Project/Area Number |
19H01162
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 一般 |
Review Section |
Medium-sized Section 64:Environmental conservation measure and related fields
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Research Institution | Tokyo University of Marine Science and Technology |
Principal Investigator |
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 洋嗣 東京海洋大学, 学術研究院, 准教授 (10447592)
楊 偉 千葉大学, 環境リモートセンシング研究センター, 助教 (80725044)
近藤 昭彦 千葉大学, 環境リモートセンシング研究センター, 教授 (30201495)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥45,110,000 (Direct Cost: ¥34,700,000、Indirect Cost: ¥10,410,000)
Fiscal Year 2023: ¥7,670,000 (Direct Cost: ¥5,900,000、Indirect Cost: ¥1,770,000)
Fiscal Year 2022: ¥7,540,000 (Direct Cost: ¥5,800,000、Indirect Cost: ¥1,740,000)
Fiscal Year 2021: ¥7,930,000 (Direct Cost: ¥6,100,000、Indirect Cost: ¥1,830,000)
Fiscal Year 2020: ¥7,930,000 (Direct Cost: ¥6,100,000、Indirect Cost: ¥1,830,000)
Fiscal Year 2019: ¥14,040,000 (Direct Cost: ¥10,800,000、Indirect Cost: ¥3,240,000)
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Keywords | 生態系影響評価 / 地球温暖化 / 気候変動 / 魚類繁殖機構 / 指標種 / 耳石 / リモートセンシング / 性分化 |
Outline of Research at the Start |
魚類の性分化と生殖機能は水温などの外的環境要因の影響を受けやすい。例えば、適応範囲を超える高水温/低水温は性決定機構の撹乱(性転換や雌雄比の偏り)や生殖細胞の退行変性(生殖能力の低下)を引き起こすと言われている。地球温暖化と気候変動が問題視されている今、それら生殖障害による生物集団の絶滅、さらには周辺生態系の崩壊の可能性が危惧される。本研究では地球温暖化と気候変動が魚類資源とそれを取り巻く生態系に与える悪影響を正確に予測・評価するため、水温起因の生殖障害が生じやすい魚種に着目し、「魚類繁殖機構に及ぼす地球温暖化・気候変動影響の早期警戒指標」の構築を目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
異常水温が魚類生殖機構に与える影響評価系確立へ向け、本年度は①対象種野生集団における性転換個体の実態調査、②リモートセンシング・地理情報システムを用いた広範囲水温監視システムの構築、③遺伝生化学的手法を用いた水温起因性生殖障害アセスメントツールの開発、④魚類性決定機構における環境感受機構の解明、の4項目に取り組んだ。まず、①については、国内指標種であるギンイソイワシ野生集団を対象とし、2014-2021年の各年級群における性転換と水温および日長の因果関係を調査した。その結果、低水温は雌性転換を、高水温および短日条件は雄性転換を誘導することが明らかとなり、この結果は飼育試験においても確認された。②については、気象衛星のひまわり8号とLandsatから得られた情報を用い、国内調査地である霞ヶ浦および東京湾に特化した水温監視システムの開発に取り組んだ。③に関しては、異常水温下において指標種脳内で高発現する遺伝子を探索・検証した。飼育試験の結果、高水温条件下では昨年度単離された複数の副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモンおよびその受容体がストレスホルモン分泌に先駆けて脳内で上昇していることが明らかとなり、生殖障害の評価ツールとして有用であることが確認された。