Project/Area Number |
19K00376
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 02020:Chinese literature-related
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Research Institution | Prefectural University of Hiroshima |
Principal Investigator |
柳川 順子 県立広島大学, 地域創生学部, 教授 (60210291)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,730,000 (Direct Cost: ¥2,100,000、Indirect Cost: ¥630,000)
Fiscal Year 2023: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2022: ¥390,000 (Direct Cost: ¥300,000、Indirect Cost: ¥90,000)
Fiscal Year 2021: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2020: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2019: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
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Keywords | 曹植 / 漢代宴席文芸 / 建安文壇 / 曹丕 / 楽府詩 / 五言詩 / 『三国志』 / 西晋文学 / 建安文学 / 魏晋文学 / 表現の対自性 / 表現の授受 |
Outline of Research at the Start |
三世紀初めの魏の建安文学には、漢代作品には希薄であった個人の対自的な思いの表出が認められる。従来「文学の自覚」といった言葉で言い表されてきたこの現象について、本研究では、作者や作品間における表現の授受という側面に光を当て、その画期性を分析的に明らかにする。具体的には、最も多くの作品を残す曹植に焦点を絞り、彼が漢代宴席文芸の文辞を個人の対自的な表現に転換している事例、そうした曹植独特の表現が、時空を超えた他者に受けとめられている事例を拾い上げて分析し、その意義を考察する。
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Outline of Annual Research Achievements |
中国中世の初頭に位置する三国魏の文学は、漢代の宴席で生成展開してきた詩歌等の文芸を、個人の思いを詠ずる士大夫の文学へと昇華させた点で画期的だと言える。この文学の質的転換の実態と、そうした変化が生じた経緯を、当代を代表する文人曹植の作品を通して、具体的に明らかにすることが本研究の中心的テーマである。こうした方向性に沿って、2023年度は次のような実績を挙げることができた。 まず、丁晏『曹集詮評』を底本とし、そのテキストについて、曹植作品を収載する選集や類書等の諸本との校勘を記したデータベース「曹植の全作品テキストと校勘」は、すべての作業を終え、自身が運営するWebページ(https://yanagawa2019.sakura.ne.jp/)上に公開した。 また、同Webページ上に設けている「曹植作品訳注稿」については、「妾薄命行二首」其二、「豫章行二首」其一・其二、「梁甫行」、「丹霞蔽日行」、「善哉行」、「当来日大難」の本文校訂、訓み下し、通釈、語釈を公開した。なお、当初の計画どおり、すでに公開したページの中に改めるべき点が見つかった場合は、その都度修正を加えている。 以上の基礎的作業を進める中で気づいたことは、随時、同Webページ上に札記として公開し、それらの気づきや考察を重ねた結果を、論文や口頭発表というかたちにまとめ、地域における公開講座でも発表した。内容としては、曹植に固有の環境とその文学の質的変化との関係性、及び曹植文学が続く西晋王朝の人々に強い伝播力を持つこととなった理由について考究する結果となった。 加えて、Webページの一部(現在の研究内容、学術論文とその概要など)について、中国語版を公開した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究業績の概要」に記した実績内容と、以下に記すような自己評価から、総合的に判断して「おおむね順調に進展している」とした。 ・「曹植の全作品テキストと校勘」の公開により、曹植研究の基盤を作ることができた。 ・「曹植作品訳注稿」については、読み進めることができた作品があまり多くなかった。 ・これまでに蓄積してきた調査考察を、論文や口頭発表などのかたちで公開できた。 ・まだ論文化には至っていないが、ある程度の精度で考察が進んでいる課題がある。
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Strategy for Future Research Activity |
「現在までの進捗状況」を踏まえ、本研究の最終段階となる本年度は、次のような研究活動に取り組む予定である。 ・「曹植作品訳注稿」のうち、詩・楽府(巻4・5)を完成させ、印刷物として研究者の方々に配布し、批正を乞う。 ・調査考察の途上にあるいくつかのテーマのうち、「雑詩六首」、「洛神賦」、「鷂雀賦」については論文化に着手する。 ・本研究テーマに関してこれまで行ってきた考察を体系化する。すなわち、古代から中世に向けて大きく舵を切っていく中国文学の質的転換の実態とその経緯を、曹植の文学作品を通して、具体的に究明する。 ・今後、曹植文学の全体像を彫り出し、その歴史的位置をより明瞭に描き出したい。そのために必要な課題を把握する。
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