Budget Amount *help |
¥1,500,000 (Direct Cost: ¥1,500,000)
Fiscal Year 2020: ¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
Fiscal Year 2019: ¥800,000 (Direct Cost: ¥800,000)
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Outline of Annual Research Achievements |
本年度は現地調査を予定していたものの、新型コロナウイルス拡大の影響で実施することができなかった。そのため、昨年度実施した現地調査で収集したデータの分析およびインターネットを介した補足的調査を中心に研究を進めた。また、先行研究を用いて東南アジアの諸言語と比較を行い、ヌン語が持つ特徴を明らかにした。研究成果は論文や口頭発表の形で公表した。具体的には、①音節内部構造、②頭子音の史的変化と声調の関係、③動詞連続に見られる一部の動詞の意味の希薄化・意味拡張について研究成果を公表した。 ①について、東南アジアの諸言語ではC1C2VC3という音節構造においてC2はオンセットを構成する要素として解釈されることが一般的である。しかし、ヌン語のC2は隣接する要素との共起制限や畳語におけるC2の生起状況を見ると、オンセットに含まれない可能性を指摘した。 ②について、タイ祖語の*b-, *d-, *g-は、多くの場合現在のタイ諸語の無気音p-, t-, k-に、一部の言語では有気音ph-, th-, kh-に変化しており、無気音か有気音かの違いはあるが、1つのタイ祖語の子音音素に1つの子音音素が対応している。しかし、ヌン語チャンディン県方言では、*b->p-/ph-, *d->t-/th-, *g->k-/kh-のように、1つのタイ祖語の子音音素に2つの子音音素が対応している。この対応関係を詳しくみると、タイ祖語の声調*Bを持つ音節の場合*b-, *d-, *g-はph-, th-, kh-に、それ以外の声調を持つ音節の場合p-, t-, k-に対応していることがわかった。 ③について、ヌン語の動詞連続を見ると、系統を同じくするタイ語やラオ語と共通する特徴が多く見られる。しかし、ヌン語の動詞連続に見られる特徴の一部は、ベトナム語との言語接触によって形成された可能性があることを指摘した。
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