タイの信教の自由に与えたキリスト教の影響と課題:『宗教寛容令』成立過程をめぐって
Project/Area Number |
19K00085
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 01030:Religious studies-related
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
森島 豊 青山学院大学, 総合文化政策学部, 教授 (70468388)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥3,640,000 (Direct Cost: ¥2,800,000、Indirect Cost: ¥840,000)
Fiscal Year 2022: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2021: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2020: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2019: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
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Keywords | 宗教寛容令 / マックギルバリー / 米国領事館D. B. Sickles / ラーマ5世 / 信教の自由 / ラーマ五世 / アメリカ領事館 / プロテスタント教会 / 福音伝道 / タイ宗教寛容令 / キリスト教人権思想 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、タイの歴史上最初に信教の自由を保障した『宗教寛容令』発布の経緯とキリスト教の影響を解明する。信教の自由に関するラーマ5世の勅書『宗教寛容令』の前文にはタイ北部でのキリスト教弾圧に対する宣教師の告訴が発布の要因であると記してある。この歴史的経緯を明らかにするために、第一に、タイにおけるキリスト教宣教師の働きとタイ北部での迫害状況を調査し、勅書発布に至る経緯を具体的に明らかにする。第二に、信教の自由は人権項目であるので、『宗教寛容令』成立をキリスト教人権思想の観点から思想史的に解明する。第三に、『宗教寛容令』成立後の歴史を通してタイにおける信教の自由の影響と課題を明らかにする。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究はタイ国北部でラーマ5世が信教の自由を保障した最初の公文書「宗教寛容令」の成立過程を調査している。これまでキリスト教宣教師の影響に注目してきたが、バンコク王朝が宣教師の要望に答えた背景にある政治的要因を調査している。 本年度は特にこの研究調査の中で発見した当時の米国領事館D. B. Sicklesの資料群の分析をした。この資料の中にはキリスト教宣教師マックギルバリーたちの手紙とそれに対応した領事館の報告書が含まれている。これは宣教師の報告以外で「宗教寛容令」に関わる未見の第一級資料となる。しかし、古くなったクセの強い手書きの手紙は判読が難しく、特に領事館のアメリカ本土に送られた報告書とバンコク王朝とのやり取りを記したタイ語の手紙の判読に多くの時間を要する。現在、関係文書の特定とその文字起こしを行なっている。 また、「宗教寛容令」の成立にある国家統一の政治的意図の背景には、日本の国家統一における政治的動向と類似している点が見受けられ、戦後の日本再建における政府の取り組みと比較検討するための足がかりになる研究を行った。これらは「戦後「平和国家」の成立と展開ーー賀川豊彦の働きをめぐって」(『キリスト教と文化』38号)、「聖書的語りの担い手と日本社会の壁ーー桑田秀延が苦闘した日本精神をめぐって」(『神学』84号)、「日本の人権思想を問うーー災禍に迫る危機」(『福音と世界』78号)で報告した。また、国家からの圧力や災害におけるキリスト教の対応について、キリスト教思想史の観点から共通する理念の考察を『夜明けを共に待ちながら』(教文館)、『大災害の神学』(キリスト新聞社)において発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の最初の目標であった「タイの歴史上最初に信数の自由を保障した『宗教寛容令』発布の経緯とキリスト教の影響、 そしてタイにおける信教の自由の課題を解明する」という点については、宣教師たちの資料を分析し、宣教師たちの思想史的な観点も考察できた。これらの成果は「タイにおける「信教の自由」の確立に与えたキリスト教の影響」(『贖罪信仰の社会的影響ーー旧約から現代の人権法制化へ』教文館、2019年、所収)、「アジアにおけるピューリタニズムの影響と限界ーータイ国における信教の自由をめぐってーー」(『ピューリタニズム研究』15号2021年)で公表したことから、「概ね順調」という評価にした。 調査の中で、「宗教寛容令」に関わるD. B. Sickles文書の発見は研究のさらなる進展であった。しかし、これにより宗教的要素以外の政治的要素という新たな研究課題が与えられた。また、信教の自由については、文書がアメリカ人宣教師の安全保障という性格であった可能性までは突き止められたが、その傍証を固めるためにも、今後はSickles文書の判読分析を通して、「宗教寛容令」成立の全貌を明らかにしたい。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策について、次の2点に絞って調査を行う計画である。第一に発見したシッケルズの外交文書の判読・分析を進め、マックギルバリーの証言との整合性とバンコク王朝との交渉の裏付けを確認する。第二に、the Presbyterian Historical Societyにある資料調査を通して勅書発布後にキリスト教弾圧が行われた事実を確認する。 第一点目については、現在「宗教寛容令」の現物が紛失しているが、シッケルズ外交文書により、マックギルバリーの証言以外の関係者により関連する重要な文章が発見された。これにより、成立過程の詳細な状況を把握できると同時に、勅書がどのようなレベルの文書であったのかを確認する。第二点目に関しては、2023年夏からの在外研究においてthe Presbyterian Historical Societyを訪れ、関係文書の収集し、分析を重ねる。
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Report
(4 results)
Research Products
(24 results)