とその支援NPOを訪問し、担当官や活動家からその状況を聞き取ることに集中した。メキシコは、それ自体が大きな移民送出し国であるとともに、長く中米他出身の移民の中継国として機能してきたが、アメリカとの相互作用の中でその中継国としての機能が、より選別的な移動管理の装置として発達してきていることが明確となった。この他、堀井の2022年度欧州調査などを含む多様な地域の調査を通じて、送り出し国と受け入れ国の相互作用の中で両者の間の媒介機能が変化しつつ、移動の中での選別のメカニズムが地域差を持ちながらもより複雑化し、移動プロセスの管理が強化されてきたことが浮かび上がってきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2021年度においては、合衆国及びメキシコにおける調査は、両国の規制に加えて日本からの渡航や再入国制限によって実施が不可能であったが、2022年度夏までに規制が緩和されてきたために、メキシコ内部での移動や難民たちへの聞き取りも可能となった。2022年夏の調査では、多数のメキシコ人研究者や現地日本人研究者の知識の提供とフィールドでの人的ネットワークへの参入のための協力関係の上に、メキシコ人補助者を雇用することなどにより南部国境で現地調査を含む両国境の多面的な調査が可能となった。南北での聞き取りにより、南北国境で急激に増えてきている難民の置かれた状況とメキシコ政府のそれへの選別的な対応、それを支える国家機能の整備、更にはそれに関連したメキシコの移動者に関するスタンスが確認できた。この一連のプロセスの中で、メキシコが対米関係における自己の位置づけを変化させ、中南米他からの人間の移動に関するメキシコの規制体制=移民レジームが大きく構造転換してきたことが浮かび上がってきた。旧来メキシコに関しては、移民送り出しイメージが強く、国境管理についてもアメリカ側の打ち出す方針への受動的対応というイメージが強かったが、今回の調査により、メキシコと越境移動の関係についての既存の理解の限界を大きく乗り越え、それを実証的に地域における国家の制度的な機能とその組織的執行の実情のレベルで解明した点は、計画当初以上の成果であるとともに、2023年時点で進行しているアメリカ合衆国の難民移民についての政策的ジレンマと論争を理解するために、今後日本の中で数少ない実証的かつ理論的な知見を提供できると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、合衆国-メキシコの政策相関関係に関しては、小井土・飯尾による南部国境と同地域での難民に関する事実発見、アジアにおける技能実習生・特定技能労働者の日本への送り出しの媒介メカニズムの分析、それからシェンゲン域内への外部からの移民・難民の受け入れ選別についての調査結果、といったこれまでの現地調査を踏まえた上で、中継国政府の移動に関する政策の変容、国際機関やNGOのそこへの関与、送り出し国の地域開発と移民をめぐる歴史的な文脈の研究といった多角的な視点によって研究を進め、調査の結果について理論的構造的に考察を進める。 そのうえで2023年度に予定している科研費メンバー研究会で複数回口頭報告を行い、他の送り出し-受け入れ国間の相互連関と比較を進めることで、各地域での送り出し国と受け入れ国間の関係のもつ独自性と、現代における国境規制の相関構造の間で共通する論理を浮き彫りにしていくことを目指していく。23年度末に予定されている各地域での送り出し・受け入れの相関関係の総合比較のための国際的ワークョップにおいても発表を行い、国際的なこの問題の権威であるFaist 教授からの広い世界的な文脈の中でのその意義に関するコメントを受けつつ、この最新状況のもつ理論的意義を検討し、今後の日本と世界にとっての含意についての考察を進めていく。研究グループ内の討議と国際的な相互公開討論を踏まえて、議論を深め、英語論文として出版するとともに、他の地域の研究と合わせて成果報告書を作成し、最終的には双方向的な移民政策についての新しい視点を持った専門書としての公刊を目指していく。
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