Project/Area Number |
19J01251
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 43050:Genome biology-related
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
前田 海成 東京農業大学, 生命科学部, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2021)
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Budget Amount *help |
¥4,030,000 (Direct Cost: ¥3,100,000、Indirect Cost: ¥930,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2020: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2019: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
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Keywords | 細胞外多糖 / シアノバクテリア / 硫酸多糖 / 合成生物学 |
Outline of Research at the Start |
硫酸基で修飾された細胞外多糖(硫酸EPS)は、バクテリアの中ではシアノバクテリアが特異的に合成する。硫酸EPSの合成・制御系の解明は、シアノバクテリアの生態の理解に繋がるだけでなく、医薬品等として期待されている硫酸EPSの発酵生産などの応用研究においても重要であるが、これまでに明らかにされたものは研究代表者による一例(Xss)のみである。本研究では、Xssの情報を手掛かりとし、相同性とゲノム上の位置関係から未知合成系遺伝子を推定する手法(シンテニー解析)と、形質転換できない種の遺伝子を形質転換可能な別の種に導入する異種発現システムを組み合わせ、多様な新規硫酸EPS合成系の同定を目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
本年度は主に2つの内容に取り組んだ。1つ目は既に同定したモデルシアノバクテリアSynechocystis sp. PCC 6803 PCC-P株(以下S6803)における硫酸多糖Synechanとその合成系Xssの研究、2つ目は異種発現系のホストであるSynechococcus elongatus PCC 7942(以下S7942)への大規模ゲノム導入に関する研究である。 1つ目に関して、Synechanの化学組成分析の再現性確認と、一部のシアノバクテリア由来多糖に見られるアミノ糖のSynechanにおける含有率調査のため、Synechan組成分析をおこなった。その結果、Synechanの化学組成は以前と同様であり、アミノ糖の含有率はごく僅かであった。これらの結果はSynechanが、これまでに報告した単糖8:硫酸基2という組成比の多糖であることを支持した。またSynechan合成系に関する研究成果は2021年5月7日にオープンアクセスの国際学術誌「eLife」に受理された。さらに、本研究内容に関して特許出願をおこなった(特願:2020-148194)。 2つ目に関して、昨年度作製したS7942におけるSynechan合成系導入株について表現型の解析をおこなった。顕微鏡観察や糖定量の結果、この株はxss遺伝子発現誘導条件において細胞外に硫酸多糖を蓄積することが示唆された。一方で、S7942で合成された硫酸多糖に関して、蓄積量はS6803と比較してかなり少なく、細胞外における局在や組成も本来のSynechanと差異が見られた。 以上をふまえ、最終年度は2つ目の内容の発展に重きをおき、S7942におけるSynechan合成系異種発現の問題点の特定と改良をおこなう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
まず、当初の研究計画ほどの進捗は得られていない。原因は主に2つである。 1つ目は、新型コロナによる研究活動の大幅な制限である。東京農業大学では2020年4月から6月上旬までは原則研究活動が禁止であった。また、それ以降も緊急事態宣言中は研究室に滞在可能な人数と時間に関して制限が設けられている。これにより、単に実験時間が大きく減少しただけでなく、実験効率も低下した。 2つ目はSynechan論文の執筆活動である。本成果がeLife誌に受理されるまでには3誌にrejectされ、改稿に多くの時間を要した。しかし、結果としてeLife誌に受理されたので、必要な過程であったと考えている。 一方で、研究にかけられた時間あたりの進捗は概ね順調といえる。まず、実施計画通りにSynechocystis sp. PCC 6803のSynechan合成系に関して論文投稿と特許出願を達成した。また、Synechococcus elongatus PCC 7942において、Synechan合成系の異種発現を不完全ながら達成した。当初の研究計画で3年間の最終達成目標としていた、異種発現法に基づく未知硫酸多糖合成系の同定は、現状では困難と思われるが、そのために必要な異種発現系の構築に関しては着実に進行しているため、「やや遅れている」と自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度が最終年度であるため、研究成果の論文化を念頭において実験を計画中である。2021年度の達成目標は、Synechococcus elongatus PCC 7942(以下S7942)における現在のSynechan異種発現系が抱える問題点の解明と、可能であればその改良とする。シアノバクテリア(藍藻)におけるシアノバクテリア由来細胞外多糖合成系の異種発現研究は他にないため、より正確な異種発現系の構築だけでなく、異種発現の抱える問題点の解明も重要な成果となりうる。具体的には、異種発現株においてRNA-seq解析をおこなうことで、導入したXss遺伝子の発現状態を評価し、発現レベルが低い遺伝子があった場合は追加で過剰発現する。その後、硫酸多糖の蓄積量や組成の解析により、異種発現系に改善が見られたか検証する。ここまでの研究内容の論文化を目指す。 また、本研究計画を実施する過程で、Synechan構造の詳細な解明の必要性を強く感じた。異種発現の正確性の評価、Synechanの生理的役割などの基礎研究、Synechanの産業利用などの応用研究のいずれにおいても、Synechan構造の情報が今後必要となる。そこで、Synechan構造解明のための実験にも着手する。具体的には、Synechocystis sp. PCC 6803の様々なSynechan合成系変異株において蓄積した硫酸多糖の組成を調べ比較することで、Synechanの構造と詳細な合成メカニズムの解明を目指す。
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