Project/Area Number |
19H00629
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 一般 |
Review Section |
Medium-sized Section 10:Psychology and related fields
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山本 真也 京都大学, 高等研究院, 准教授 (40585767)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
リングホーファー 萌奈美 帝京科学大学, 生命環境学部, 講師 (20767339)
徳山 奈帆子 京都大学, 霊長類研究所, 助教 (60779156)
伊谷 原一 京都大学, 野生動物研究センター, 特任教授 (70396224)
王 牧芸 東京大学, 定量生命科学研究所, 特別研究員 (70781152)
平田 聡 京都大学, 野生動物研究センター, 教授 (80396225)
足立 幾磨 京都大学, ヒト行動進化研究センター, 准教授 (80543214)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
|
Budget Amount *help |
¥45,370,000 (Direct Cost: ¥34,900,000、Indirect Cost: ¥10,470,000)
Fiscal Year 2023: ¥6,240,000 (Direct Cost: ¥4,800,000、Indirect Cost: ¥1,440,000)
Fiscal Year 2022: ¥8,320,000 (Direct Cost: ¥6,400,000、Indirect Cost: ¥1,920,000)
Fiscal Year 2021: ¥8,320,000 (Direct Cost: ¥6,400,000、Indirect Cost: ¥1,920,000)
Fiscal Year 2020: ¥8,320,000 (Direct Cost: ¥6,400,000、Indirect Cost: ¥1,920,000)
Fiscal Year 2019: ¥14,170,000 (Direct Cost: ¥10,900,000、Indirect Cost: ¥3,270,000)
|
Keywords | 社会性の進化 / 偏狭な利他性 / 集団間闘争 / 類人猿 / 家畜化 / 集団行動 / 集団性 / 集団心理 / 重層社会 / 人間性の進化 / オキシトシン / 自己家畜化 / 集団内協力 / 集団間競合 / 伴侶動物 |
Outline of Research at the Start |
戦争と協力。この「ヒトらしい」両極的な性質の進化的起源を、実証研究に基づく知見を通して明らかにする。ヒトは集団で殺し合いをすることもあれば、高度な協力関係を構築することもできる。このような性質はどのように進化したのだろうか。チンパンジー・ボノボを中心とする進化の隣人、家畜化を通してヒトという他種とさえ親和的な関係を築くようになったイヌ・ウマをはじめとする伴侶動物を通して、比較認知科学の視点から考察する。自然環境で自発的に形成される社会集団の研究、および飼育下での綿密な認知実験、これらを組み合わせることで、多層的な視点から戦争と協力の進化について明らかにする。
|
Outline of Annual Research Achievements |
戦争と協力。この「ヒトらしい」両極的な性質の進化的起源を、実証研究を通して明らかにするため、自らが提唱した「協力行動の二元起源仮説」(個体間の寛容性によって2個体間の協力行動は育まれる(ボノボ型)が、集団でまとまる協力行動は集団間の競合関係によって促進された(チンパンジー型)とする説:山本2021: Yamamoto 2020)に沿って研究を展開した。オキシトシン投与実験および未知個体音声プレイバック実験によって得られたチンパンジー・ボノボ間の種差(オキシトシン投与によってチンパンジーはアイコンタクトが減り、未知オス個体への注意が増加するのに対し、ボノボではアイコンタクトが増え、未知メス個体への注意が増加する。また未知個体の音声を聞くと、両種とも集団内の結束・親和性が高まるが、その傾向がチンパンジーでより強い。)を基に、ボノボが2個体間の協力関係をベースにしたbottom-up型の協力社会を築くのに対し、チンパンジーが集団帰属意識をベースにしたtop-down型の協力社会を築いているという仮説を提唱した(Brooks &Yamamoto 2022)。先の「協力行動の二元起源仮説」をさらに発展させた議論を展開している。 ウマにかんしては、重層社会における群内・群間相互作用の分析を継続し、ウマ重層社会における集団構成の6年にわたる経時変化をまとめて公表した(Mendonca et al. 2022)。また、飼育下では、集団放牧されているウマ全個体にオキシトシンを投与し、集団行動・社会ネットワークの変化を調べた。個体間関係が均一化され集団としてのまとまりが高まるといった結果が得られている。継続して分析を進めている。 これらの成果を、査読付き英文学術論文8本(研究代表者分のみ)等にまとめて発表した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
集団性、とくに集団間競合と集団内協力をキーワードに、類人猿2種・伴侶動物2種を主対象とした統一的な比較研究を実施する研究環境を整えた。自然環境で自発的に形成される社会の研究、および飼育下での綿密な認知実験を組み合わせるという世界的にもユニークな研究である。とくに野生ボノボの研究では、1970年代からの長期調査が続く熱帯多雨林での研究(分担者の徳山奈帆子が担当)だけでなく、これまでほとんど研究がおこなわれていない乾燥林でのボノボの行動調査を軌道に乗せることができた(Onishi et al. 2020)。2020年~2022年はコロナ禍の影響を大きく受けたが、国内調査に重点をシフトさせ、海外調査についてはこれまでに収集したデータの分析をおこなうことで、研究計画全体に大きな遅れや問題は出ていない。論文執筆・公表も順調である、十分な成果をあげることができている。すでに、主要動物種4種のすべてで論文を公表できていることがその証である。種間比較にかんしても、チンパンジー・ボノボ・ウマ・イヌ・ネコのすべての種で安全に投与できる手法を確立し、直接種間比較できる研究環境も整えた。すでに実験もいくつか実施済みであり、近く論文として公表できる見込みである。種内個体間の関係性の変化だけでなく、ヒトとの種を超えた絆形成メカニズムの解明にもホルモンレベルからアプローチしている。
|
Strategy for Future Research Activity |
引き続き、類人猿2種・伴侶動物2種を主対象に、自然環境下での観察研究と飼育下での実験研究を組み合わせて戦争と協力の進化について解明を進める。海外での調査も徐々に再開しはじめている。野生ボノボの調査地には、2022年度に分担者(伊谷・徳山)が渡航し、研究再開の準備をおこなった。コロナ禍で日本人が海外渡航できなかった間も、現地カウンターパートとの連携は維持されていたおかげで、最低限のデータ収集は継続できている。これらのデータ分析もこれから加速していきたい。 飼育下の研究では、私たちがこれまでに確立したオキシトシン経鼻投与の手法を用い、5種で比較研究ができる環境を整えた。集団全個体にオキシトシンを投与して社会ネットワークの変化を調べるなど、世界でも例がない最先端の研究を推進したい。また、ウマについては、高い社会的知性とともに重層社会というヒトとの共通点が見いだしてきた。このような複雑な社会でみられる彼らの集団意識というものを、観察・実験を通して明らかにする。 また、新たな展開として、ニホンザルやゾウの研究にも着手している。ニホンザルについては、コロナ禍においても国内でできる・個体情報や社会関係に関するデータの蓄積がある・餌付け群のためエサを用いた実験ができるというメリットを活かし、集団のネットワーク分析とフィールド認知実験を組み合わせるという新しい研究手法の展開を試みている。ゾウに関しては、高い知性を持つと言われながらも、彼らの認知にかんして実証的な研究がほとんどされてこなかった。野生下での観察と飼育下での実験を組み合わせ、新しいゾウ認知科学を立ち上げる。また、野生ゾウは重層社会を築くとも言われており、私たちが野生ウマを対象に開発したドローンでの研究手法を適用することで、重層社会の定量的な種間比較というこれまでにない研究の展開が見込まれる。
|