物理的に妥当な関係式による生体分子モーターF1-ATPaseのエネルギー論の展開
Project/Area Number |
19H01864
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 13040:Biophysics, chemical physics and soft matter physics-related
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
中山 洋平 東北大学, 工学研究科, 助教 (20757728)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 壮伸 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 主任研究員 (10642324)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥17,940,000 (Direct Cost: ¥13,800,000、Indirect Cost: ¥4,140,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2020: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2019: ¥12,480,000 (Direct Cost: ¥9,600,000、Indirect Cost: ¥2,880,000)
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Keywords | 分子モーター / 非平衡熱力学 / 非平衡統計力学 / 生物物理 |
Outline of Research at the Start |
生体分子モーターF1-ATPaseが持っているとされる、内部散逸が極めて小さいという性質を、反応座標の選び方によらない手法で一分子実験を行うことで検討し直す。 これまでの研究で、F1-ATPaseが回転する際に生じる熱を議論するために使われてきた関係式は、どのような変数に着目するかに応じて結果が変わってしまう、という意味で物理的に妥当でないことがわかっている。 顕微鏡観察によってF1-ATPaseの運動を一分子レベルで測定するときに、着目している変数がどのような性質を持っているかは一般には明らかではないので、この問題を解決した関係式を用いて、F1-ATPaseの内部散逸の測定を行う。
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Outline of Annual Research Achievements |
生体分子モーターF1-ATPaseの回転速度が、ATPをエネルギー源として分解して回転しているときと、ATPを合成しながら回転しているときとでは、基質であるATPおよびADPの濃度に対して異なる依存性を示す、という結果を2021年度に得ていたが、その実験において用いていた装置の問題により、F1-ATPaseにATPを合成させるために外部から加えていたトルクの大きさが非一様になってしまっていたことが判明した。そのため、トルクが一様になるように実験装置を調整した上で、全ての測定を再び行い直した。再測定で得られた結果は、前の結果と定性的には同じであり、特に、F1-ATPaseの回転速度の基質濃度依存性がATP分解と合成とで非対称である、という結論は影響なく保たれることが分かった。また、この結果によって、F1-ATPaseにおけるATP分解と合成との間の非対称性が、外部から加えるトルクに多少の非一様性があっても保たれるロバストな性質であることが明らかになった。 さらに、得られた実験結果が数理モデルによって再現できるかを、数値計算を行って調べた。その結果、既存のモデルを微調整するだけで、定性的なレベルにとどまらず定量的にも実験結果を再現することに成功した。このモデルは、従来のHarada-Sasa等式を用いて得られた実験結果に基づいて提案されたものであり、今回の結果は別の角度からこのモデルの妥当性を検証したと位置付けられる。また、この結果によって、従来のHarada-Sasa等式をF1-ATPaseの実験で用いることの妥当性が補強されたと言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
実験で用いた装置に問題が生じていた、という当初予期していなかったことが明らかになったため、装置の調整を行った測定をやり直す、という実験を追加で行うこととなった。しかし、それによって、実験結果のロバストさを確認することが出来た。また、装置を調整したことによって、前よりも広い基質濃度範囲でトルクを加えての実験が行えるようになったため、数値計算との比較をより高い精度で行うことができた。 「研究実績の概要」で述べたこととも一部重複するが、今回の実験結果が既存のモデルで再現できるということは、従来のHarada-Sasa等式をF1-ATPaseの実験に用いることの妥当性を示している。すなわち、反応座標の選び方がHarada-Sasa等式にどのように影響するか、という本研究の中心的な問いに対して、F1-ATPaseの実験の場合には影響は小さい可能性を示唆しており、今後の発展にもつながる大きな進展であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
Harada-Sasa等式は特定の反応座標に対してしか成り立たない関係式であるにもかかわらず、F1-ATPaseの実験の場合には妥当な結果を与えている、という事実について検討していく。具体的には、従来のHarada-Sasa等式と、反応座標の選び方に依存しない形に拡張したHarada-Sasa等式を比較することによって、どのような条件の下であればそのような仮説が成り立つのかを明らかにして、実際の実験においてそれらの条件が成り立っているのかを調べていく。特に、F1-ATPase自体、および実験系の性質のそれぞれがどのように働いているのかに注意する。 また、実験データに基づいてモデルを詳細に決定することができたので、F1-ATPaseの未知の特性をモデルの数値計算によって探すことも試みる。特に、本研究でこれまでに明らかにしてきた、F1-ATPaseの阻害状態と呼ばれる触媒活性を持たない状態や、基質濃度依存性の非対称性、といったATP分解と合成とでの違いという観点から調べる。
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Report
(4 results)
Research Products
(11 results)