Project/Area Number |
19H01318
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 03030:History of Asia and Africa-related
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
宮宅 潔 京都大学, 人文科学研究所, 教授 (80333219)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐川 英治 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (00343286)
森部 豊 関西大学, 文学部, 教授 (00411489)
丸橋 充拓 島根大学, 学術研究院人文社会科学系, 教授 (10325029)
佐藤 達郎 関西学院大学, 文学部, 教授 (30340623)
鷹取 祐司 立命館大学, 文学部, 教授 (60434700)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥17,160,000 (Direct Cost: ¥13,200,000、Indirect Cost: ¥3,960,000)
Fiscal Year 2023: ¥3,770,000 (Direct Cost: ¥2,900,000、Indirect Cost: ¥870,000)
Fiscal Year 2022: ¥2,860,000 (Direct Cost: ¥2,200,000、Indirect Cost: ¥660,000)
Fiscal Year 2021: ¥4,290,000 (Direct Cost: ¥3,300,000、Indirect Cost: ¥990,000)
Fiscal Year 2020: ¥2,730,000 (Direct Cost: ¥2,100,000、Indirect Cost: ¥630,000)
Fiscal Year 2019: ¥3,510,000 (Direct Cost: ¥2,700,000、Indirect Cost: ¥810,000)
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Keywords | 中国古代 / 軍事史 / 暴力 / 制度史 / 社会史 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、近年における歴史学諸分野の動向をふまえ、秦漢~隋唐時代の軍事に関わる問題を幅広く取り上げ、新たな軍事史研究の可能性を切り拓くことを企図した共同研究である。主な論点は次の通り。1)国制における「武」の位置づけ:軍事を軸とした諸制度の再検討。2)社会の縮図としての軍事組織:社会構造が軍隊に与えた影響の分析。3)社会の統合と軍事イデオロギー:軍隊生活・戦争の記憶が社会に与えた影響の分析。4)思想課題としての戦争:中国古代の戦争観、とくに「義戦」「攘夷」をめぐって。 これらの問題群を、「武」(=公認された暴力)が国家のどこに格納され、社会に如何なる影響を与えたのかという視覚から分析する。
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Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に引き続き、新出史料の読解を進めるとともに、メンバーによる研究発表を行い、相互に意見を交換し、共同研究の方向性をさらに固めていった。 新史料の読解については、京都大学・人文科学研究所において毎週研究会を開催し、岳麓書院所蔵簡の秦律令を読み進め、訳注を作成した。本年度に会読した条文の一部は、「岳麓書院所藏簡《秦律令(壹)》訳注稿 その(四)」として、『東方学報』京都第96冊に発表した。そのなかには、秦による征服戦争が完了した後、軍功の有った兵士に恩賞を授ける際の手続に関する条文もあり、統一後の秦が抱えていた諸課題について知るうえで、重要な手がかりになるものである。 研究発表については、佐川・鷹取・佐藤・森部が各自の研究テーマに関して順次報告した。たとえば佐川は「軍功と賜爵―秦漢二十等爵制の考察―」という題目で口頭発表し、軍功褒賞として始まった爵制が、次第に変容してゆく過程に分析を加えた。また鷹取は、「漢代の兵役義務と郡国常備兵」という題目で、漢代の兵役制度について述べた典籍史料の記事を慎重に再検討し、しかるべき解釈を示したうえで、普遍的な徴兵制度に基づく軍隊が、特殊専門兵から構成される軍隊へと変化する経緯を、改めて論じた。これらの研究会はいずれもオンラインで行ったが、発表レジュメと討議の記録は中国語訳し、海外の研究協力者とも共有した。 これに加えて、昨年度から開始した、中国・武漢大学、韓国・ソウル大学と共同で運営する研究会、「戦国秦漢簡牘在線研読会」を、今年度も引き続き開催した。これは3ヶ月ごとに、年4回のペースで行っており、毎回日本・中国・韓国の研究者が3本の研究発表を行っている。今年度はたとえば宮宅が、「秦代徴兵制度研究的現状――圍繞基本史料的解釋」という題目で発表し、本プロジェクトの成果の一端を紹介した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度も新型コロナウイルス感染症の影響により、対面での研究会開催や海外共同研究者の招へいは、困難である状況が続いた。5年計画の中間年度にあたる本年度には、中国・武漢大学で国際シンポジウムを開催する計画であったが、それも先方との協議の末、次年度に対面で開催できる可能性に期待し、いったん延期することにした。 だが、京都大学における新出史料の会読については、速やかにオンライン会議システムを導入し、活動を継続してきた。この形式にも十分に習熟し、現在では対面と変わらぬ密度で会読を進めることができている。さらにオンラインに切り替えたために、日本全国から関連する研究者の参加が得られるようになり、また韓国からも、本プロジェクトの研究協力者である金秉駿が、定期的に会読に参加している。 オンラインでの海外研究者との協業を摸索していくなかで、武漢大学、ソウル大学との共同研究会、「戦国秦漢簡牘在線研読会」が始められることにもなった。この研究会では、本プロジェクトの共同研究者たちが研究報告を行うと同時に、それぞれの共同研究者が指導する大学院生やポスドクによる、関連する問題についての発表も行っており、若手研究者が相互に交流する場、および国際的な協業のためのトレーニングを受ける場ともなっている。感染症の拡大により生じた研究環境の激変の、ポジティブな副産物だといえよう。 議論の密度やその柔軟な展開、さらにはいくつかの意見交換を同時並行して行うことができるという点では、やはり対面の方がオンラインよりも望ましい。だがオンラインの活用により、以前は十分な予算と準備が必要だった国際交流が、日常的に行えるようになっている。とくに時差を気にせず集える中国・韓国との学術交流は、以前よりも格段に活性化し、このプロジェクトの推進を大いに助けている、これにより、総体的には「おおむね順調に進展している」ものと自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
まず次年度も今年度と同様に、新出史料の会読を進めてゆく。人文研における毎週の研究会のほか、武漢大学・ソウル大学、および京都大学の共催による「戦国秦漢簡牘在線研読会」も、引き続き3ヶ月に一度のペースで継続し、ここでも関連する問題を討議する。新出史料の会読については、来年度には岳麓書院所蔵簡《秦律令(壹)》(計391簡)をすべて読了する予定である。順次公表してきた訳注稿を一つの書籍としてまとめ、出版社(東京:汲古書院)から刊行することを計画している。 研究分担者による研究報告も、同様にオンラインで行ってゆく。上述した三校共催のオンライン研究会も活用して、相互に意見を交換し、各自の研究課題をより深く掘り下げてゆく。時差の問題で参加が難しい欧米の共同研究者には、翻訳した議事録の配布により、問題意識の共有を図る。また欧米の研究者がすでに文章化した原稿を提出してもらい、それを国内メンバーで検討する試みも企画している。これらの活動で得られた研究成果を段階的に公表し、同時にそれを翻訳し、広く発信してゆく活動にも、引き続き注力してゆく。 本年度に開催する予定だった国際シンポジウムは、すでにその順延を決定した。引き続き感染状況や各国の防疫政策を注視しつつ、対面開催の可能性を摸索していくが、来年度の夏期までに見通しが立たない場合は、オンラインでの開催に踏み切る予定にしている。
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