Project/Area Number |
19H01296
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 03010:Historical studies in general-related
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Research Institution | Seijo University |
Principal Investigator |
森 暢平 成城大学, 文芸学部, 教授 (20407612)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤川 直樹 神戸学院大学, 法学部, 准教授 (00632225)
茂木 謙之介 東北大学, 文学研究科, 准教授 (00825549)
瀬畑 源 龍谷大学, 法学部, 准教授 (10611618)
河西 秀哉 名古屋大学, 人文学研究科, 准教授 (20402810)
舟橋 正真 公益財団法人政治経済研究所, その他部局等, 研究員 (20790968)
加藤 祐介 一橋大学, 大学院社会学研究科, 講師 (20848478)
松居 宏枝 大阪公立大学, 大学院文学研究科, 都市文化研究センター研究員 (40837366)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥17,160,000 (Direct Cost: ¥13,200,000、Indirect Cost: ¥3,960,000)
Fiscal Year 2023: ¥4,030,000 (Direct Cost: ¥3,100,000、Indirect Cost: ¥930,000)
Fiscal Year 2022: ¥2,730,000 (Direct Cost: ¥2,100,000、Indirect Cost: ¥630,000)
Fiscal Year 2021: ¥3,250,000 (Direct Cost: ¥2,500,000、Indirect Cost: ¥750,000)
Fiscal Year 2020: ¥2,730,000 (Direct Cost: ¥2,100,000、Indirect Cost: ¥630,000)
Fiscal Year 2019: ¥4,420,000 (Direct Cost: ¥3,400,000、Indirect Cost: ¥1,020,000)
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Keywords | 立憲君主制 / 比較史 / 文化史 / 天皇制 / 日独関係 / ドイツ帝政 / ドイツ帝制 / 皇室 |
Outline of Research at the Start |
日本の立憲君主制研究は、「日本史」の枠組みで検討されるか、英国との比較のなかでしかなされてこなかったのが現状であり、日本の立憲制のモデルになったドイツとの比較があまり行われてこなかった。そのため本研究は、ドイツの公文書館に所蔵される史料および日本の宮内公文書館の史料を中心に、ドイツ人研究者を交えて、日独の立憲君主制の比較研究を行う。 具体的には、(1)新たな立憲君主制論の構築、(2)「宮廷システム」をドイツからの移転という視点で捉え直す研究、(3)皇族の位置づけをドイツの模倣という観点から再検討する研究の3つの分野から研究をすすめる。
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Outline of Annual Research Achievements |
本年は、松居宏枝による大礼服の研究、加藤祐介による皇室財政の変容、森暢平による旧皇族の御用地移住などの研究成果があがった。 松居は、明治期皇后の国産大礼服について考察を行った。当初ドイツからの輸入品であった皇后の大礼服は明治20年代、プロイセン王室のオットマール・モール夫妻が宮内省顧問として日本に招聘されることで、日本での国産品の製作が目指されることになった。論文は、夫妻の指導によって織元が大礼服を製作するに至る過程を明らかにした。 加藤の著作は、プロイセンの制度を模倣してつくられた皇室財政の変容を論じたものである。皇室財政は、欧州の制度を参考に、議会からの介入を防ぐという観点から制度化が進んだ。しかし、大正デモクラシーの状況や関東大震災、恐慌後の農村困窮に対し、皇室から支出される資金が増加していく。これは皇室が「公」の機関としての姿を国民に見せるうえで重要であったが、宮内省が小作争議に巻き込まれるなど矛盾をはらむようになっていく。 森の発表は、敗戦直後、皇族制度の解体によって、民間人となった旧皇族が、どのように財産を維持したのかに注目した。臣籍降下した旧皇族は、皇室財産のうえに居住することはできないはずである。しかし、戦後のある時期まで、御料地に住む者がいた。東久邇稔彦がその典型である。東久邇の妻が皇女であったことから、昭和天皇や宮内庁の温微的姿勢が東久邇の姿勢を助長させていた。永世皇族制は欧州の制度を模倣したものであったが、その解体過程においても、ドイツ帝政崩壊と同様の混乱があったのである。 このほか、瀬畑源、河西秀哉、茂木謙之介、舟橋正真が、現代皇室の問題を含め多様な論文を発表した。なかでも河西、茂木が海外での発表を行ったことは重要である。これらは日本独自の歴史と伝統と一般に考えられている近代皇室制度を、国際的な文脈のなかで捉え直した研究だと評価できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
海外での調査はやや遅れているが、遅れを取り戻しつつある。 当初計画では初年度からドイツの外交資料館で、史料の収集を実施する予定であったが、コロナ禍のなかで、計画を後ろ倒しにせざるを得なかった。その後、分担者の松居宏枝、藤川直樹がドイツでの調査を行った。とくに藤川は在外研修の機会を得ており、研究遅れを取り戻す予定である。代表者の森暢平もまた、2023年度からようやくリヒテンシュタインでの調査を開始し、継承法の日独比較を本格化させた。 ドイツ外交史料館における明治期の日本皇室関係資料は、研究期間中、インターネットで閲覧が可能になった。本科研にとって朗報であり、史料目録などの作成を進めている。 ベルギー在住の研究者、マルティン・コールラウシュ教授(ルーベン・カトリック大学)におる『スキャンダルのなかの皇帝』の翻訳作業は、半分ほど終了した。ドイツにおける帝室の大衆化が、日本の現象とパラレルであることがより明確になり、研究代表者、分担者の個別研究に資する史料となっている。残念ながら全部の翻訳が完成する予定にはないが、途中までであっても十分参照可能な翻訳史料となっている。 各研究者の国内史料を利用した研究は順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年の2024年は、これまで以上に海外調査に力を入れる。分担者の藤川直樹は2024年度在外研修中で、ドイツ諸邦の王室法規を調査している。明治の皇室典範にこれらがどのような影響を与えたかの比較検討を行っている。7月にズームで中間発表を行い、本科研参加のメンバーで討論する。 代表者の森暢平は、前年度に引き続きリヒテンシュタインでの現地調査を行う。リヒテンシュタインは、欧州王公室のなかで唯一、男子継承を維持する。森はリヒテンシュタインがこうした王室法規を維持する歴史的背景や政治的・社会的文脈について、現地でのインタビュー、新聞史料の調査を続ける。 分担者の茂木謙之介は昨年に引き続いて、海外において、天皇制のイメージの現代的変化についての討論活動を行う。インターネット時代における皇室像・王室像の変容は世界的な現象であり、日本だけの問題ではない。茂木は昨年、中国、韓国でのプレゼンテーションを行ったが、こうした活動を広げていく。 分担者の松居宏枝は、明治の大礼服の研究を引き続き行い、皇室儀礼が、大礼服という形でドイツから日本に移入された問題を研究していく。 分担者の河西秀哉、瀬畑源、舟橋正真、加藤祐介も、それぞれのテーマを追究していくが、その際、天皇制という制度が、国内で独自の発展を遂げたばかりでなく、欧州皇室との互換性を意識し、国際的な文脈のなかで運用されていたという共通の視点から研究を行う。
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