Project/Area Number |
19H05594
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (S)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Review Section |
Broad Section A
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
皆川 泰代 慶應義塾大学, 文学部(日吉), 教授 (90521732)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
青木 義満 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (00318792)
檀 一平太 中央大学, 理工学部, 教授 (20399380)
太田 真理子 慶應義塾大学, 文学部(三田), 訪問研究員 (50599412)
山本 淳一 慶應義塾大学, 文学部(三田), 名誉教授 (60202389)
寺澤 悠理 慶應義塾大学, 文学部(日吉), 准教授 (30585790)
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Project Period (FY) |
2019-06-26 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥191,490,000 (Direct Cost: ¥147,300,000、Indirect Cost: ¥44,190,000)
Fiscal Year 2023: ¥37,310,000 (Direct Cost: ¥28,700,000、Indirect Cost: ¥8,610,000)
Fiscal Year 2022: ¥36,400,000 (Direct Cost: ¥28,000,000、Indirect Cost: ¥8,400,000)
Fiscal Year 2021: ¥35,360,000 (Direct Cost: ¥27,200,000、Indirect Cost: ¥8,160,000)
Fiscal Year 2020: ¥35,620,000 (Direct Cost: ¥27,400,000、Indirect Cost: ¥8,220,000)
Fiscal Year 2019: ¥46,800,000 (Direct Cost: ¥36,000,000、Indirect Cost: ¥10,800,000)
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Keywords | 自閉スペクトラム症 / 脳機能 / 社会認知 / 言語獲得 / 縦断研究 / 乳幼児 / 神経発達症 / 脳機能結合 / 母子愛着 / fNIRS / リスク児 / 運動機能 / 発達障害 |
Outline of Research at the Start |
本研究は自閉スペクトラム症(ASD)を主とする発達障害のリスクを持つ乳児と定型発達児を対象として,新生児期,月齢3ヶ月時期から3,4歳までの脳機能,知覚・認知機能,運動機能を縦断的に計測するコホート研究である。特に言語コミュニケーションに障害を持つASDリスク児と定型児の発達過程を比較することで,言語やコミュニケーション能力の獲得における脳,認知,運動の機能発達の関係性,発達障害を予測する生理学的,行動学的因子の2点を解明する。 これまでの研究で非定型発達の脳機能結合特性等を明らかにする等,成果をあげたが,本研究は,貴重な本リスク児コホートを継続追加し,より詳細な検討を行うための研究である。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究は自閉スペクトラム症を主とする神経発達症(発達障害)の尤度が高い乳児(EL児:Elevated Likelihood of ASD)と定型発達児(TL児:Typically Likelihood of ASD)を対象として,新生児時期あるいは3ヶ月齢時から3歳までの脳機能,知覚・認知機能,運動機能を縦断計測するコホート研究である。特に言語コミュニケーションに障害を持つリスク児と定型児の発達過程を比較することで、(1)発達初期の脳機能結合を含めた脳機能発達,そして知覚,認知,身体運動機能の各発達特性と言語コミュニケーション獲得との関係性を解明し、ヒト言語機能の脳内基盤やその成立を可能にする認知的要因を明らかにする、(2)本研究の縦断実験で得た脳機能,知覚,認知,運動データから,後の発達障害を予期する因子を抽出する。 上記の目的のもと2022年もEL児、TL児の親子を対象に縦断研究を3,6,9,12,18,24ヶ月時,3歳時に行い、そして4歳時に追加の質問調査を実施した。2022年も未だ病院内での新生児実験実施ができなかったが、一般応募の縦断研究の新規参加乳児は徐々に増加した。