「環境法」における財産権尊重条項の研究―その来歴、効果、そしてグローバルな位相
Project/Area Number |
19K01418
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 05070:New fields of law-related
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
及川 敬貴 横浜国立大学, 大学院環境情報研究院, 教授 (90341057)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,290,000 (Direct Cost: ¥3,300,000、Indirect Cost: ¥990,000)
Fiscal Year 2022: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2021: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2020: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2019: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
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Keywords | 財産権尊重条項 / 環境法 / 財産権 |
Outline of Research at the Start |
本研究では、①財産権尊重条項はいかなる経緯でわが国の「環境法」の中に増殖するに至ったのか、②政策決定の現場において、この条項はどのように作用しているのか、③同様の規定は海外の法制度にも存在しているのか、④財産権を尊重しつつ自然環境を保全する法的仕組みとはどのようなものか、という作業課題に取り組む。これにより、財産権尊重条項の実像を描き出し、もって、「公共の福祉」の内容を自然環境保全の法理論として説得的に展開するための学術的な基盤を築くことをめざす。
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Outline of Annual Research Achievements |
自然公園法や種の保存法など、わが国の主要な環境法には、一般に、財産権尊重条項と呼ばれる規定(例えば、種の保存法の第3条は「この法律の適用に当たっては、関係者の所有権その他の財産権を尊重し、住民の生活の安定及び福祉の維持向上に配慮し、並びに国土の保全その他の公益との調整に留意しなければならない」と定めている。)があり、それが足かせとなって自然保護が進まない(例:保護区の指定が進まない)と言われてきた。この条項の総合的な分析を通じて、環境法学における財産権の意味・意義を問い直そうとするのが、本研究のめざすところである。 2022年度までの成果としては、まず、(1)及川敬貴「財産権尊重条項の来歴を辿る」(寺尾忠能編『「後発の公共政策」としての資源環境政策』(アジア経済研究所)の刊行が挙げられる。本論文の公刊により、①財産権尊重条項の起草には、GHQの関与があったこと、ならびに、②そこでは法的な観点からの厳密な検討がなされていなかった可能性が高いことといった本研究課題の成果の一部が社会に発信された。次いで、(2)阿久津圭史「私有地における生物多様性保全の持続可能性:土地所有者との協定による保全制度の研究」が完成したことである。同論文は、豪州などの環境法制をとり上げ、その法構造や制度運用の実際を考察し、財産権尊重条項を相対化する=財産権尊重条項を積極的に捉えてみせるという観点・問題意識を示した。 2023年度には、及川が国際学会(EAEH2023(アジア環境史学会)(大田(韓国)で開催))へ参加し、学会発表を行い(2023年6月)、韓国の研究者との交流を深めることができた。また、同年度後半には、阿久津が、前記(2)の成果を基に、オーストラリアへ赴き、財新の環境法(=2016年生物多様性法)の運用状況に関するヒアリング調査を実施し、わが国ではいまだ知られていない多くの知見を獲得した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍で延期のため、2021年度と2022年度に行えなかった、海外での研究成果発表や現地調査を2023年度にようやく行うことができた。史的考察についても、前記(1)のように、その成果の一部が公刊されたので、本研究は「おおむね順調に進展している」といえる。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は、①かねてより本研究課題への興味を示してくれている、Lee Jongmin教授(群山国立大学(韓国))などとの研究交流を深めるとともに、②前記(2)の成果を国内へ還元したい。具体的には、群山国立大学にて、Lee Jongmin教授との共同研究会の実施を予定している。また、前記(2)の成果が注目されており、環境法政策学会などでの報告者として、阿久津(本研究課題における研究協力者)の名前が挙がっている。正式決定となれば、同成果を日本国内へ還元するための絶好の機会となる。
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Report
(5 results)
Research Products
(5 results)