Project/Area Number |
19K00034
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 01010:Philosophy and ethics-related
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Research Institution | Takasaki City University of Economics |
Principal Investigator |
福間 聡 高崎経済大学, 地域政策学部, 教授 (40455762)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,290,000 (Direct Cost: ¥3,300,000、Indirect Cost: ¥990,000)
Fiscal Year 2023: ¥390,000 (Direct Cost: ¥300,000、Indirect Cost: ¥90,000)
Fiscal Year 2022: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2021: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2020: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2019: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
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Keywords | 非理想理論 / 特定された生 / 統計的な生 / 非理想的契約主義 / ジョン・ロールズ / 公正としての正義 / 平等な政治的諸自由の公正な価値の保障 / 財産所有民主制 / アーレント / ジェファーソン / 規範倫理学 / メタ倫理学 / 契約主義 / 構成主義 / 帰結主義 / 肩代わり義務 / ロールズ / アリストテレス / 中間層 / 善に対する正の優先権 / 不遵守 / 応用倫理学 |
Outline of Research at the Start |
研究計画であるが、初年度は申請者の提起する契約主義的構成主義(以下、CC)と他の倫理学理論(カント主義、功利主義、徳倫理学)との比較研究を行い、次年度は道徳実在論や非認知主義、表出主義や虚構主義といったメタ倫理学の諸理論とCCとの比較研究を行う。第三年度は政治哲学における非理想理論の研究動向を踏まえた上で、CCの非理想理論としての完成を目指す。更にはこれまでの研究成果を国際学会等で発表し、国際的なジャーナルへの投稿を行う。第四年度と第五年度は倫理学が応用可能な分野(公共政策、グローバル・ジャスティス等)の諸問題にCCのアプローチが有効であるのか、その可能性を探究する。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の目的は、「倫理学における非理想理論の構築」を目指すことにあるが、本年度は非理想的状況における特定された生と統計的な生との間での倫理的判断についての研究を行った。 この研究では、援助に関して、特定された生と統計的な生のどちらを優先すべきかという対立の調停について掘り下げた。この二つの生の間でのジレンマを説明するために、子どもの臓器移植の数が限られている国において、しばしば海外で臓器移植手術が行われているというシナリオを想定した。多額の費用がかかるため、メディアやインターネットを通じて、こうした子どもの動画や実名が取り上げられ、クラウドファンディング・キャンペーンが行われている。こうした取り組みによって、1カ月で数百万ドルもの資金を集めることもある。しかし、ここで倫理的な疑問が生じる。こうした一人の子どもに多額の資金を用いるよりも、途上国のより多くの子どもたちの命を救う方がの望ましいのではないか、と。 私たちは個人として一定額の寄付を行うに際して、海外での移植手術が必要な子ども一人(特定された生)と途上国で予防可能な疾患や栄養失調に苦しむ多くの子どもたち(統計的な生)のどちらを配慮するのが、倫理的であるのだろうか。「身元のわかる犠牲者効果」によって我々は前者を配慮する傾向にあるが、この傾向は道徳的に正当化可能なものであるのだろうか。可能であるとするならばどのような道徳的な理由が提示される場合なのであろうか。この問題について非理想的契約主義の観点から考察をおこなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年に東北哲学会で発表した原稿を論文化したものが出版された(『ロールズを非理想化する――修正された第一原理の制度化に向けて』)。この論文を英文化し、加筆・修正した原稿をThe Uehiro-Oxford-Melbourne-Japan Conferenceで発表した。また2023年8月から9月の間、Monash UniversityのRobert Sparrow教授の下でVisiting Scholarとして「倫理学における非理想理論の構築」をテーマとした在外研究を行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、ロールズの正義構想をさらに非理想化するにあたって彼の道徳感情論、とりわけenvy(ねたみ)やうらみ(rancor)、いきどおり(resentment)といった感情について検討を行う。社会が安定的あるためにはこうしたネガティブな感情が人びとの間で激しく惹起されないことが肝要であるが、自尊の喪失が原因となって引き起こされるこうした感情に対してどのような政策があれば、秩序だった社会が可能になるのかを非理想理論の観点から考察する。
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