Project/Area Number |
19H05645
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (S)
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Review Section |
Broad Section G
|
Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
杉田 有治 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 主任研究員 (80311190)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 隆 東京都立大学, 理学研究科, 教授 (80261147)
優 乙石 前橋工科大学, 工学部, 准教授 (90402544)
|
Project Period (FY) |
2019-06-26 – 2024-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
|
Budget Amount *help |
¥198,120,000 (Direct Cost: ¥152,400,000、Indirect Cost: ¥45,720,000)
Fiscal Year 2023: ¥32,630,000 (Direct Cost: ¥25,100,000、Indirect Cost: ¥7,530,000)
Fiscal Year 2022: ¥40,430,000 (Direct Cost: ¥31,100,000、Indirect Cost: ¥9,330,000)
Fiscal Year 2021: ¥33,800,000 (Direct Cost: ¥26,000,000、Indirect Cost: ¥7,800,000)
Fiscal Year 2020: ¥62,270,000 (Direct Cost: ¥47,900,000、Indirect Cost: ¥14,370,000)
Fiscal Year 2019: ¥28,990,000 (Direct Cost: ¥22,300,000、Indirect Cost: ¥6,690,000)
|
Keywords | 分子動力学 / 細胞内環境 / 液液相分離 / 蛋白質構造柔軟性 / 酵素反応 / 分子混雑環境 / NMR / 酵素反応解析 / 機械学習 / マルチスケール / 蛋白質の構造柔軟性 / マルチスケールシミュレーション |
Outline of Research at the Start |
細胞内環境において安定な立体構造を持たない天然変性蛋白質や非特異的な相互作用による巨大な凝集体の形成などの新しい現象も発見されている。分子から細胞スケールに至る広い時空間で生じる生命現象を理解するために、粒子を粗視化したモデル、全原子モデル、活性部位のみを量子化学的に扱うQM/MMモデルを含むマルチスケール分子動力学法を開発し、異なるスケールのシミュレーションをベイズ推定に基づく理論で接続する。開発したシミュレーション法を用いて、細胞内環境における酵素反応、蛋白質の構造柔軟性と液液相分離の関係などを解明する。さらに、実験を用いて検証することで、分子モデルと計算手法の改良を行う。
|
Outline of Annual Research Achievements |
細胞内分子混雑環境における蛋白質の動的構造と機能に関する計算と実験による共同研究を行い、新たな計算科学ツールとしてのマルチスケール分子動力学法を確立することがこの研究課題の目的である。昨年度までに開発した粗視化・全原子・QM/MMモデルに基づくMD計算手法を分子動力学ソフトウェアGENESISに導入し、「富岳」にも最適化されたGENESIS Version 2.0をフリーソフトウェアとして一般に公開した。特に粗視化MDについては、GENESIS_CG_Toolsを用いて、蛋白質や核酸が含まれる複雑な分子系のモデリングとMDの入力ファイル作成も可能となっているため、細胞内分子混雑環境や液液相分離に関する計算科学を行うための重要なツールとなりうる。さらに、実験データとMD計算を組み合わせるMELD法をGENESISに導入し、NMR実験によって得られた距離情報を満たす蛋白質構造を得ることができるようになってきた。また、QM/MMモデルを用いたMD計算の時間軸を伸ばすために、機械学習ポテンシャルの導入も検討し、予備的なプログラム開発を行った。 応用研究としては、Grb2の溶液中の構造について大きな進展があった。NMR実験データに関するmulti-state構造計算法と主鎖15N核の緩和解析から,全長蛋白質においてcSH3ドメインのみがフレキシブルに挙動している描像を得た。この動的構造は、MELD法を用いて行ったMD計算の一部の結果とよく一致していた。また、Grb2二量体構造やDrk、Grb2の液液相分離実験、Drk/Sos/Dosなどの相互作用による生物活性発現メカニズムの考察も行った。 もう一つの応用課題であるTRPSについてもαサブユニットへのIGP結合が、β反応に及ぼす影響を分子動力学計算とQM/MM解析によって解析し、2本の論文としてまとめることができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
計算科学的課題については、新しいバージョンのGENESISを公開することができ、「富岳」を用いた高精度かつ高速な計算をこの時点で多くのユーザーが利用できることに貢献できたことは大きな進展であると考えている。このバージョン(2.0.0)にはQM/MM、粗視化、全原子のいずれのモデルも含まれており、さらにわかりやすいチュートリアル(Tutorial 2022)もオンラインで公開している。アカデミック研究で得られた成果を広く利用可能にすることは重要であるし、それらの基礎となる理論や計算手法に関してもすでに複数の論文を発表した。 さらに今年度は応用研究についても非常に大きな進展があった。これまで、計算と実験で不一致があったGrb2の動的構造についてもいくつかの仮定は必要であるもののよく一致する結果が得られてきた。さらにTRPSについてもMD計算とQM/MM計算を組み合わせることで酵素反応におけるアロステリー効果という生命科学における本質的な問題にチャレンジすることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
計算手法の開発についてはほぼ完成の域に近づいているが、最終年には、QM/MM計算法を周期的境界条件で用いる手法や機械学習ポテンシャルの利用による高速化、MELD法の導入による実験データとMD計算の融合など重要な課題も残されている。これらについての準備状況は良好であり、最終的な計算を完成させて論文として報告する。 応用研究に関しても、Grb2の溶液中の動的構造に関するNMR・SAXS・MD計算を用いた統一的な解析手法を確立させて、この結果を論文として報告したい。その動的構造が液液相分離中でのGrb2やSosなどとの分子レベルの相互作用の理解に繋がっていく。Drkについても特に実験的な手法で相互作用メカニズムの詳細に迫りたい。 TRPSについては、β反応によるアロステリック機構の理解に加えて、2つの活性部位間のIndoleの輸送についても自由エネルギー解析による理解を深めたい。
|
Assessment Rating |
Interim Assessment Comments (Rating)
A: In light of the aim of introducing the research area into the research categories, the expected progress has been made in research.
|