環境対策における不確実性と「達成困難」な目標に関する科学技術社会学的研究
Project/Area Number |
19K02061
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 08010:Sociology-related
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
立石 裕二 関西学院大学, 社会学部, 教授 (00546765)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2023: ¥390,000 (Direct Cost: ¥300,000、Indirect Cost: ¥90,000)
Fiscal Year 2022: ¥260,000 (Direct Cost: ¥200,000、Indirect Cost: ¥60,000)
Fiscal Year 2021: ¥260,000 (Direct Cost: ¥200,000、Indirect Cost: ¥60,000)
Fiscal Year 2020: ¥390,000 (Direct Cost: ¥300,000、Indirect Cost: ¥90,000)
Fiscal Year 2019: ¥260,000 (Direct Cost: ¥200,000、Indirect Cost: ¥60,000)
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Keywords | 不確実性 / アクターネットワーク理論 / 科学社会学 / 科学技術社会論 / 専門家 / 気候変動 / 再生紙 / 放射線 / 不定性 / 構築主義 / 気候工学 / モノの社会学 / 地球温暖化 |
Outline of Research at the Start |
科学・技術がかかわる領域では、当初は挑戦的な目標を掲げるものの、しばらく経つうちに、その達成が困難だとわかる場合が少なくない。「当初の予想どおりには進まない」という不確実性に対して、関係するアクターはどのように向き合っているのか。「つじつま合わせ」に陥ることなく、不確実性に対して開かれた対応ができるのはどういう場合なのか。そもそも達成困難な目標が設定されたのはなぜなのか。目標設定の陰で不可視化されていることは何か。不確実性をめぐるモノ的側面と人間-社会的側面のからみ合いに注目して研究していく。具体的には、地球温暖化対策全般、および空調や製紙などの領域での対策を取り上げる予定である。
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Outline of Annual Research Achievements |
科学・技術がかかわる領域では、当初は挑戦的な目標が掲げられるものの、やがてその達成が困難だとわかる場合が少なくない。「当初の予想どおりには進まない」という不確実性(不定性)に対して、関係するアクターはどのように向き合っているか。環境対策における目標設定とその再調整の過程を分析することが本研究の目的である。2022年度は大きく4つのアプローチから研究を進めた。 1)再生紙に関する研究。古紙パルプ配合率に関するライフサイクルアセスメント(LCA)の結果をめぐる論争と、2008年に発覚した古紙偽装問題について分析した。古紙配合率やエネルギー消費量といった環境指標の重要度が高まる中で、(実態から離れてでも)そうした指標をよく見せようとする「デカップリング」をめぐる問題が生じていることが明らかになった。書き上げた原稿は、加筆修正の上、2023年度中に書籍の1章として刊行される予定である。 2)放射線リスクにかかわる専門家集団に関する研究。原子力/放射線/疫学を専門とする研究者の間での共同研究ネットワークと、これらの研究者が福島第一原発事故後の2年間に新聞記事上で行ったコメントを元データとして、「福島第一原発事故後の研究者からのコメントは多様だったか」「原子力の専門家集団からの距離に応じて、コメントのトーンが変化したか」の二つの問いについて分析した。中間的な分析結果について、環境社会学会大会にて報告した。 3)気候変動とエネルギー問題に関する事例研究。エネルギー問題における「クリーン」という言葉の使われ方に注目して新聞記事の分析を行った。書き上げた原稿は、2023年度に書籍のコラムとして刊行されることが決まっている。 4)分析視角としてのアクターネットワーク理論およびモノの社会学に関する検討。研究成果の一部を『環境社会学事典』の項目「科学の不定性と規制科学」として刊行することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)再生紙に関する研究、3)気候変動とエネルギー問題に関する研究において、研究成果の一部を文章として書き上げることができたものの、1)に関して、監査の制度化とデカップリング(環境指標が実際のパフォーマンスから切り離されること)という論点が明確になったことに伴い、関連する資料の追加収集、読み込み、分析に想定以上の時間を要した。全体として研究は着実に進んでいるものの、2)4)を論文にまとめる作業は2023年度に取り組むことになった。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、以下の4点について重点的に研究を進めていく予定である。 1)原子力と放射線にかかわる専門家集団に関する事例研究。2022年度の研究成果をふまえつつ、収集する新聞・雑誌の範囲を広げた上で、研究者ネットワーク上の位置とコメントの有無・内容との関連について分析する。とくに、国内における公衆の線量限度である年間1ミリシーベルトを超える被ばくが想定される事態における専門家コメントに注目する。学会発表を行った上で、2023年度中に論文を書き上げて学会誌に投稿する予定である。 2)気候変動問題における「目標逆算」型プロジェクトに関する事例研究。気候変動問題では、ハードルの高い目標が立てられた上で、そこからの逆算で、「野心的」な新技術のプロジェクトが推進されることがしばしばある。だが、現在の産業構造やライフスタイルに手を入れないまま、特定の技術によって目標を実現しようとしても、既存の構造に引っ張られた無理のある計画になりがちである。実用化の目処が立たないまま、達成時期の先延ばしを繰り返すことも少なくない。「アリバイづくり」に陥らずに、気候変動対策の技術開発が実質的に進むための社会的条件について、委託研究以外での自発的な研究活動の活発さ、学術研究との間のネットワークの強さに注目して分析する。2023年度には資料の収集と分析を進め、中間的な研究成果について学会発表を行う予定である。 3)アクターネットワーク理論およびモノの社会学に関する理論的検討。モノを媒介とした社会の変化を捉える理論的な枠組みという観点から検討を行い、2023年度中に論文を書き上げる予定である。 4)再生紙に関する事例研究。2022年度に書き上げた原稿について、必要に応じて資料の追加収集、加筆・修正をおこなった上で、2023年度中に書籍の1章として刊行する予定である。
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Report
(4 results)
Research Products
(9 results)