本プロジェクトの4年目である2022年は、成果報告も縦断研究のデータを含め査読付きの国際雑誌に5本の論文を出版することができた他、国内、国外の招待講演でも本プロジェクトの成果を報告し、隔年開催国際乳児学会(査読付き)でも5本の発表を行った。以上のような基礎研究ばかりでなく、これまでの縦断研究参加児で発達に問題が生じた、あるいはその兆候のある幼児に対して発語や社会的スキルの療育を行いながらその効果を検証する臨床研究も行ってきた。特にコロナ禍で対面による療育が行えなかったので臨床チームは主に応用行動分析によるオンライン療育の効果を検討する実証研究を行ってきた。その第一報の論文も出版することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上述した縦断研究から得られたデータについて、いくつかの解析結果のうち代表して3つの成果について概略を報告する。 (1)Still faceパラダイムによる母子相互作用における母親の随伴性と発達:3,6,9ヶ月時点で「自由遊び」「無表情」などから構成されるStill faceパラダイムによる母子遊びの行動をビデオ撮影し、母子の笑顔、視線、発声などの社会的信号を行動コーディングしている。これらの行動特徴とその後の発達について解析を行った結果、様々な社会的信号の中でも母親の随伴性がTL(定型発達)児の言語発達・社会性の発達に強く影響を与えていることが明らかになった。つまり、6ヶ月齢時点の母親の随伴性(子どもからの発声や笑顔に対してすぐに応答する特性)の傾向が強いほど、9,12,18ヶ月、2才時点での子どもの良好な言語・社会発達がみられた。しかし、この傾向はEL児群には見られなかった。 (2)リズム発話とリズム運動が言語発達に及ぼす影響:(1)の母子相互作用の中で母親がリズミカルな発話をしたり、乳児の手や足を持ってリズミカルな動きをさせたりする場面がみられる。リズム運動と言語発達の関係を明らかにするために、これらリズム特性をビデオデータから再コーディングし、その後の言語発達との関係を解析した。TL児はリズム発話・運動が多いと後の言語発達が良好になることが示されたが、EL児においてはその関係性はみられなかった。 (3)言語発達についてのオンライン療育の効果:0歳から3歳までの発達を計測する中でそれらEL児が実際に発達遅滞を示す場合があるが、本研究ではそれらの幼児と保護者に対してオンラインツールを用いて表出言語、特にマンドスキル(要求言語行動)を療育した。その結果4組の親子に対してオンライン療育の効果がみられマンドの獲得につながった。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は本プロジェクトの最終年度であるので、縦断研究を実施する以外にもデータ解析、発表、論文執筆も重点的に進める。縦断研究の大規模なデータの中から今後の展望も考慮しつつ、特にどの部分をまとめて、どの部分のデータをさらに強化するかなど考慮しつつ本プロジェクトの小規模コホートを継続、発展させたい。以下、各研究項目別に推進方策や統括ポイントについて述べる。 縦断実験実施:コロナ禍の実験参加者への影響もさらに弱まりコロナ禍以前の状況に戻る可能性が予想されるので、新規リクルートを積極的に行い、乳幼児コホートを拡大させる。特に本コホートの将来の研究可能性を鑑み、発達障害リスク関連の乳児ばかりでなく、社会性や言語発達に非定型性がみられる難聴児やその他疾病をもつ乳児の受け入れも行い、多様な脳神経発達を検討する準備を行う。病院での乳児計測が可能な状況になれば実験を新生児実験も再開する。これまで一部行ってきたオンライン発達検査等は基本的には廃止する。 縦断研究データの解析:(1)fNIRS実験データについては6ヶ月児の母親声、他人声の語りかけに対する脳反応の脳機能データ解析(脳活動、脳機能結合)が終了したので国際学会での発表を行い、論文投稿を進める。新生児のfNIRSデータ(父親声に対する新生児の脳反応実験)も解析が終了したので分担研究者の太田が引き続き論文執筆を進める。(2)still face paradigmのビデオデータについて母親の行動コーディング指標の改変を行ったので、実際にその修正コーディングを進めてデータ解析する。 縦断研究参加児への療育:縦断研究に参加したリスク児や定型発達児のうち発達に遅れが現れ保護者が療育の必要性を感じたケースについて、療育を継続して行う。保護者の参加が得られやすいオンライン療育を継続し、新規参加児に対してもニーズに応じた療育を行う。
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Assessment Rating |
Interim Assessment Comments (Rating)
A: In light of the aim of introducing the research area into the research categories, the expected progress has been made in research.
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