Project/Area Number |
19K00181
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 01060:History of arts-related
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Research Institution | Meisei University |
Principal Investigator |
向後 恵里子 明星大学, 人文学部, 教授 (80454015)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥3,250,000 (Direct Cost: ¥2,500,000、Indirect Cost: ¥750,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2020: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2019: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
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Keywords | 美術史 / 身体 / 戦争画 / 戦争の表象 / イメージ論 / 視覚文化論 / 表象文化論 / 西洋絵画の受容 / 身体イメージ / パノラマ / 戦争イメージ / 日本近代美術史 / 戦争のイメージ / 兵士のジェンダー / 受容 / メディア文化 / トモエ会 |
Outline of Research at the Start |
20世紀初頭/明治時代後期において、戦争のイメージは重層的な要因で変容していった。まずは戦争そのものが20世紀の総力戦・大量死の様相へ移行し、それを報じる媒体では写真の使用が広がる。美術概念の浸透とともに芸術としての戦争画のあり方も変化していく。本研究はこうした背景のもと、19世紀から20世紀へと変容のさなかにある戦争画について、その西洋からの受容およびパノラマや水彩など横断的な展開を、洋画の第三の画派であるトモエ会の活動を中心に調査する。そのイメージがどのようなゆらぎをはらんで成立・展開し、そして忘却されていったのかを、作例の調査とともに考察する。
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Outline of Annual Research Achievements |
23年度は前年度までの調査・研究を継続しながら、主に次の2点においてとくに研究の進展があった。 1. 論文「絵筆とカメラと機関銃――日露戦争における絵画とその変容」(井上泰至編『渾沌と革新の明治文化 文学・美術における新旧対立と連続性』〈アジア遊学285〉、2023年7月、pp. 220-234) 上記論考では、これまでの日露戦争イメージ研究の蓄積を整理しつつ、本研究課題の課題のひとつであるよりグローバルな視点をいかして、日露戦争期の戦争の表象の問題を再考した。この執筆によって、19世紀から20世紀初頭の日本において西洋の絵画の移入が続きつつ報道のためのイメージも同時に期待されていること、また戦争の様相自体が、たとえば機関銃の存在に象徴されるように大きな転換を迎えたことも明確に認識された。 2. 海外調査(フランス、パリおよびヴェルサイユ) 本調査においては、国内のほか23年度はフランスにおいて19世紀から20世紀における戦争画の様々な展開を実物資料をもとに概観した。とくに大きな回顧展の開催されていたJean-Horace Vernet(1789-1863)、また19世紀の作家Edouard Detaille (1848 - 1912) Alphonse de Neuville (1835 - 1885)など特定の戦争画家の作品については日本国内ではほとんど実見の機会がないため、貴重な機会となった。さらに、ヨーロッパにおいては文化においてもきわめて多大な影響をもった第一次大戦関係の視覚資料についても調査を行うことができた。第一次大戦は日露戦争の10年後の戦争であり、その差異とともに共通点は本研究課題にとって重要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
23年度は上記論文を執筆できたことに加え、研究計画立案の当初から計画していた海外における戦争画調査を遂行できたため、研究全体として進捗が大きく、24年度の最終年度へ向けて大きくはずみがついた。 具体的には、まずこの論文執筆過程においてこれまでの研究や考察の整理を行い、本研究課題の焦点についてより具体的に検討できたことがあげられる。最終年度へ向けて、とくに焦点をあてる必要のある領域が明快になった。 また出張による海外調査においては、文献調査では受けとめにくい公共的メディアの実感をもって、19世紀のたとえばルイ・フィリップからナポレオン3世の時代、すなわち日本の画家たちが直接間接的に受容していった時代から、20世紀第一次大戦期に至る戦争画とその表象空間について把握できたことが成果にあげられる。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度は本研究の最終年度にあたるため、以下の小テーマについてそれぞれ研究をまとめてゆく。 ① 19世紀における西洋の戦争画の移入の様相: これまでの文献調査と、23年度に行った海外実地調査をもとに、論考を作成・発表する。とくに19世紀の戦争画受容の具体的な様相だけでなく、20世紀初頭の変容についても注目したい。 ② トモエ会および同時代の画家たちの戦争画作例: 同様に、これまでの文献調査と国内調査をもとに、論考を作成・発表する。とくに、報道や時事における視覚イメージ需要の高まりと、機関銃や大鑑巨砲主義という戦争の変容との芸術としての戦争画の交錯を丁寧に追いたい。 ③ 戦争画の展開におけるパノラマと水彩画の意義: これまでの文献調査と資料調査をもとに、論考を作成・発表する。とくに日露戦争期に公開され、その後共進会会場を舞台に様々な地域をまわったムーヴィング・パノラマである観戦鉄道については明治美術学会等への発表を予定している。
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