Project/Area Number |
19K01682
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 07040:Economic policy-related
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
石井 昌宏 上智大学, 経済学部, 教授 (90323881)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,290,000 (Direct Cost: ¥3,300,000、Indirect Cost: ¥990,000)
Fiscal Year 2023: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2022: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2021: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2020: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2019: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
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Keywords | リスクに対する態度 / Shipping Freight Rate / Stochastic Volatility / 不確実性 / 戦略的行動 / 市場成果 / 市場間の連動 |
Outline of Research at the Start |
本研究では, 電力取引市場や海上輸送サービス市場等の貯蔵不可能な財市場を分析対象とする. この市場において, 参加者は自らの利益を鑑みて戦略的に取引を行う. ただし, この市場は複数の市場と関連している. このため, 他の市場等の不確実要因がこの市場にも影響を与える. 市場参加者はそれぞれのリスクに対する態度を反映させてそれぞれの戦略を決定する. この結果, この市場で定まる価格(および取引量)にも市場参加者のリスクに対する態度が反映される. そこで, 本研究ではこれらの関連を分析する. 特に, 分析対象とする貯蔵不可能な財市場が他の市場から受ける影響に力点をおいて分析する.
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は「貯蔵不可能な財市場を対象とし, その市場参加者が有するリスクに対する態度の変化が市場成果(特に価格の確率分布)に与える影響の解明」です. これまでと同様に2023年度も海上運賃(shipping freight rate, Panamax)を対象の中心として, その価格変動の特徴が生成される構造に関して3つの視点から分析を進めました. 第1の視点は海運市場の需給構造です. 価格の不確実変動を生成する需要サイドの要因は輸送というサービスへの需要が派生需要という点です. すなわち, 海運サービスの需要は本源的需要の変動の影響を受けます. 供給サイドの要因として, 需要の変動に短期間で対応することが困難であることが挙げられます. このことは供給関数の形状へ影響します. 第2の視点はForward Freight Agreement (FFA)とスポット運賃との関係です. FFA市場への参入障壁は海運スポット市場への参入障壁よりも低いと考えられます. このため, スポット運賃と比較してFFA価格により早く新しい情報は反映されると考えられます. すなわち, FFA価格がスポット価格の先行指標になると考えられます. 第3の視点は海運市場が均衡に向かう調整過程です. この調整過程は情報の非対称性の解消過程に起因します. これら3つの視点を基に, 海上運賃の変動の特徴が形成される構造の発見を試みました. この研究成果の一部を2023IAMEにおいて研究報告しました. なお, 2021年度から, 市場参加者のリスクに対する態度のモデル化から派生し, 資金提供者のリスクに対する態度と資金提供者間の競争を考慮した負債スプレッド決定モデル構築と分析を行っています. ここまでの研究成果の一部を論文とし, それが損害保険研究に掲載されています.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究における最大の関心は, 直接観測することは不可能な市場参加者のリスクに対する態度の変化が海上運賃の変動に与える構造(経路)およびその影響の解明にありました. そのため, 市場参加者のリスクに対する態度が表現された理論モデル構築を試行したり, Barberis and Huang(2009)に変更をくわえながら, narrow framingをその理論モデルへ取り入れることも試みました. しかし, そのモデルの高すぎる複雑性を解消する段階には到達できませんでした. そこで, 2022年度後半からはKyle(1985), DeLong et al. (1990), Baker and Stein(2004), Ciccarone et al.(2020), De Jong et al.(2022)等の既存研究を本研究のデータ分析へ援用する方針へ変更し,「海運市場の需給構造」, 「FFAとスポット運賃との関係」, 「海運市場が均衡に向かう調整過程」という3つの視点に基づく諸仮説を基礎にするデータ分析へ変更しました. ただし, 上述の理論モデル構築に費やしてきたことに起因して発生した研究の遅れは現在も続いています. また, 諸仮説の修正やその修正に起因するデータ分析方法の修正等も発生しました. なお, 2021年度から, 市場参加者のリスクに対する態度のモデル化から派生して, 資金提供者のリスクに対する態度と資金提供者間の競争を考慮した負債スプレッド決定モデルの構築と分析も同時並行して進めています. 2023年度は金利を戦略とするモデルを中心に研究しました. そして, 資金供給者(銀行)がn社の場合のNash均衡となる貸出金利を導出しました. さらに, このNash均衡の諸性質の解明も進めてきました. この派生研究に関する発表および論文作成にもある程度の時間を要しています.
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Strategy for Future Research Activity |
現在の進捗状況を鑑みて, 2024年度は以下の3点に重点をおいた研究を計画しています. (1) 2023年度までに実行した分析は次の3つの視点に基づきます. 「海運市場の需給構造(特に, 本源的需要を構成する財の供給関数の価格弾力性と船舶間の代替性, および, 海上輸送が派生需要であること, に注目している) 」, 「FFAとスポット運賃との関係」, 「海運市場が均衡に向かう調整過程(市場参加者間の情報の非対称性の解消過程に注目している)」. この分析により, Panamax船の運賃変動のstochastic meanを生成する構造をある程度解明できたと考えています. また, Panamax船の運賃変動においてstochastic volatilityが観察されてきました. ここまでの分析から, この生成理由もある程度解明できたと考えています. そこで, ここまでの結果をまとめて国際学会で報告することと並行して, 学術雑誌への論文投稿を行いたいと考えています. (2) 投稿準備に要する時間が予定よりも短い場合には, 市場参加者のリスクに対する態度が表現された理論モデルや narrow framingを組み込んだ理論モデルの構築を再度試みたいと考えています. これらの研究においては, 手塚広一郎先生(日本大学), 石坂元一先生(中央大学)との共同研究という形式で適宜進めていく予定です. (3) 本研究課題から派生して2021年度から実行している「資金提供者のリスクに対する態度と資金提供者間の競争を考慮した負債スプレッド決定モデルの構築およびそれに基づく分析」にもある程度の研究成果が蓄積しました. そこで, この研究成果についても国際学会で報告することを計画しています. さらに, 可能ならば, 学術雑誌への論文投稿を行いたいと考えています. これらの研究においては, 石坂元一先生(中央大学)との共同研究という形式で適宜進めていく予定です.
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