Project/Area Number |
19K00440
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 02030:English literature and literature in the English language-related
|
Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
大西 洋一 秋田大学, 教育文化学部, 准教授 (10250656)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2025-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
|
Budget Amount *help |
¥2,210,000 (Direct Cost: ¥1,700,000、Indirect Cost: ¥510,000)
Fiscal Year 2021: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2020: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2019: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
|
Keywords | 北イングランド / 労働者階級 / 炭坑労働者 / 炭鉱 / 炭鉱ストライキ / 炭鉱演劇 / 産業演劇 / 現代英国演劇 |
Outline of Research at the Start |
本研究では、英国における「南北間格差」と呼ばれる国内の地理的・社会的・文化的差異を表す際に用いられる「北イングランド」という地域に着目し、この地域を特徴づける「労働者階級文化」を反映した演劇、特にその代表的存在であった「炭鉱労働者」を描いた演劇において「労働者」の姿がどのように表されていたかを歴史的に跡づけることにより、地域演劇の伝統を再構成するとともに20世紀以降の英国近現代演劇における労働者階級の表象の変遷をたどる。
|
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は研究成果を論文等として発表することはできなかったが、本研究で重点を置いているアラン・プレイター作『石炭小屋のドアを閉めろ』(1968年)の翻訳作業を開始し、19世紀から20世紀にかけてのイングランド北東部の炭鉱業に対する作者の歴史的視座を仔細に検討した。そして、作者プレイター自身の手になる1994年「新版」との異同を調べ、初演から四半世紀が経ち炭鉱業が終焉を迎えつつあった時期に作品にどのような歴史事象が書き加えられたかを確認した。この作品にはさらに劇作家リー・ホールによる2012年の「増補版」(未刊行)があるわけだが、それについてはラジオドラマ化された音源しか入手できていないため、今後の現地での資料調査を俟ちたい。 また、引き続き20世紀の炭鉱および炭鉱労働を扱った作品を渉猟したが、対象を演劇のみならず詩や小説や映像作品にまで広げて調査した。それは、これまで取り上げてきた作家たちが炭鉱を舞台として様々なジャンルの作品を書いているためである。たとえば、ジョー・コリー(1894-1968)は演劇(『争いの時に』など)だけではなく詩人として多くの作品を残しているし、バリー・ハインズ(1939-2016)は演劇作品『ストライキの後で』よりも小説家や脚本家として炭鉱労働者を扱った作品(小説『核心』やテレビドラマ『石炭の値段』など)の方が広く知れ渡っており、主題的にも大いに関連している。そして「1984-85年炭鉱ストライキ」に関しても、戯曲のみならず多種多様な文化表象が行われていることが資料調査の結果わかった。とりわけ、炭鉱ストライキを支えた女性団体「炭鉱閉鎖に反対する女性たち」等の存在という歴史的観点からも重要であるジェンダーの問題が、「炭鉱ストライキ」の文化全体を貫く問題系として抽出できる可能性があるため、今後もさらにジャンルを超えた調査を続けていきたい。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2023年度は勤務先における緊急の大幅な授業負担増などの予期せぬ事態が生じたため、海外出張を行う時間的余裕がなく、英国の研究機関等での未刊行の資料収集などを行うことができなかった。また、国内で集めた資料を十分時間をとって検討し、その研究成果を本年度中に論文にまとめることもできなかったため、研究期間の延長を再び申請せざるを得なかった。そのため、全体的な進捗状況は「やや遅れている」と言わざるを得ない。 それでも、研究の柱となるアラン・プレイターの炭鉱演劇とその再演が映し出す炭鉱業の歴史、19世紀メロドラマにおける炭鉱と炭坑労働者の歴史的表象、そして「1984-85年炭鉱ストライキ」を扱う同時代から現代に至る演劇に関しては、かなり資料が集まり検討は進んだ。研究最終年度となる2024年度には英国出張を行い、関係する研究機関や文書庫、劇場や博物館を訪問し、これまでできなかった未刊行資料の収集を行うことで必要な情報を補完し、論文執筆に活かしたい。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究最終年度である2024年度は英国出張を行える可能性が高いため、北イングランドの炭鉱演劇に関する所蔵資料とその利用可能性に関する事前調査を十分行なった上で、英国内の研究機関や博物館や地方劇場を実際に訪問して資料収集を行ない、研究の総まとめの準備としたい。現在予定している訪問先は、シェフィールド大学附属図書館やヴィクトリア&アルバート博物館演劇資料室、国立イングランド炭鉱博物館や国立スコットランド炭鉱博物館、ニューカッスルのノーザン・ステージ劇場やリトル・シアター・ゲイツヘッド劇場などである。また、可能であれば北イングランドの演劇・映画・テレビ文化の研究者であるデイヴィッド・フォレスト氏(シェフィールド大学)や「1984-85年炭鉱ストライキ」の文化表象に関する単著を著しているケイティ・ショウ氏(ノーサンブリア大学)らに連絡を取り、北イングランドの文化および炭鉱文化の表象を論じる際の理論的枠組に関する助言を仰ぎたい。さらには、近年増えている演劇のオンライン配信やテレビドラマ化された演劇のDVD販売などもできる限り利用して、炭鉱演劇の上演形式のより深い理解に努めたい。
|