Project/Area Number |
19H01143
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 一般 |
Review Section |
Medium-sized Section 63:Environmental analyses and evaluation and related fields
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
竹内 望 千葉大学, 大学院理学研究院, 教授 (30353452)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
植竹 淳 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 准教授 (40455473)
瀬川 高弘 山梨大学, 大学院総合研究部, 講師 (90425835)
米澤 隆弘 広島大学, 統合生命科学研究科(生), 教授 (90508566)
幸島 司郎 京都大学, 野生動物研究センター, 名誉教授 (60183802)
服部 祥平 東京工業大学, 物質理工学院, 研究員 (70700152)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥45,110,000 (Direct Cost: ¥34,700,000、Indirect Cost: ¥10,410,000)
Fiscal Year 2023: ¥5,850,000 (Direct Cost: ¥4,500,000、Indirect Cost: ¥1,350,000)
Fiscal Year 2022: ¥5,720,000 (Direct Cost: ¥4,400,000、Indirect Cost: ¥1,320,000)
Fiscal Year 2021: ¥5,980,000 (Direct Cost: ¥4,600,000、Indirect Cost: ¥1,380,000)
Fiscal Year 2020: ¥14,560,000 (Direct Cost: ¥11,200,000、Indirect Cost: ¥3,360,000)
Fiscal Year 2019: ¥13,000,000 (Direct Cost: ¥10,000,000、Indirect Cost: ¥3,000,000)
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Keywords | 雪氷生物 / 氷河 / 窒素循環 / 雪氷藻類 / 生態系 / アラスカ / アルベド |
Outline of Research at the Start |
極地や高山に分布する氷河の雪氷上には,雪氷生物という寒冷環境に適応した特殊な微生物が生息している.近年その雪氷生物の繁殖域が世界各地で拡大していることが明らかになってきた.しかし,その要因については不明点が多く,このことが雪氷圏の将来予測を不確実にしている. 本研究では,氷河での現地調査と同位体分析や最新のゲノム情報解析によって,雪氷生物の繁殖増加の要因を特定し,今後の地球環境の変化が氷河生態系に及ぼす影響を予測する.
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Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,昨年度から延期になっていたアラスカでの氷河での雪氷微生物モデル開発のための現地観測を実施した.アラスカのグルカナ氷河では,6-9月にかけて氷河表面の微生物過程の時空間変動の把握と暗色化への寄与の解明を目的とした調査を行なった.この期間に5回にわたって調査を実施し,微生物・色素分析用のサンプルを採取した.採取したサンプルは,千葉大学に輸送し,微生物量や不純物量の他,高速液体クロマトグラフィーによる藻類色素の分離・定量を現在進めている. 昨年度まで開発してきた雪氷微生物の繁殖モデルについて,今年度は氷河消耗域の暗色化の要因となっているAncylonemaという暗色の藻類について以前の観測結果をもとに数理モデル化を試みた.2014年のグリーンランドでの観測結果を使って,異なる標高ごとに繁殖曲線の再現を行なったところ,一定の増殖率で繁殖のタイミングや増加曲線を再現することが可能であることがわかった.この成果については,論文に出版した(Onuma et al., 2022). グルカナ氷河では,以前採取したサンプルを用いて,暗色化する藻類に寄生する微生物であるツボカビの解析もおこなった.その結果,氷河上で繁殖する藻類には,種に関わらずツボカビが寄生していることが明らかになった.さらに,暗色化に最も寄与する藻類には,複数種のツボカビが感染しており,その感染率は氷表面で約5%なのに対し,クリオコナイトホールでは約20%に達することがわかった.この結果から,クリオコナイトホールでツボカビ感染が進んでいることが明らかとなり,ツボカビ感染が暗色化を抑制する可能性があることが示唆された.この成果は,論文として発表した(Kobayashi et al., 2023).
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は計画通りアラスカの氷河での集中観測を実施することができた.融解期に5回に渡って氷河表面の連続的な雪氷サンプルの採取に成功した.また,気象観測も十分なデータが得られた.これらのサンプルやデータの解析により,氷河上の微生物過程の季節的な変化を明らかにできる見通しがたった.微生物分析も着実に進んでおり,特に氷河上の暗色藻類がツボカビの寄生の影響を大きく受けることが判明し,論文として公表した.微生物モデルの開発についても氷河消耗域のモデルについては論文として公表し,現在消耗域クリオコナイトホールモデルの開発も順調に進んでいる.氷河の窒素循環についても,氷河氷から融解に伴って現れる栄養塩の定量に成功し,安定同位体分析によって長期的な窒素循環が明らかになっており,論文化を目指している.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は最終年度であるので,アラスカの氷河で採取したサンプルの分析を終わらせて,モデルによる微生物繁殖域拡大の要因の解析を中心に行う.調査を行ったアラスカの氷河の微生物繁殖プロセスについて,特に氷河表面の暗色化に関わる藻類色素の空間分布に関わる成果を,論文として公表することを目指す.モデルに関しては,氷河消耗域のクリオコナイトホールモデルについて論文公表し,微生物モデルと組み合わせて,各パラメータの感度実験を行い,氷河消耗域の微生物繁殖拡大要因の解析に取り組む.氷河窒素循環については,引き続きアラスカの氷河のサンプルの分析を続けるとともに,中央アジア氷河の窒素循環の成果公表をめざす.
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