Project/Area Number |
19K01318
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 05030:International law-related
|
Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
北村 泰三 中央大学, その他部局等, 名誉教授 (30153133)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中坂 恵美子 中央大学, 文学部, 教授 (20284127)
建石 真公子 法政大学, 法学部, 教授 (20308795)
安藤 由香里 大阪大学, 大学院国際公共政策研究科, 招へい教授 (20608533)
西海 眞樹 中央大学, 法学部, 教授 (50180576)
谷口 洋幸 青山学院大学, 法学部, 教授 (90468843)
佐々木 亮 聖心女子大学, 現代教養学部, 講師 (10828594)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2025-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
|
Budget Amount *help |
¥4,420,000 (Direct Cost: ¥3,400,000、Indirect Cost: ¥1,020,000)
Fiscal Year 2021: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2020: ¥2,340,000 (Direct Cost: ¥1,800,000、Indirect Cost: ¥540,000)
Fiscal Year 2019: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
|
Keywords | 難民条約 / 国際人権法 / 入管法 / 難民 / 庇護権 / ヨーロッパ人権条約 / 外国人の人権 / 追放 / 人権 / ノンルフールマン原則 / 難民に関するグローバルコンパクト / 多様性 / 補完的保護 / 難民グローバルコンパクト |
Outline of Research at the Start |
本研究においては、次の3点が具体的課題である。①近年の国際人権法の解釈が拡充することによって、従来の難民法の保護の対象に含まれていなかったジェンダーおよび性的指向を理由とする迫害からの保護も難民概念に含められるようになったことを明らかにする。②狭義の難民の定義からは漏れるが、内戦や組織的かつ重大な人権侵害状況から脱出して他国に庇護を求める人々に対する人道的保護(補完的保護)およびノン・ルフールマン原則の適用など保護対象の多様化を支える法理論的根拠を解明する。③難民、庇護申請者の受け入れ後の段階における社会的統合のプロセスにおいても、難民の文化的多様性が考慮されるべきことを明らかにする。
|
Outline of Annual Research Achievements |
これまで本共同研究の成果として、国連国際法委員会による「外国人の追放に関する条文草案の検討(1)(2)(3完)」(比較法雑誌55巻1号、55巻4号、56巻1号)などの成果を公表してきた。平成5年6月には、本研究テーマと直接的に関係のある「出入国管理及び難民認定法」(入管法)の改正が行われた。その下で注目される点としては、在留資格を失った外国人を長期、無期限に収容してきた点を改めて、監理措置の下で収容しない形での在留監理制度が導入された。またEUや諸外国に見られる補完的保護の制度を初めて規定するなどがある。
しかし、従来から批判の対象とされてきた難民の審査期間の独立性の問題や審査システムの公平性をめぐる問題については手が加えられなかった。さらには、日本における難民審査の高いハードルをくぐり抜けることができなかった難民不認定者は、在留資格を失い、退去強制の対象となり、その場合、入管収容所で送還が可能となるまでの間、収容される。このような形の入管収容が長期化することによる弊害が生じたところから、改正入管法では、監理措置という新たな制度を導入して、監理者の責任の下に収容しないことが認められた。
これらの入管法の改正点は、国際的な基準に照らしてどのように評価されるかは、改正の際に必ずしも十分に点検されていないようである。本科研費の共同研究の一環として、2023年6月の入管法改正の問題点について、従来から関心をもってフォローして、適宜、出版物として公表してきた。今年度でも、共同研究者間において、従来の検討の成果を踏まえつつ、入管法改正について総括的な問題点の検討を進めてきた。そこで、これまでの研究の成果と、新たな法改正に関する分析を加えて、一冊の本に取りまとめた公表することとした。令和6年2月に出版した『開かれた入管・難民法をめざしてー入管法「改正」の問題点』がそれである。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成6年2月に出版した『開かれた入管・難民法をめざして-入管法「改正」の問題点』(日本評論社、平成6年2月、216頁)により、本年度までの研究成果を一応とりまとめることができた。 本書は、北村泰三、安藤由香里、小坂田裕子、中坂恵美子の4名の共同執筆による形をとったものであり、平成5年6月に国会で成立した改正入管法について、難民の認定手続、補完的保護、監理措置、在留特別許可などを含めて全体11の章で論じたものである(基本参考文献、年表および索引を含む)。安藤、中坂は、当初より本研究の分担研究者である。小坂田は、分担研究者ではなかったが、中央大学法科大学院の専任教授に着任して以後、事実上、研究分担者的な役割を果たしてきた。 また本書は、入管法をめぐるさまざまな社会的な議論があるなかにおいて、この分野における学術的な知見を踏まえながら国際人権法の視点から、わが国の入管法の将来のあり方を論じるとともに、一般の読者にも分かり易い形で入管法の問題点を論じたものであり、本研究の成果を社会に還元するという意義を有している。 その他、北村の研究成果としては、「送還時の危険性評価義務-J.K.対スウェーデン判決」(人権判例報第6号、21-27頁)、および「強制失踪事件における調査・訴追義務の意義」近藤敦編『新国際人権法講座第3巻:国際人権法の規範と主体』73-94頁)がある。
|
Strategy for Future Research Activity |
実質的にみて、本研究の主な研究成果は、「開かれた入管・難民法をめざして」の公刊によって半ば達成されたと考えている。したがって、今後の研究としては同書で扱った、入管法改正が2024年6月10日に施行されるところから、施行に伴う入管法改正のフォローアップに関心が置かれる。国内における特に難民認定申請者や申請が棄却され、在留資格を失ったけれども帰国を望まない者の処遇の問題、補完的保護の具体的な適用例などについての検討が必要とされる。これらの研究は、また新たな研究への契機になっていくものと思われる。
ただし、同書の性格上、改正入管法の実際的な問題点の検討を行ったが、個別の問題点に関する、掘り下げた研究にはなっていない。今後は、より個別の論点を掘り下げて論ずる必要があるが、本研究の範囲を超える問題であるので、次の研究課題としたい。
|