14世キリスト教霊性における神化思想の受容と展開:エックハルトとゾイゼを中心に
Project/Area Number |
19K00119
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 01040:History of thought-related
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
阿部 善彦 立教大学, 文学部, 教授 (40724266)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥2,080,000 (Direct Cost: ¥1,600,000、Indirect Cost: ¥480,000)
Fiscal Year 2023: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2022: ¥390,000 (Direct Cost: ¥300,000、Indirect Cost: ¥90,000)
Fiscal Year 2021: ¥390,000 (Direct Cost: ¥300,000、Indirect Cost: ¥90,000)
Fiscal Year 2020: ¥390,000 (Direct Cost: ¥300,000、Indirect Cost: ¥90,000)
Fiscal Year 2019: ¥390,000 (Direct Cost: ¥300,000、Indirect Cost: ¥90,000)
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Keywords | エックハルト / ゾイゼ / 誕生 / 存在 / 教父思想 / ミシェル・アンリ / タウラー / ドイツ神秘思想 / 神化思想 / 魂における神の誕生 / 離脱 / 身体性 / 聖餐論 / 霊的修練 / フランドル神秘思想 / シュネルギア / 受肉 / アスケーシス |
Outline of Research at the Start |
本研究は、聖書的・教父的伝統を有する神化思想(Theosis)が、14世キリスト教霊性史においてどのように受容され展開したかを、主に、エックハルトと、その弟子ゾイゼのテキストに基づいて明らかにする。西方キリスト教における神化思想の伝統の忘却が、エックハルト研究に致命的な欠陥をもたらしたという問題認識に立ちつつ、本研究では、エックハルトとその弟子ゾイゼのテキストを中心に、14世紀西方キリスト教世界において、どのように神化思想の伝統が脈々と受容され、いかなる思想展開を遂げたのかを解明する。
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Outline of Annual Research Achievements |
エックハルト、ゾイゼにおける神化思想の特徴について、原典資料の読解を通じて、これまで保持してきた一定の見通しに対して検討を行い、これまでよりも内容をより確かにとらえることができた。具体的には、エックハルトにおいては、神化思想は、聖書および教父思想にもとづくものとして「誕生」を中心に考えられているが、その中心となる「誕生」の核となる神的生命の内動をエックハルトがどのように論じているか、ラテン語およびドイツ語原典資料の読解を通じて、その基本線をたどり、トマス・アクィナスにおける神名理解、つまり、「在りて在る神」としての神の「存在」を徹底的に深めたところにあることを確認することができた。 また、ゾイゼにかんしては、とくに、エックハルト弁明の書である『真理の書』を中心に読解を進め、エックハルト弁明の基本線が「誕生」におかれていること、そして、「誕生」の核となる神的生命の内動についても、エックハルトの基本線に沿って示されていることを確認した。その際、ゾイゼは、エックハルト弁明にあたって、エックハルトよりもさらに際立った仕方で「誕生」の核となる神的生命の内動の深度を「無」として示そうとしていることなどを確認することができた。 さらに、以上のことが、エックハルト、ゾイゼの思想源流となる、教父たちによって深められ正伝された〈信〉、すなわち〈神的生命と人間の理解:三位一体論、受肉論、神の像としての人間理解として、ギリシャ哲学との格闘を通じて深められた思想・言語世界であり、ニケア信条、カルケドン信条などはその精華となる〉にいかに由来するかについて、一定の展望を得ることができた。この点についてはミシェル・アンリおよびイヴ・コンガール、ベルナール・セスブーエ、また、谷隆一郎、宮本久雄などの研究から大いに学ぶところがあった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
原典資料の読解において、一文一文、つきあたってゆくと、やはり、おもいがけない発見や難所に出くわすことになり、そのつど、研究計画全体をいっそう深めて練り上げる必要が生じる。その意味で、単純に、進展しているというよりも、ゆきつもどりつしながらおおむね順調に進んでいる状況にある。
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Strategy for Future Research Activity |
エックハルトの「誕生」に関するテキスト箇所(ドイツ語・ラテン語原典)の訳読、ゾイゼの『真理の書』の原典訳読を進める。また、両者の思想源流にある教父たちにおける「誕生」および「神化」理解についても検討を進める。具体的には、今年度までの研究を通じて、特に、西洋哲学の新プラトン主義的思考枠との比較を通じて判明してきたことをさらに追求する。 すなわち、教父たちが聖書において示される父と子の生み・生まれる誕生の関係を理解する際に、その生むものと生まれるものを能動と受動の関係として捉える一方で、教父たちは能動側と受動側を序列化せず、互いに同等のものとして互いを自身のうちに包摂し合うとする思考に徹しており、そこに新プラトン主義的思考枠に還元できない特質があることが明らかになってきた。他方、新プラトン主義的思考枠では、生むものと生まれるものの能動と受動の関係は上位と下位に分類・序列化され、生むもの=上位のものに対して生まれるもの=下位のものは、その起源である生むものから外化された派生的で劣ったものとされる。 これに対して、教父たちは、父・生むものと子・生まれるものは、断じて、外的に序列・階層化されず、相互内在的であり、互いにおいて完全に自己自身であるという、キリスト教独自の、前例のない神論を深め、神学論争を巻き起こした。教父たちの正統思想によれば、子は父において自分自身であり父は子において自分自身であるという、この相互内在性こそが、父・生むものと子・生まれるものの一性であり、両者の同等性の根拠である。この相互内在性の理解が放棄されるとき、父と子との一性を、直観のように主体と客体に分裂したものの一致・合一と捉え、また、父と子に不等性を見る諸異端的見解が生じる。こうした教父以来のキリスト教独自の思想形成の中にエックハルト、ゾイゼの「誕生」「神化」理解をさらに究明する。
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Report
(4 results)
Research Products
(13 results)
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[Book] ミシェル・アンリ読本2022
Author(s)
川瀬 雅也、米虫 正巳、村松 正隆、伊原木 大祐
Total Pages
350
Publisher
法政大学出版局
ISBN
9784588151279
Related Report
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[Book] キリスト教文化事典2022
Author(s)
キリスト教文化事典編集委員会
Total Pages
790
Publisher
丸善出版
ISBN
9784621307151
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