④に関しては、環境再現型室内飼育システムを用い、ぺへレイ野生集団の生息環境で実際に観測された水温・光環境を室内で再現し、それぞれの環境下で得られた受精卵のホルモン含有量の変化、雌雄比、および性転換率を検証した。その結果、産卵時の水温と卵内のエストロゲンおよびコルチゾール含有量とはそれぞれ負および正の相関が認められ、これら母親由来の各種ホルモンは母性因子として高水温の影響を助長し、次世代により高い雄への性転換率をもたらす可能性が示された。また、本種の雄性決定は雌性決定より速やかで、性転換過程はより時間を要することが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、世界各地に分布し、なおかつ水温起因の生殖障害が生じやすいとされている各種トウゴロウイワシ目魚類を指標種とし、地球温暖化と気候変動が魚類資源とそれを取り巻く生態系に与える悪影響を事前に予測するため、「魚類繁殖機構に及ぼす地球温暖化・気候変動影響の早期警戒指標の構築」を最終目的としている。本年度は、日本産沿岸性トウゴロウイワシ目魚類であるギンイソイワシの千葉県館山系群について、2014-2021年級群の耳石輪紋解析による孵化日推定を行い、性転換に与える水温および日照条件の影響調査を高精度で行うことができた。長年かつ詳細な調査の結果から、本集団の産卵生態の特性、特に産卵時期の年変動や繁殖活動に及ぼす海洋条件の影響を明らかにするうえで、野生個体の遺伝型(XX/XY)別の性決定に及ぼす水温と日照条件の影響について詳細な情報が得られた。さらに、野生集団から得られた情報を飼育実験によって検証することができた。海外におけるモニタリングの対象となっているアルゼンチン原産のぺへレイについても、2014-2019年級群の個体を対象に、ギンイソイワシと同様な調査を実施し、現在、結果の最終分析を行っている。遺伝生化学的手法を用いた水温起因性生殖障害アセスメントツールの開発に関しては、異常水温下において指標種脳内で高発現しているストレス関連新規遺伝子の関わりを検証し、魚類の生殖障害の評価ツールとして有用であることが確認された。加えて、リモートセンシングを用いた水温監視システムの構築では、Landsat衛星およびひまわり8号のデータを用いた国内フィールドの霞ヶ浦と東京湾の水温を高精度に可視化することができた。以上、2022年度の研究計画は、概ね予定通りに遂行され、成果も得られていることから、研究は順調に進展しているものと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究の最終年度である今年度では、これまでに複数年度で行われた各種のフィールド調査と、飼育実験による対象種の生殖機能に及ぼす水温等の影響調査のデータを集計・確認・比較分析を行う。この調査では、データロガーが設置され、継続的に環境情報(水温、塩分濃度など)が蓄積可能な海外(アルゼンチン、パンパ地方のチャスコムス湖他5か所)および国内(東京湾、館山周辺など)の各フィールドで定期的に対象種の野生個体を採集し、生殖腺の性状、生殖能力 (生殖細胞数)、産卵周期と繁殖可能な限界水温等を解析している。また、国内のフィールドで記録された水温データを用いて、これまでに開発されたリモートセンシングによる異常水温発生を監視するためのプロトコールを引き続き検証する。さらに、調査対象地で採集した野生個体を耳石年輪解析によって年級群別に分類し、1-4年度に開発された遺伝的性判別ツールを活用して各年級群の雌雄比や性転換率(遺伝的性・表現型性ミスマッチ)に関する情報を整理し、複数年度で比較することによって、環境要因(水温の短期・長期的変動など)との関連性を解析する。また、野生個体の耳石を用いた日輪解析と微量元素組成解析を実施し、それぞれから正確な孵化日の同定と経験環境履歴推定を行い、産卵季節や生息環境で実際に観測された水温等の環境情報・雌雄比・性転換率との関連性を検証する。一方、野生集団の生息環境で観測された水温・光条件を室内飼育施設で再現した実験から得られた、繁殖特性(特に繁殖障害や卵の各種ホルモン含有量の変化)と子孫の雌雄比や性転換率との関連性を解析する。遺伝生化学的手法を用いた生殖障害、特に性転換に関するアセスメントツールの開発については、生殖腺および中枢神経系における遺伝子発現の網羅的データから遺伝子ネットワークの制御機構をモデル化し、生殖障害の指標となり得る遺伝子を割り出す。
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