Project/Area Number |
19H01390
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 04030:Cultural anthropology and folklore-related
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
松岡 悦子 奈良女子大学, アジア・ジェンダー文化学研究センター, 協力研究員 (10183948)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
浅田 晴久 奈良女子大学, 人文科学系, 准教授 (20713051)
阿部 奈緒美 奈良女子大学, アジア・ジェンダー文化学研究センター, 協力研究員 (20848460)
曾 ケイエ 奈良女子大学, アジア・ジェンダー文化学研究センター, 特任助教 (30848552)
青木 美紗 奈良女子大学, 生活環境科学系, 講師 (50721594)
五味 麻美 川崎市立看護短期大学, その他部局等, 講師 (70510246)
Hanley Sharon 北海道大学, 医学研究院, 特任講師 (80529412)
諸 昭喜 国立民族学博物館, グローバル現象研究部, 助教 (80848359)
嶋澤 恭子 神戸市看護大学, 看護学部, 准教授 (90381920)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2021)
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Budget Amount *help |
¥15,600,000 (Direct Cost: ¥12,000,000、Indirect Cost: ¥3,600,000)
Fiscal Year 2021: ¥4,940,000 (Direct Cost: ¥3,800,000、Indirect Cost: ¥1,140,000)
Fiscal Year 2020: ¥5,460,000 (Direct Cost: ¥4,200,000、Indirect Cost: ¥1,260,000)
Fiscal Year 2019: ¥5,200,000 (Direct Cost: ¥4,000,000、Indirect Cost: ¥1,200,000)
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Keywords | 妊娠・出産 / MDGs / アジア / グローバルヘルス / 母子保健政策 / 出産 / 帝王切開 / 医療化 / 母乳 / モビリティ― / COVID-19 / 産後 / 助産師 / 施設分娩 / MDGs / TBA / 妊産婦死亡率 / マタニティ政策 / リプロダクティブ・ヘルス / 医療 / 健康 |
Outline of Research at the Start |
本研究では、国連ミレニアム開発目標(MDGs)の中のリプロダクティブ・ヘルス関連指標の改善(とくにMDG5)を目指して、異なる医療政策をとったインドネシア、ラオス、バングラデシュの3か国を比較する。1990年から2015年までの間の3か国のアウトカムを、妊産婦死亡率やその他のリプロダクティブ・ヘルス関連数値、女性のポジティブな出産経験を中心とする出産の質、妊娠・出産時の医療介入の多寡の3点から検討する。それによって、低・中所得国における効果的なマタニティ政策を検討することが可能になる。この成果は、現在進行中のSDGsの実現を促進する上でも重要な示唆を与えるものと言えよう。
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Outline of Annual Research Achievements |
バングラデシュでの現地調査ができなかったため、2021(令和3)年度に現地の調査助手に依頼して、調査地の中から2つの村を選び、産後の女性を訪問して、出産・産後の状況、出産費用の出所、COVID-19 によるモビリティの変化について質問紙調査を行った。12か月間の間に626人の産後の女性からデータを得た。 その結果、女性たちの62%が自宅での出産を意図していたが、自宅での出産を果たしたのは33%であり、67%は病院での出産となっていた。また介助者については、TBAであるダイを予定していたのが21%、医師を予定していたのが39%だったが、結果的にダイの介助を受けたのは12%、医師の介助は67%であった。また帝王切開率は全体の60%であり、病院で出産した人の90%に達した。出産場所と出産様式は、授乳の状況と有意に関連し、自宅で経腟分娩を行った女性は母乳のみを与える割合が高く、授乳に問題を抱える割合が低かった。出産費用については、事前に貯蓄をする人もいたが、病院で帝王切開になった場合は自宅出産の約10倍の支出となるため経済的な負担が大きく、産後の儀礼を省略する人が増えていた。COVID-19が外出頻度に与えた影響は、女性より男性に強く表れ、もともと敷地内で過ごすことが多かった女性への影響は少なかった。 以上のことから、MDGsの目標である母子の死亡率を減らすための政策は、出産の医療化を進める結果となり、病院分娩と帝王切開率の上昇を招き、母乳栄養の低下をもたらす結果になっている。その理由として、公立病院が時間的にもマンパワーの点でも不十分な対応しかできないために、私立(民間)病院での出産が増え、私立病院は利益を上げるために帝王切開に依存していることがある。また、出産を医療化しようとする政府の政策が、長期的には母子の健康への脅威となっている可能性があることは、重要な指摘と言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
COVID-19によって海外調査が不可能となったものの、現地の調査助手に依頼して、コロナ禍でも質問紙調査を実施してもらうことができた。質問紙調査は、村内での移動の制限がなされた期間を除き、厳重な感染対策のもとに、産後の女性の家庭を訪問する形でなされた。その点では、コロナ禍の影響を受けつつも、現地の女性たちの状況を知ることができた点で成果があったと言える。 ただし、質問紙を介しての調査結果であり、文化人類学的な参与観察や聞き取り調査ができなかった点では十分とは言えない。 また論文や原稿を書くことは可能であったが、学会発表や研究会の機会が大きく制限されたため、研究が進展した実感を得られなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、現地調査を行い、質問紙調査だけでは見えない部分を実際に確かめる作業を行う。たとえば、以下のような点である。 1.出産介助者として、伝統的な介助者であるダイ以外に、SBA(Skilled Birth Attendant)、村医者、FWV(Family Welfare Visitor)がいることがわかった。これらの多様な介助者が出産にかかわるようになったプロセスや、彼女ら(男性も女性もいる)の協力関係について明らかにする。 2、バングラデシュでは製薬産業が国家の重点産業になっていることもあり、妊産婦も含めた住民が薬を簡単に手に入れられるようになっている。これらの薬がどのように使われているのか、住民や医療提供者の薬の認識について調べ、薬の健康への影響についても明らかにしたい。 3.産後の女性たちが、自身の健康状態について、weakと表現することが多くみられた。医療化された出産が女性たちの身体感覚を変化させている可能性がある。したがって、医療化された出産が死亡率の減少に貢献しているとする面だけではなく、それが女性の経験をどのように変化させているかを明らかにする。
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