Project/Area Number |
19H05639
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (S)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Review Section |
Broad Section F
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
高木 博史 奈良先端科学技術大学院大学, 研究推進機構, 特任教授 (50275088)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
那須野 亮 神戸大学, 先端バイオ工学研究センター, 特命准教授 (90708116)
渡辺 大輔 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 准教授 (30527148)
西村 明 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 助教 (30781728)
高谷 直樹 筑波大学, 生命環境系, 教授 (50282322)
萩原 大祐 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (20612203)
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Project Period (FY) |
2019-06-26 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥199,940,000 (Direct Cost: ¥153,800,000、Indirect Cost: ¥46,140,000)
Fiscal Year 2023: ¥39,260,000 (Direct Cost: ¥30,200,000、Indirect Cost: ¥9,060,000)
Fiscal Year 2022: ¥39,260,000 (Direct Cost: ¥30,200,000、Indirect Cost: ¥9,060,000)
Fiscal Year 2021: ¥39,260,000 (Direct Cost: ¥30,200,000、Indirect Cost: ¥9,060,000)
Fiscal Year 2020: ¥39,260,000 (Direct Cost: ¥30,200,000、Indirect Cost: ¥9,060,000)
Fiscal Year 2019: ¥42,900,000 (Direct Cost: ¥33,000,000、Indirect Cost: ¥9,900,000)
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Keywords | 一酸化窒素 / 酵母 / 糸状菌 / 合成制御機構 / 生理機能 |
Outline of Research at the Start |
一酸化窒素(NO)はシグナル分子として様々な生命現象に関与している。研究代表者は、酵母においてNOがTah18タンパク質依存的に合成され、銅代謝に関わる転写因子Mac1の活性化を介して酸化ストレス耐性に寄与することを見出した。また、NOの機能二面性(細胞保護、細胞死)も明らかにした。本研究では真菌(酵母・糸状菌)におけるNOの分子機能について、Tah18依存的合成とその制御、標的タンパク質・シグナル伝達系、機能二面性を中心に統合的理解を目指す。また、NOが産業酵母の発酵生産性に及ぼす影響、糸状菌におけるNOと増殖、感染、生理活性物質生産との関連を検証し、産業酵母の育種や抗真菌剤の開発に資する。
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Outline of Annual Research Achievements |
1.酵母におけるNOの分子機能の解明 NOはシグナル分子として機能する一方、過剰なNOはストレスを引き起こす。今年度は、NO依存的な翻訳後修飾に着目して酵母Saccharomyces cerevisiaeのNOストレス応答について解析した。NO処理した酵母のプロテオーム解析から、解糖系酵素のfructose-1,6-bisphosphate aldolase Fba1のCys112が、NO依存的にS-グルタチオン化(SGT化)されることを見出した。また、Fba1の酵素活性はCys112のSGT化により抑制され、glutaredoxin Grx1はFba1のSGT化および活性抑制を解除した。一方、Cys112のSGT化に依存して、ペントースリン酸回路(PPP)の代謝中間体、および主にPPPで合成されるNADPHの細胞内含量が増加した。さらに、Cys112のSGT化が起こらないFba1を発現する株は、NOストレスに感受性を示した。従って、NO依存的なCys112のSGT化によりFba1活性が抑制された結果、解糖系・PPPの代謝が変化し、増加したNADPHがNOストレス耐性に寄与すると結論付けた。
2.糸状菌におけるNOの分子機能の解明 今年度は、植物や細菌由来の様々な抗真菌性化合物に対する病原糸状菌Aspergillus fumigatusの細胞応答を調べた。その結果、A. fumigatusは抗真菌化合物(チモール、ファルネソール、シトラール、ネロール、サリチル酸、フェナジン-1-カルボン酸、ピロシアニン)に曝露された後、あるいは酸化ストレスおよび高温ストレス条件下で、その菌糸中に活性酸素種(ROS)を生成した。また、ROSやNOの消去剤によってファルネソールの発芽阻害作用が一部抑制された。しかし、NOはGreiss法では菌糸中に検出されず、LC/MS分析からも抗真菌処理後の菌糸からはNOとDAF-FM DAに由来するDAF-FM-Tは検出されなかった。従って、抗真菌剤に曝された後、細胞の応答はより複雑である可能性があり、糸状菌におけるNOの役割をさらに解析する必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.酵母におけるNOの分子機能の解明 NOストレス条件下では、Fba1の酵素活性がSGT化を介して低下することで解糖系が抑制されるとともに、PPPの亢進に伴って増加したNADPHが酵母のNO耐性に寄与する可能性が示された。酵母の発酵生産過程においては、培地成分に用いる廃糖蜜に含まれる高濃度の亜硝酸イオンが、培養に伴う培地の酸性化によってNOに変換されることが知られている。本成果は、産業酵母のNO耐性機構を解明する端緒となり、有用酵母の育種に資することができる。また、SGT化修飾依存的な代謝制御によるNO耐性機構はこれまで報告がないことから、研究は順調に進展していると判断した。
2.糸状菌におけるNOの分子機能の解明 病原真菌Aspergillus fumigatusを用いて植物や細菌由来の様々な抗真菌性化合物に対する細胞応答を調べたが、予想に反してNOは抗真菌処理後の菌糸からは検出されなかった。このことは抗真菌剤に曝された後、細胞の応答はより複雑であることが示唆され、環境中で受ける生物的ストレスに対する細胞の応答として、生物間相互作用の理解に繋がると期待できる(原著論文を公表)。以上の理由により、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
1.酵母におけるNOの分子機能の解明 これまでにオキシゲナーゼ候補として同定したErg11を酵母から精製し、還元酵素としてTah18を用いin vitroにてNO合成活性を解析する。また、Erg11とTah18の相互作用を解析するとともに、NO合成活性やErg11-Tah18相互作用に対するDre2の影響を評価する。また、Tah18、Dre2および本研究で同定したErg11の多種生物におけるオルソログについて、組換え酵素を用いたNOS活性測定や相互作用解析を行い、生物間保存性の有無を検証する。
2.糸状菌におけるNOの分子機能の解明 野生型株とcpcA破壊株におけるNO処理時の細胞内アミノ酸濃度を測定し、NO処理により存在量が変化するアミノ酸を同定する。また、CpcAの上流経路として知られる翻訳開始因子eIF2αに関して、NO処理時のリン酸化レベルを解析する。一方、シトクロムP450については、基質探索および電子伝達経路を解析する。また、シトクロムP450遺伝子の上流には、シトクロムb5とb5レダクターゼの融合タンパク質をコードする遺伝子が存在し、本融合タンパク質がシトクロムP450のレドックスパートナーであると予想している。そこで、各精製酵素を混合し、シトクロムb5/b5レダクターゼからシトクロムP450への電子伝達機構を詳細に解析する。
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Assessment Rating |
Interim Assessment Comments (Rating)
A: In light of the aim of introducing the research area into the research categories, the expected progress has been made in research.
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