Project/Area Number |
19H01999
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 17040:Solid earth sciences-related
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
平島 崇男 京都大学, 理学研究科, 名誉教授 (90181156)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
網田 和宏 秋田大学, 理工学研究科, 助教 (20378540)
大沢 信二 京都大学, 理学研究科, 教授 (30243009)
苗村 康輔 岩手大学, 教育学部, 准教授 (50725299)
中村 高志 山梨大学, 大学院総合研究部, 准教授 (60538057)
吉田 健太 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 海域地震火山部門(火山・地球内部研究センター), 研究員 (80759910)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥17,290,000 (Direct Cost: ¥13,300,000、Indirect Cost: ¥3,990,000)
Fiscal Year 2022: ¥2,600,000 (Direct Cost: ¥2,000,000、Indirect Cost: ¥600,000)
Fiscal Year 2021: ¥3,250,000 (Direct Cost: ¥2,500,000、Indirect Cost: ¥750,000)
Fiscal Year 2020: ¥4,550,000 (Direct Cost: ¥3,500,000、Indirect Cost: ¥1,050,000)
Fiscal Year 2019: ¥6,890,000 (Direct Cost: ¥5,300,000、Indirect Cost: ¥1,590,000)
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Keywords | 深部流体 / 沈み込み帯 / 酸化還元状態 / 青色片岩 / 変成Mn-richチャート / ローソン石青色片岩 / アルカリ輝石 / ラマン炭質物温度計 / クラッシュリーチング / 神居古潭帯 / 黒瀬川帯 / エクロジャイト / ローソン石 / N同位体 / CO2ガス / 温泉水 / 八重山変成帯 / 三波川変成帯 |
Outline of Research at the Start |
沈みこむプレートから放出される深部流体は岩石の物性を大きく変化させ、プレート間地震や島孤火山活動を誘発するため、深部流体活動の挙動の解明は自然災害に備えるための基礎データとして重要である。本研究では、酸化還元状態がスラブの脱水・吸水反応に及ぼす影響について検討し、冷たい沈み込み帯での吸水・脱水反応が生じる深度とそれらの量を再評価することを第一の目的とする。更に、冷たい沈み込み帯で形成された岩石中の流体包有物の組成特性を明らかにし、現在の冷たい沈み込み帯の前弧域(非火山地域)の温泉水やその付随ガスの組成と比較し、冷たい沈み込み帯での流体の移動経路についてのモデル化を試みる。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、流体活動組織解析班と流体組成分析班を組織し、冷たい沈み込み帯での深部流体活動の実態や移動経路の推定を試みている。 流体活動組織解析班:北海道神居古潭変成帯幌加内地域の青色片岩分布地域の鉱物組み合わせの安定条件を説明できる岩石成因論グリッドを作成し、当該地域の青色片岩はローソン石・パンペリー石・緑簾石が安定な非常に限られたPT条件下で形成されたこと、ローソン石青色片岩は吸水反応で形成されるが、緑簾石青色片岩の形成は脱水反応によることを明らかにした(平島ほか)。また、当該地域の青色片岩の形成温度をラマン炭質物温度計で検討した結果、280-300℃であることが分かった(苗村ほか)。九州黒瀬川帯箱石ユニットで、青色片岩と変成Mn/Fe-richチャート中のアルカリ輝石とアルカリ角閃石の組成は、流体中から核形成・成長した場合と、残留鉱物を置き換えてトポタキチック成長した場合でヒスイ成分が異なること、すなわち反応のカイネティクスが寄与することを見出した(薮田・平島)。以上の成果3件については、日本鉱物科学会2022年会で口頭発表した。幌加内地域の青色片岩の形成時期を確定するため、青色片岩中の白雲母のK-Ar法を実施した結果、予想に反して、106/109Maと123/127Maの2クラスターに分かれた。