Project/Area Number |
19H01038
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 一般 |
Review Section |
Medium-sized Section 51:Brain sciences and related fields
|
Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
長谷川 功 新潟大学, 医歯学系, 教授 (60282620)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
飯島 淳彦 新潟大学, 自然科学系, 教授 (00377186)
松尾 健 東京都立神経病院(臨床研究室), 脳神経外科, 医師 (10733941)
足立 雄哉 新潟大学, 医歯学系, 助教 (40625646)
鈴木 隆文 国立研究開発法人情報通信研究機構, 未来ICT研究所脳情報通信融合研究センター, 室長 (50302659)
中原 潔 高知工科大学, 情報学群, 教授 (50372363)
南本 敬史 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 量子医科学研究所 脳機能イメージング研究部, グループリーダー (50506813)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
|
Budget Amount *help |
¥45,370,000 (Direct Cost: ¥34,900,000、Indirect Cost: ¥10,470,000)
Fiscal Year 2022: ¥9,490,000 (Direct Cost: ¥7,300,000、Indirect Cost: ¥2,190,000)
Fiscal Year 2021: ¥10,140,000 (Direct Cost: ¥7,800,000、Indirect Cost: ¥2,340,000)
Fiscal Year 2020: ¥11,830,000 (Direct Cost: ¥9,100,000、Indirect Cost: ¥2,730,000)
Fiscal Year 2019: ¥13,910,000 (Direct Cost: ¥10,700,000、Indirect Cost: ¥3,210,000)
|
Keywords | 霊長類 / 心の理論 / 皮質脳波 / 言語 / 文字 / マカクザル / 誤信念 |
Outline of Research at the Start |
我々は、脳科学のモデル動物としてヒトに最も近縁なマカクザルが、心の理論や言語等のヒトに固有と信じられてきた高次認知能力の下位機能に類似した行動を学習できることを示唆する手がかりを得た。しかし、これらの能力がヒトと相同の脳回路基盤を有するとは限らない。この問題を検証するため、マカクザルを対象として皮質脳波・ニューロン活動の記録と化学遺伝学の実験を進め、ヒトの機能的磁気共鳴イメージングの結果と比較する。これにより、他者の誤った信念の認知や、言語の下位機能を支える霊長類脳回路の動作原理と、これらの機能不全による精神神経疾患の病態機序を研究するモデル動物としてのマカクザルの有用性および限界を見極める。
|
Outline of Annual Research Achievements |
目標(1)のDREADDsの分子イメージングでは、脳画像データの標準化とDREADDs発現部位の特定を進め、前頭前野と視床枕下部の結合が示唆された。しかしベクター注入前のデータの集団解析では、内在性信号強度の個体差が非常に大きいことが判明し、同一個体の導入前後での比較の必要性が示唆された。電気生理実験では、ベクター注入部位周辺において局所DCZ注入による神経抑制効果が確認され、経路選択的な抑制実験の準備が進んだ。組織学的検証では、逆行性に輸送された投射元の細胞の確認を試みたが難航し、一次抗体の不良が疑われた。代替策として標識タグHAを組み込んだ新規ベクターを作成した。またヒトを対象とした統合的な潜在的誤信念認知のパラダイムを開発し、定型発達の成人を対照とした行動実験を進めた(Onda et al, submitted)。 目標(2)では、駆け引き課題を用いたヒト被験者の行動を説明する計算論的行動モデル(Zhao et al FENS 2022)をもとにfMRIデータの解析を進め、前頭前野内側部が対戦相手の信頼度に関与することが示唆された。また、その信頼度と社会的文脈を利用した行動選択には下前頭接合部が機能する可能性が示唆された。並行して進めているサルを用いた駆け引き課題の電気記録実験を行う予備実験として、皮質脳波電極を試作し、1頭のサルで留置手術の予備実験を行った。 目標(3)では、動画の内容を主語、動詞、目的語の組合わせとして表すサルの能力に関する行動学的検証を2頭目のサルでも進め、1頭目に皮質脳波電極を留置した。また、既存データの解析により、後下前頭皮質と背外側前頭皮質の事象関連電位に逆相の機能的相関があり、文字様記号の操作にともなって相関が強くなることを示唆する知見を得た(Liu et al, SFN 2022)。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1) 誤信念認知の責任脳回路同定、(2) 心の理論を操る駆け引き課題の開発による脳回路の種間相同性検証、(3) 文字/文字様記号の認知を担う脳回路の種間相同性検証、という3つの研究項目のうち、 (1)ではコロナ対策の隔日勤務によるマンパワー低下や動物/ヒトの移動制限によりDREADDs分子イメージングと組織学的手法による発現部位の確認は遅延したが、霊長類とヒトに適用可能な潜在的誤信念認知のパラダイムを開発し、定型発達の成人を対照とした行動実験を進めた(Onda et al, submitted)。 (2)では2頭のマカクザルを対象とした駆け引き課題の訓練を進めるとともに、ECoG電極を開発し、留置手術を試行した。駆け引き課題におけるヒト被験者の行動を説明する計算論的行動モデルを作成し、fMRI実験によって対戦相手の信頼度や被験者の行動選択に関わる賦活部位を見出して学会発表した。 (3)では、マカクザル前頭前皮質からの皮質脳波法による脳情報解読の方法論を開発した(Tanigawa et al, Cell Rep 2022)。またヒトを対象とした1文字連続提示課題を用いて、fMRIにて左下前頭皮質や側頭極に、文節の区切りで一過性に活動を低下する脳部位があり、一方楔前部、左角回、左背外側前頭前野の活動が負に相関していることが明らかになった(Kasedo et al Neuro2022)。 以上より、全体としては概ね順調に進展したと判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
(1) 誤信念認知の責任脳回路同定、(2) 心の理論を操る駆け引きに関わる脳回路の種間相同性検証、(3) 文字/文字様記号の認知を担う脳回路の種間相同性検証、という3つの研究項目ごとに、引き続きマカクザルを対象とした行動実験・電気生理実験とヒトを対象とした行動実験・fMRIを並行して進める。 今後は、(1) 当年度もDREADDsの分子イメージングと局所の化学遺伝学的抑制の電気生理学的効果の検証、および組織学的検証を進める。また定型発達および広汎性発達障害のヒトにおける潜在的誤信念認知能力に関する行動実験を進める。 (2)では、駆け引き課題中のヒト被験者の行動を説明する計算論的行動モデルを改良するとともにfMRIデータの解析を進め、駆け引きに関連する脳回路とその計算メカニズムを明らかにする。並行して進めているサルを用いた駆け引き課題の、皮質脳波法による電気記録実験を進める。 (3)では、初めて見た動画の内容を主語、動詞、目的語の組合わせとして表すサルの能力に関する行動学的検証を進め、サル2頭の結果をまとめる。また、電気生理データの解析を進め、文字様記号の操作にともなうサル後下前頭皮質の事象関連電位のパワーと背外側前頭皮質との間の位相差の変化に関する解析結果をまとめる。
|