植民地統治下の台湾の「日常」と「帝国」日本-植民地統治の影響の深度に関する考察-
Project/Area Number |
19K00985
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 03020:Japanese history-related
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Research Institution | Nanzan University |
Principal Investigator |
松田 京子 南山大学, 人文学部, 教授 (20283707)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥3,900,000 (Direct Cost: ¥3,000,000、Indirect Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2023: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2022: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2021: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2020: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2019: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
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Keywords | 台湾先住民 / 蕃務本署 / 「内地」観光 / 高等女学校 / 勢力者 / 先覚者 / 五箇年計画理蕃事業 / 総力戦体制 / 皇太子台湾行啓 / 政治儀礼 / 霧社 / 角板山 / ライフヒストリー / 植民地近代 / 日常生活 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、植民地統治下の台湾、中でも「植民地の日常」に焦点をあて、その場その場に働くヘゲモニーや規律権力の具体的なあり方の解明を通じて、植民地統治が植民地住民に与えた影響、特に日常生活というレベルに及ぶ影響について考察することを目的とする。 時期的には、1910年代末から1930年代後半までを中心に考察を進めていく。その際、人口の大部分を占めていた漢民族系住民はもちろんのこと、圧倒的なマイノリティであった台湾先住民にも焦点をあてることで、「植民地経験」の多様性を解明することができ、さらに植民地統治が植民地住民に与えた影響について、多角的・立体的に描き出すことが出来るという見通しをもっている。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、「植民地の日常」の中に働く微細な権力作用や、植民地の日常生活の「場」におけるヘゲモニーのあり方について、特に植民地住民の階層性に注意を払いながら分析することを通じて、植民地統治が植民地社会および植民地住民に与えた影響の深度を考察するものである。 具体的には2022年度は台湾先住民を対象とした「内地」観光施策に、2021年度に引き続き焦点をあて、特に1911年に実施された第二回、第三回「内地」観光を対象に考察した。そして「内地」観光に参加した先住民集落の有力者(「勢力者」「先覚者」)の体験や見聞が、故郷の集落をはじめとした先住民社会の「日常」にどのような影響を与えたのかを具体的な事例にそくして明らかにした。また1909年10月に台湾先住民政策の専従機関として蕃務本署が置かれており、この体制のもとで進められた「討伐・服従」化施策と第二回、第三回「内地」観光との関連を、特に「内地」観光参加者に焦点をあてて解明し、その成果を論文「蕃務本署体制の確立と台湾原住民の「内地」観光ー一九一一年の第二回・第三回「内地」観光を中心にー」として公刊した。 さらに2022年度は、高等女学校で教育を受けた一人の漢民族の女性の経験に焦点をあて、植民地統治下での「日常」の経験と、戦後の台湾社会での「政治受難」の経験が、どのように関連するのかという点も含めて考察し、その成果を2022年7月に京都大学人文科学研究所で開催された京都大学人文研アカデミー「東アジアの脱植民地化とジェンダー秩序」にて発表した。さらに研究論文として公刊することを目指し、現在、執筆を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画では、2022年度は台湾先住民エリート層の経験に焦点をあてて考察を行う予定であり、その一部は「研究実績の概要」で述べたように、1911年の「内地」観光施策との関連で考察しその成果を論文として公刊することができた。ただし特に「先覚者」と呼ばれた青年エリート層の経験については、1920年代後半から1930年代を中心にさらに考察する必要があり、その点は2023年度に持ち越すこととなった。 また当初の計画では、2020年度・2021年度は台湾の漢民族系住民の「日常」に関する植民地統治政策の影響についてを具体的な研究テーマとして研究を進める予定であったが、コロナウイルス感染症の影響で2020年度・2021年度は台湾への調査旅行が実施できず、この研究テーマについて特に研究が遅れている。2022年度はその一部を口頭発表することができたが、論文としての公刊については、2023年度に持ち越すこととなった。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、2022年度に引き続き、台湾先住民のエリート層に焦点をあて、特に1920年代後半から1930年代を中心に、彼ら・彼女らの具体的な経験から植民地統治が植民地社会および植民地住民に与えた影響の深度を考察していく。当該期の台湾先住民に関する資料について、その多くはすでに収集しているが、当該期に発行されていた雑誌の中の関連記事を中心に、補充調査・収集等を行う必要がある。 また台湾の漢民族系住民の経験については、すでに高等女学校で教育を受けた女性エリートに焦点をあてて考察を進めているが、さらに台湾の街庄における諸動向との関連で、より幅広い層の漢民族系住民の経験も対象に考察することを目指している。そのため「台北州海山郡鶯歌庄」の役場文書「台北州档案」(台湾・新北市図書館所蔵)等の調査が重要であると考えている。また漢民族系住民の青年エリート層の中には、植民地であった朝鮮に留学等を目的として渡るという流れもあったため、そのような経験が「日常」にどのような影響を与えたのかを探るため、韓国での資料調査が必要であると考えている。 2020年度からコロナウイルス感染症の影響で、台湾への調査旅行が実施できない時期が長く続いたが、現時点では台湾への渡航は2019年までの状況とほぼ同様となっているため、2023年度は台湾への調査旅行をできる限り多く実施し、上記で述べたような研究遂行に必要な資料の補充調査を速やかに進め、さらにできれば早期に韓国への資料調査旅行も実施し、個別の研究テーマに関する成果を論文として公刊していきたい。 あわせて本研究課題全体についてのまとめを行い、将来的には単著として出版できるよう準備を進める予定である。 また2023年度は最終年度であるため、本研究課題に関する総括的な意味合いもこめて、国際シンポジウムの開催も検討している。
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Report
(4 results)
Research Products
(6 results)