Project/Area Number |
19K01118
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 03050:Archaeology-related
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
中村 大 立命館大学, 立命館グローバル・イノベーション研究機構, 准教授 (50296787)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,420,000 (Direct Cost: ¥3,400,000、Indirect Cost: ¥1,020,000)
Fiscal Year 2022: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2021: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2020: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2019: ¥1,820,000 (Direct Cost: ¥1,400,000、Indirect Cost: ¥420,000)
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Keywords | 東北北部 / 縄文時代 / 人口 / 儀礼 / レジリエンス / 圏論 / 人口変動 / 儀礼(祭祀・墓制) / レジリエンスモデル / 共同体 / 共異体 / 文明レジリエンスモデル / コミュニティ / 情報 / 人口推定 / 発見率 / 遺跡数 / 人口の過少推定問題 / 多様度 / 人口推計 / 推計人口ゼロ問題 / 時系列データ / 存在確率 / 社会・人口統計 / 祭祀と墓制 / データベース / 統計解析とGIS分析 |
Outline of Research at the Start |
本研究では、最新のデータと新たな計算手法を用いて東北北部の縄文時代人口を推定し、人口変動と祭祀・墓制の変化との関連性を明らかにする。どの程度の人口規模でどんな人口変動の局面で環状列石の構築や硬玉製玉類の副葬などが行われたのかを知ることは、縄文時代の精神文化にかかわる遺構や遺物の意味をより具体的に読み取ることにつながる。 現代の人口減少や少子高齢化に伴う社会の変化には、技術的な対応だけでなく地域社会の絆を維持・発展させる心理的(芸術的)対応も必要である。いつの時代にもマツリや葬送儀礼があり、後者の役割を担ってきた。本研究は、祭祀と墓制の現在・未来を考えるための参照例を提示する研究でもある。
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Outline of Annual Research Achievements |
東北北部の遺跡から発見された住居跡と出土した土器型式のデータベース構築を継続し、縄文時代前期後葉~晩期(6000-2500年前)に数回の大きな人口の増減(人口の波)が生じていたことが一層明確になってきた。縄文前期末(5400年前)と後期前葉(約4000年前)を増加のピークとした特に大きな人口の増加と減少は東北北部の各地域に共通してみられる。このとき人口密度が1平方キロメートル当たり1人に近づく地域が複数あり、本格的な農耕を行わず幅広い資源を利用する獲得経済を生活基盤とする社会では非常に高い数値を示す。また、縄文中期後葉(4600年前)と縄文後期後葉~晩期前半(3500-2900年前)の人口増減については、生じる時期は地域間で概ね共通するが、増減の程度は地域間の違いが大きいようである。これらを総合すると、縄文前期から晩期にかけて東北北部の各地域では4~6回程度の人口の波が起きていたことになる。縄文時代について約100年単位の時間スケールで地域別の人口変動を明らかにできたことは大きな成果である。 それとともに、人口増減と儀礼の活発度が連動するメカニズムを説明し儀礼の機能に新たな解釈を提示する「社会と儀礼のレジリエンスモデル」の構築についても大きな進展があった。モデル構築には現代数学の圏論の考え方を取り込んでいる。レジリエンスとは、常に変動する環境や自分自身に対するシステムの「適応的構築能力」である。それは儀礼をつうじ機能を維持し存続できる「強さ」と、環境の変化に対応できる「しなやかさ」を社会に備えることである。これは社会の構造を承継する伝統と構造を変える革新を適切に使い分けることにより社会が持続する仕組みとみることもできる。この社会や文化を読み解くモデルの汎用性が高く評価され、現代の製品・サービスの開発に役立てる活動に発展し、考古学の知見をベースにした特許を出願した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
令和5年度は本務の都合により研究時間の確保が大変困難な状況であった。そのため、新型コロナウィルス感染症の拡大により延期していたデータ収集調査について作業の遅れを十分に回復させることができなかった。それでも、いくつかの地域についてデータの追加ができたことにより縄文時代の東北北部における人口変動の実態がより明確になってきた。統計解析を用いた推定方法の改良も進んだ。住居跡数にもとづく推定は発見バイアス(調査の偶然性)により人口を過少に推定する場合があることが明らかになり、そのバイアスがより小さい遺跡数の変動データを組み合わせた推定方法を開発した。また、人口変動の速度と大きさを適切に評価するために東北北部の土器編年と暦年代の整理を進め、縄文早期から晩期(10500-2500年前)まで100年幅の時間ブロックに対応する土器型式の確率分布データを作成した。 もう一つの目的である人口変動と儀礼変化の連動性分析については、人口や気候などの人文・自然環境と儀礼などの社会生活実践の相互作用関係を整理した「レジリエンスモデル」を構築した。これにより、儀礼活動を人口変動に対する社会的な適応活動として説明する説得性が向上した。さらに、その派生的な成果として現代の製品・サービス開発にも応用できる方向性を示すことができた。 以上のとおり、現地に赴きデータを取得する必要性があるデータベース構築については遅延が生じているものの、分析手法や解釈モデルの開発については進捗の遅れは小さい。この状況を総合的に評価し、この判断とした。
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度に遅延が生じている人口推定のための遺跡データベース構築については、公開が進んできた報告書のPDFデータを最大限に活用しつつ、未公開の報告書等についてデータ収集調査を実施する。また、データ入力に使用するエクセルのシート構成についても改良を進めており、より効率的なデータ入力を行うことができるように工夫している。これらの方策をとることにより、データベース構築の遅延の回復に努める。 人口推定のための計算手法と人口変動と儀礼の活発度の連動性を解釈するレジリエンスモデルの整備は進んでいるため、データが集まれば迅速に解析と解釈を行うことが可能である。なお、新型コロナウィルスをはじめとした感染症が再拡大するなど何らかの要因により出張調査に影響が出た場合でも、それまでに収集したデータで研究成果を確保する。そうした可能性も考慮に入れ、①陸奥湾沿岸部、②馬淵川・新井田川流域、③米代川流域を重点地域とし優先的にデータ整備を進め、成果の確保を図る。
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