その原因解明の研究を開始した。 流体包有物研究班:幌加内地域の青色片岩地域で採取した石英脈中の流体包有物の抽出作業を実施し、抽出液の主要成分と微量成分を分析した。その結果、沈み込み帯特有のLi-B系列の流体は1試料から得られたが、他の試料はCl-B系列で、かつ、1試料はSO4-イオンを相当料含んでいた(苗村ほか)。現在の東北日本弧の地表温泉水組成の文献調査を行ったところ、有馬型熱水と類似する温泉を見出した。当該温泉と交渉し、分析用試料の採取交渉を始めた(網田・苗村)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
石英脈からの流体包有物の抽出は、その経験のある網田(秋田大)の指導の下、岩手大で抽出し、京都大・秋田大で組成分析を行う方式で行う予定であったが、2021年度前半までは、コロナ感染症の影響で長期間の大学間移動が禁止されたため、網田の指導による予備抽出作業の開始は2021年度後半にずれこんだ。抽出作業を開始したところ、抽出手法の一部に課題が見つかったので、それを改善したのち、抽出作業を本格したが、抽出作業の完了とその分析は、2022年度に繰り延べとなった。 抽出液のCl, Na, Mg, Ca等の主要元素を京大・別府熱学施設で、B,Liの微量元素を秋田大で分析した結果、Na,B,Liに富む有馬型熱水の特徴を有する試料は1例だけ得られたが、他の試料はCl-B系列であったため有馬型熱水の特徴とは異なっていた。また、有馬型熱水にはほとんど含まれないSO4-イオンを相当量含んだ流体が見いだされた。そのため、分析試料の再検討と、これらの流体の起源についての考察に時間を要している。 北海道神居古潭変成帯幌加内地域の青色片岩は、岩石成因論グリッドによる解析とラマン炭質物温度計の適用で、280-300℃という限られた温度領域で形成されたものであることが判明した。そのため、その形成年代は、同一時期に形成されたものであろうとの予測で、青色片岩中の白雲母のK-Ar年代測定を実施した。しかしながら、実験開始前の予想に反して、106/109Maと123/127Maという測定誤差を考慮してみ有意に異なる2クラスターに分かれたため、原因解明のための研究がさらに必要になった。 東北日本弧の地表温泉水の文献調査により、有馬型熱水と類似する温泉を見出した。その予測を実証するため、当該温泉を訪問し、温泉水の採取を願い出たところ、当方の研究目的に合致した試料は、数年に一度のみ採取できることがわかり、採取を延期した。
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Strategy for Future Research Activity |
幌加内地域の青色片岩において、柴草(1974)が報告した、ローソン石の消滅は確認できなかった。むしろ、当該地域の青色岩石は、ローソン石・パンペリー石・緑簾石という3種類のCaAl含水ケイ酸塩鉱物を含むことが特徴であること、さらに、ローソン石青色岩石としては最低圧力、緑簾石青色片岩としては最低温度で形成されたことが判明した。今後は、他地域の青色片岩の鉱物組合せと比較して、幌加内地域をローソン石・パンペリー石・緑簾石を含むTernary青色岩石の模式地としてアピールできる論文作成を目指す。 当該地域の青色片岩では、緑簾石を伴わないローソン石青色片岩中のローソン石は比較的細粒であるのに対し、緑簾石を伴う場合は細粒~数㎜径に達する粗粒のローソン石が認められることを、先行研究も指摘している。我々が作成した岩石成因論グリッドにおいて、ローソン石青色片岩の形成は吸水課程であるのに対し、ローソン石青色片岩から緑簾石を生み出す際には脱水課程であることが分かった。このような場合、脱水反応で生み出されたH2Oがローソン石の粗粒化を促進した可能性、dehydration lawsonite coarseningが想定され、この考えが妥当かの検討を行う。 当該地域のTernary青色岩石の白雲母のK-Ar年代が106/109Maと123/127Maの 2クラスターした原因、並びに、石英脈中の流体包有物の組成が有馬型熱水の特徴を有していないことの原因等を解明するため、岩石学的研究を実施する。 東北日本弧の有馬型熱水と類似する泉質を有する温泉の所有者とは連絡を密にして、当方の研究目的に合致した試料を採取できる機会を逃さないようにし、採取でき次第、温泉ガスを含めた組成分析を実施する。 上記の研究成果が出揃い次第、対面あるいはオンラインで随時意見交換を行い、成果の公表方法を協議し、適切な方法で成果を発表する。
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