Realism, Vision and Spirituality: A Study of the Image in Netherlandish Illuminated Prayer Books of the 15th and 16th Centuries
Project/Area Number |
19K00200
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 01060:History of arts-related
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
黒岩 三恵 立教大学, 異文化コミュニケーション学部, 教授 (80422351)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥3,510,000 (Direct Cost: ¥2,700,000、Indirect Cost: ¥810,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2020: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2019: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
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Keywords | 美術史 / 建築史 / 写本彩飾 / ブルゴーニュ公 / ブリュッセル大聖堂 / フィリップ善良公 / 聖体 / ユダヤ嫌悪 / キリスト教図像学 / 聖バルバラ / 中世 / ルネサンス / フランス / ベルギー / 彩飾写本 / 祈祷書 / ネーデルラント美術 / ネーデルラント / 時祷書 / トマス・アクィナス / ジャン・ミエロ / キリストの洗礼 / 典礼 / イメージ研究 |
Outline of Research at the Start |
中世末期からルネサンスにかけての15・16世紀のネーデルラントで制作された彩飾祈祷書写本を対象として、聖体図像に注目しながら、様式分析、図像解釈に加えて、典礼・祈祷文の分析やキリスト教の聖体の教義と信仰における観想の実践とも関連する「霊的な視覚性」の概念を援用して、イメージの特性を新たな視点から解明する研究である。 近代への歴史的転換点におけるネーデルラント社会の変革を考慮し、同時期の絵画様式の展開を従来の技術論的な解釈に加えて「見ること・見えること」のキリスト教的な意義から説明することで、看過されてきた祈祷書写本の彩飾の洗練の極が有する意味と機能面を明らかにすることを企図する。
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Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は、研究成果の発表1件と海外における調査と資料収集で進捗をみた。 研究成果は、昨年2021年度に資料を収集・整理した、ブリュッセルで1370年頃に発生したユダヤ人による聖体冒涜事件を主題とする一群の美術に関する研究論文である。冒涜された奇跡の聖体を安置した現ブリュッセル大聖堂の10世紀から16世紀までの建築・装飾の歴史と、ブリュッセルの聖体冒涜事件の言説の展開史を対比的に概観することを通じて奇跡の聖体図像の展開を明らかとした。同時に、ブラバント公ついでブルゴーニュ公と大聖堂との密接な関係の中から奇跡の聖体信仰が高められ、大聖堂付属の奇跡の聖体礼拝堂の建造と装飾にはフィリップ善良公の寄与があったことを指摘した。 夏期に1か月の期間で、ブリュッセル、オックスフォード、ロンドンで彩飾写本の調査ならびに二次資料の収集を行った。 彩飾写本は、フィリップ善良公時代の1440年代から50年代のフランドルで制作された、デジタルデータベースに未収録の祈祷書写本を4点調査した。手持ち機材での撮影、写本学的なデータ収集とともに、各写本に関する先行研究の閲覧と複写を行った。写本彩飾史上知られている、1420年代までのパリを中心とする彩飾から、フランドルやエノー等を拠点とするブルゴーニュ公国内での彩飾への移行期に関する新たな知見等が期待される。また、ロークロスター小修道院で制作された俗語、ラテン語による、上記の聖体冒涜事件を説話と奇跡譚に編纂したテクスト等を収録する聖人伝・説話集成写本2点を調査した。当世の修道院における写本彩飾の実態とともに、一般信徒の関心とそれに応える修道院の活動について新たな知見が期待される。 二次資料は、入手が困難なオランダ語文献を含む、ブリュッセル大聖堂の建築史、フィリップ善良公の芸術庇護、聖女バルバラ伝に関する資料を閲覧、複写した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度以降、新型コロナウィルスの世界的流行を原因とする行動の規制により、当初の研究計画からの種々の修正を余儀なくされたことは、彩飾祈祷書写本の実地調査による、複数ページに連続する彩飾とテクストが眼前に展開する視覚効果そのものを主たる分析の対象とすることから、15・16世紀における「視覚性」とは何であるのかについて、美術史、キリスト教の教義、一般信徒の関心、自然科学への覚醒等の文化史を土台とする理論的な側面を加味することへと、研究方法全般とくに彩飾写本分析方法の複層・多視点化の促進につながった。 ブリュッセルの聖体冒涜事件を主題とするブリュッセル大聖堂の建築と装飾は、彩飾祈祷書写本が用いられた空間を具体的に示し、当世のカトリック教会と信徒が希求する信心の一断面を、聖体の実体変化への関心やユダヤ人や異端などへの敵対心を通じて例示する。彩飾写本研究を中核にする本研究において、上記の軌道修正はより深化した多面的な分析と考察の道筋を開くものとなった。 かかる視点の深化を踏まえて、ようやく海外渡航の各種の規制が緩和された2022年度は、夏期に1か月間、ブリュッセル、オックスフォード、ロンドンでは計6冊の彩飾写本を調査し、二次資料を収集することがかなった。質・量ともに意義ある資料を一気に入手することができたが、これらを十分に整理、精査し、総合的な視点からの研究報告としてまとめるには、2022年度の秋・冬期では十分な時間をとることができなかった。 よって研究成果のさらなる展開のために、2023年度までの研究期間の再延長を申請し、お認めいただいたところである。2023年度に研究計画の最終局面を持ち越す形となったため、進捗状況はやや遅れていると判断する次第である。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、新型コロナウィルスのパンデミックを理由とする再度の研究期間の延長による最終年度となる。以下の二つの相互に関連する研究をまとめ、発表することを計画している。 まず、総合的な研究報告として、フィリップ善良公(在位1419-1467)の芸術庇護を中心とする当世のフランドルの彩飾祈祷書写本にみるイメージ、デザインと霊的な視覚性の特質に関する論考をまとめる予定である。この報告書では、2019年度以降発表してきた研究成果を踏まえつつ、2022年度夏に入手した資料をもとに、ネーデルラントにおける写本彩飾の展開、俗語(オランダ語、フランス語)の祈祷文と彩飾、ローカルな図像の特性等に注目した論考を行う予定である。 また、フィリップ善良公の彩飾祈祷書でも重要な位置を占める聖バルバラへの祈祷と図像について、既に2021年度に発表したフランスでのバルバラ図像の前史的な論考に続く、ネーデルラントにおける同聖女図像に関する論考をまとめる予定である。フランスとは異なり、ネーデルラントこそドイツと並んでバルバラ崇敬が極めて盛んであったことは、善良公が父祖の地フランスから聖女崇敬を継承したというよりは、自分の領地の慣習を受容したことを示唆する。他方、ヤン・ヴァン・エイク筆の著名なバルバラ像に代表されるモニュメンタルな板絵の数々に比して、ネーデルラントの彩飾写本に描かれた聖バルバラに関する先行研究は手薄である。同地におけるバルバラ崇敬の起源、崇敬の内実の変遷にも関心を向けながら、写本彩飾におけるバルバラ図像を中心とする研究成果の発表を予定している。
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Report
(4 results)
Research Products
(4 results)