明恵関係聞書類を主資料とする鎌倉時代の言語規範と言語変種に関する実証的研究
Project/Area Number |
19K00652
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 02070:Japanese linguistics-related
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Research Institution | Komazawa University |
Principal Investigator |
土井 光祐 駒澤大学, 文学部, 教授 (20260391)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2021)
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Budget Amount *help |
¥4,420,000 (Direct Cost: ¥3,400,000、Indirect Cost: ¥1,020,000)
Fiscal Year 2023: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2022: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2021: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2020: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2019: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
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Keywords | 聞書 / 明恵 / 鎌倉時代語 / 片仮名交じり文 / 法談聞書類 / 観智記 / 文体 / 真聞集 / 中世語 / 隆弁 / 明恵上人高弁 / 高山寺 / 講経 / 伝授 |
Outline of Research at the Start |
口語資料の欠乏する鎌倉時代において、書写年代の明確な聞書資料への期待は大きいが、同資料群の一般的性格は、大半が漢文体か、平安時代以来の漢文訓読文体の影響下にある強い文語性を示す。この中にあって、明恵房高弁(1173-1232)関係の聞書類は平安時代以来の書記言語規範から逸脱する要素を多く含む特異な存在である。しかし、これらの言語徴証は資料間や内部要素によって濃淡が著しい。本研究は、その要因の解明を企図し、多様な明恵関係聞書類の性格を分析して「言語変種」とその「制約条件」とを客観的に帰納し、各条件下で言語比較を繰り返すことによって、鎌倉時代の書記言語に見る規範と弛緩との実態を実証的に記述する。
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Outline of Annual Research Achievements |
明恵関係聞書類の本文は文献毎にかなりの相違があり、資料群全体を等質の日本語資料として扱うことは困難である。鎌倉時代の高山寺における学僧の教学活動という共通の言語基盤を持つが、教学上の本来的目的は一様ではない。言語徴証のバリエーションの背景には様々な要因が想定されるが、各文献にほぼ共通して認められる性格として、編者が性格の異なる複数の素材を蒐集、編集したことによる本文の多層性の問題がある。各文献の内部構成要素には複数の文献に共通する要素や形式が認められるため、その範囲では概ね類型化することが可能である。「原聞書」「原典本文」「他典籍本文」「私注」等が確認されるが、本文の生成過程において編者が編集時にこれらの素材をどのように扱ったかによって本文の性格は大きく異なってくる。言語徴証のバリエーションに対する評価は、各文献を構成する素材の性格との関係を慎重に分析する必要がある。 この観点からの実証的な分析を企図して、本年度は明恵関係聞書類の各文献の内部構成要素の情報を付加した用例データベースの整備、構築を進めた。各構成要素について、類型的文体論の観点から、表記、語彙、文法、文構造等において文体因子を設定し、相互に言語比較を行った。特に聞書を中心に置いて他の構成要素との相違を定点観察すると、聞書とそれ以外との間には様々な点で文体的断層が存在することが確認された。一方で、聞書とそれ以外の要素との間には共通する文体的基盤が存在することも確認され、学僧の標準的な書記言語における規範性の存在がより明瞭に示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍の影響により、関係資料原本の実地調査を実施することができなかった。また、入力作業、資料整理等の補助として学生アルバイトを雇用して依頼する予定であったが、不可能であった。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は原本調査に基づいた関係資料の詳細な分析を基盤としている。特に京都栂尾・高山寺等には、本研究テーマに関係する多様な言語資料が所蔵されている。本年度に実施できなかった原本調査を行って、順次研究対象に加えることに尽力したい。 更に、明恵関係聞書類の言語的特質の解明のためには、同じ言語基盤で成立した多様な資料との比較が不可欠である。従来、口語性の看取される資料を対象として言語的徴証を時間軸に同定していく方法の研究が進められてきた。この観点からの研究は軽視されるべきではないが、言文二途の深化した鎌倉時代成立の文献に、全体として均質な「口語性」を期待することは依然として困難な状況である。どのような部面において、どの程度「口語」的かという点においても、定見が確立しているとは言いがたい。本研究は、同一基盤で成立した他の資料群との言語比較を重視し、口語的徴証も「言語変種」の一つとして相対的に位置付けようとするものである。個々の聞書類に見られる「言語変種」と「制約条件」とを相対化して分析するには、聞書類と周辺資料との比較のみならず、聞書類内部の構成要素間の比較という視点も重要になる。関係資料の電子化、データベース化を鋭意推進して、明恵関係聞書類の内部構造の分析及び周辺資料との言語比較を深化させる予定である。
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Report
(3 results)
Research Products
(5 results)