Early 17th century Roman religious paintings and ordinary people
Project/Area Number |
19K00206
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 01060:History of arts-related
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
浦上 雅司 福岡大学, 人文学部, 教授 (60185080)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥2,210,000 (Direct Cost: ¥1,700,000、Indirect Cost: ¥510,000)
Fiscal Year 2021: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2020: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2019: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
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Keywords | 17世紀ローマ美術 / 近世美術と市場 / 画家と購買層 / 庶民と美術 / ローマ美術界 / 近世絵画と絵画市場 / 一七世紀ローマ / 庶民と芸術 / 対抗改革期のカトリック美術 / 近世芸術受容における知識人と庶民 / 17世紀ローマ絵画 / 対抗宗教改革絵画 / 庶民と絵画 / 庶民と知識人 |
Outline of Research at the Start |
17世紀初頭のローマでは、サンピエトロ大聖堂を始め新しい聖堂が多く建設され、その内部には多数の祭壇画が描かれた。本研究は、カトリック教会が、祭壇画なども活用して庶民への宗教教育を強化しようとしていたこの時期、絵画を巡る社会的状況が変化し、絵画自体が一般の人びとにとってもかつて無いほど身近なものとなっていた現実を踏まえ、聖堂に描かれた祭壇画も、教会から庶民に押しつけられるものではなく、庶民の美術観、絵画観を考慮に入れて制作する姿勢が求められるようになったという観点から、当該時期のローマで描かれた祭壇画の制作状況と表現の特質を考え直す。
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Outline of Annual Research Achievements |
令和2年度から3年度にかけてコロナ禍のため、海外はもちろん国内でも移動が制限され、本研究計画の遂行に大きな支障が生じた。 令和4年度についても、令和5年3月に至るまで海外旅行の制限が厳しかったため、大学での業務を行いながら一定の期間を確保し、海外に出張して作品調査、文献調査することは不可能だった。このため令和4年度の大部分の期間は、令和3年度と同様に、もっぱら福岡で入手できる文献資料に基づいて研究を進める事に費やされた。 これまでの研究において、17世紀ローマにおいて、室内壁面装飾として絵画を活用することが次第に広まり、美術市場はそれに伴って活性化し、絵画の売買が多様な形態で行われるようになっていたことが確認された。同時に、当時のローマで、絵画の収集や売買に積極的に関与するような文化的・経済的余裕を持つ人々はローマ住民のせいぜい20%程度と考えることが妥当だということも、ドリュモーやシュミットなどの社会史的研究成果から確認された。 ローマの「庶民」は、このような活性化しつつあった絵画市場とは無縁だったわけだが、サン・ピエトロ大聖堂をはじめとする、対抗改革以後、ローマで多く建設された新しい聖堂を飾る祭壇画は庶民にも公開されており、カトリック教会は教義に則ることはもちろんだが、庶民を引きつける魅力ある宗教美術制作を奨励した。こうした状況下に、ローマ庶民は単に聖人たちの生涯について学び、あるいはキリスト教の神髄にふれるためだけに聖堂の祭壇画を崇敬したのではなく、人物表現や風景表現、情景の説得力など、「芸術的な」側面からも鑑賞していたことが、バリオーネやパッセリ、ベッローリなどによる同時代の文献資料から、確認された。 同時に、美術に関心のある知識人たちも、「庶民」が美術にどのように接するかということにも関心を持っていたことが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初、本研究の実行期間は令和元年度から3年度にかけての3年間だったが、コロナ禍のため、当初予定していた海外調査が行えず、国内での移動も厳しく制限された。二年連続で大学の授業が遠隔授業となり、学会も軒並みリモート開催となった。このような状況は、本研究の推進にも大きな影響を及ぼした。 このため、令和元年度から3年度にかけて、本研究は福岡で入手できる文献資料に基づいて行うことを余儀なくされた。 具体的な事例や作品に基づいての研究は不可能だったが、厳しい制約を課せられた状況下で、17世紀初頭のローマ庶民の活動状況について、教義の美術史研究の枠組みを超えて、経済史や社会史の領域まで広げて文献調査を行えたのは不幸中の幸いだったといえる。Delumeau の Vie economique et social de Rome や Reinhardt の UEberleben in der frueneuzeitlichen Stadt など特筆すべき社会経済史の資料で、研究対象時期のローマにおける、庶民を含む社会全体の経済・文化的状況についての活動について、より多角的な観点から理解することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、最初、令和元年度から令和3年度までの計画だったが、コロナ禍のため、令和4年度まで延長された。令和4年度も、しかしながら、長期にわたって制約が多く海外での調査は不可能だったが、当該年度の最終期にあたる令和5年3月になって海外旅行の制限が大きく緩和された。 3月は例年、大学での業務が比較的少なくなるので海外調査が行いやすい。この状況を利用して、令和5年3月、3年ぶりに海外調査を行った(ニューヨーク、ワシントン)。両都市の主要美術館に収蔵展示されているイタリア美術作品に拠って当該時期の庶民がどのように表現されているか考察したが、やはり実作品に基づいて調査することの重要性を再確認した。 本研究は令和5年度まで改めて期間延長が認められており、これまでの知見に加えて、新たな現地調査で実作に基づく知見を積み上げ、有意義な総まとめを行うことが令和5年度の目標である。
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Report
(4 results)
Research Products
(1 results)