Project/Area Number |
19H01750
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 10010:Social psychology-related
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
平石 界 慶應義塾大学, 文学部(三田), 教授 (50343108)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三浦 麻子 大阪大学, 大学院人間科学研究科, 教授 (30273569)
樋口 匡貴 上智大学, 総合人間科学部, 教授 (60352093)
藤島 喜嗣 昭和女子大学, 生活機構研究科, 教授 (80349125)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥17,290,000 (Direct Cost: ¥13,300,000、Indirect Cost: ¥3,990,000)
Fiscal Year 2023: ¥3,380,000 (Direct Cost: ¥2,600,000、Indirect Cost: ¥780,000)
Fiscal Year 2022: ¥3,380,000 (Direct Cost: ¥2,600,000、Indirect Cost: ¥780,000)
Fiscal Year 2021: ¥3,380,000 (Direct Cost: ¥2,600,000、Indirect Cost: ¥780,000)
Fiscal Year 2020: ¥3,380,000 (Direct Cost: ¥2,600,000、Indirect Cost: ¥780,000)
Fiscal Year 2019: ¥3,770,000 (Direct Cost: ¥2,900,000、Indirect Cost: ¥870,000)
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Keywords | 社会心理学 / 再現性 / メタ分析 / 直接的追試 / 公刊バイアス / 追試 / オープンサイエンス / 心理学の再現性 / 社会心理学の再現性 |
Outline of Research at the Start |
社会心理学の教科書に載るような知見の頑健性が疑われると同時に、その背景に「問題のある研究慣習」のあることが指摘されている。科学としての社会心理学の進展のために、それを支える「確実な知見」を確認する作業が必要である。本研究は、国内学会大会発表において蓄積されて来た情報のメタ分析を行う。更に必要性が認められたテーマについて追試を実施し、全てのデータを国内外に公開する。日本という独自の文化的背景を持つ母集団についての、公刊バイアスの影響の小さい、日本語圏外に閉じられてきた情報を、整理・分析・追試・公開することで、社会心理学の基盤の確認と再構築に向けた国際的な動きに、独自性のある貢献を果たす。
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Outline of Annual Research Achievements |
日本社会心理学会ならびに日本心理学会の2013年(689件)ならびに2018年(499件)の大会論文で報告されているp値の分布を用いたメタ分析を実施した。その結果、これらの大会報告には相応の証拠的価値がある一方で、統計的に有意とならなかった研究結果のかなりの部分(推定によっては半数以上)が報告されなていない公刊バイアスが生じていることが示された。これらの結果について日本心理学会等で報告した。 COVID-19パンデミック下における感染症と嫌悪感情、道徳、そして内外集団への態度の関連を論じる行動免疫仮説についての追試研究(国際比較データおよび国内時系列データの取得)を継続し、分析結果を日本社会心理学会、Human Behavior and Evolution Societyで報告する他(平石ら, 2021, Hiraishi et al., 2021)、「心理学研究」誌に掲載した(山縣・三浦, 2021)。 心理学の再現性問題ならびに信頼性革命にかんするジャーナルクラブ(ReproducibiliTea Tokyo)を年間通じて継続開催した。その一つの成果として、再現性危機が認識された2010年代初頭以来の展開と議論を整理するレビュー論文を「科学哲学」誌に掲載した。再現性問題への処方として、事前登録・事前審査制度を用いた大規模追試や、仮説の検討方法として妥当と考えうる分析方法を網羅的に検証する手法が開発・実装されてきたこと、それらの結果として心理学において一般化可能性の過大評価の問題が顕となったことを指摘した。 これらと並行して、既存の心理学尺度の妥当性検証(藤島・大石, 2021)や、知見の追試(藤島ら, 2021)も進めた。また、再現性危機の背後にあると考えられる心理学者一般の心理統計の数学的理解の不足を補う方法を実践的に検討する集中ワークショップを開催した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
心理学における再現性危機を踏まえた議論から、知見の頑健性を異なる状況で繰り返し確認する必要が指摘されている。この観点から、すでに頑健とされている知見(適応的記憶)を敢えて選択し、先行研究の数倍のサイズのサンプルからなる大規模な追試を4つの研究室からなるマルチラボで実施した。 また、統計的有意性による公刊バイアスによって既報の知見の証拠的価値が毀損されている恐れも指摘されている。日本社会心理学会ならびに日本心理学会の2013年ならびに2018年の大会論文で報告されているp値の分布を用いたp-curve分析とz-curve分析を実施した。その結果、これらの大会報告には相応の証拠的価値がある一方で、統計的に有意とならなかった研究結果のかなりの部分が報告されない公刊バイアスが生じていること、ただし状況に改善の兆しがあることを明らかにできた。 COVID-19パンデミックは、感染症と心理の関連を論じる行動免疫システム仮説を、仮説との直接的関連性を持つ状況下で検証する機会を与えるものである。日米英伊中の国際比較データおよび日本国内でのパネル調査を継続実施し、パンデミック進行中のもとでの分析結果を学会やプレプリント、投稿論文で報告している。 COVID-19パンデミックによって、対面で行う実験室実験は引き続き実施が困難であるものの、全国の研究者をオンラインで結ぶ形の学術コミュニティ(ReproducibiliTeat Tokyo)を立ち上げ、議論と研究を進展させ、その成果として心理学の再現性危機の10年を振り返るレビュー論文にまとめることもできた。更にそこでの議論などから、心理学者の心理統計の数学的理解を涵養する必要性が明らかとなり、その方法の実践的な検討も開始することができた。 以上から全体として、概ね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
1)2021年度までにコーディングおよび分析を行った日本社会心理学会ならびに日本心理学会の大会論文で報告されている統計量のメタ分析結果について論文を投稿する。2)既に実施してきた追試研究について、追加データの収集ならびに論文発表を進める。具体的には適応的記憶、宗教プライミング、向社会性の進化心理学、行動免疫仮説などにかんする追試を、Japanese Psychological Research, Evolutionary Psychologyなどの雑誌に投稿する予定である。3)前年度までにまとめた心理学の再現性危機の10年にかんする総括をもとに、心理学がより科学的に厳密で信頼できる学問領域として発展するための具体的手段として、心理学者(教員・ポスドク・院生)の方法論的知識のアップデートとアップグレードを効率的かつ効果的に進める手段を、実践的活動を通じて検討し開発する。
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