Project/Area Number |
19K02103
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 08010:Sociology-related
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Research Institution | Kyoto University of Education |
Principal Investigator |
土屋 雄一郎 京都教育大学, 教育学部, 教授 (70434909)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,290,000 (Direct Cost: ¥3,300,000、Indirect Cost: ¥990,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2020: ¥1,820,000 (Direct Cost: ¥1,400,000、Indirect Cost: ¥420,000)
Fiscal Year 2019: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
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Keywords | 環境社会学 / 合意形成 / ニンビィ(NIMBY) / 廃棄物問題 / NINBY / NIMBY / 社会学 / 放射性廃棄物処理 |
Outline of Research at the Start |
エネルギー政策への社会的関心が増大し、原子力発電の是非をめぐる議論が様々な立場からなされている。しかし「原発ゼロ」を選択したとしても、これまでの利用によって生じた放射性廃棄物の処理・処分をめぐる課題から逃れることはできない。本研究では、技術的・工学的研究が進展する一方で立ち遅れているとされる社会的側面の諸問題に焦点をあて、その解決に資する合意形成のあり方を「補償」という観点から明らかにする。
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Outline of Annual Research Achievements |
静岡県御前崎市(旧、浜岡町)に立地する中部電力浜岡原子力発電所と地元の地域住民や運動組織との関係を明らかにするために、中部電力より原子力発電所建設についての意向が浜岡町長に伝えられた1967年から、地元紙として地域に多くの読者を抱える新聞社が幕を下ろす2020年までの間、町の中部電力への対応や、町民の反応、反原発運動の活動などの詳細を把握する。地元紙『郷土新聞』の記事から、53年分、1,300件余りと浜岡原子力発電所佐倉地区対策協議会(佐対協)での資料収集によるデータ等から「環境年表」を作成し、その分析から抽出された課題にもとづき、インタビュー調査や文献調査なども含めて研究を進めている。現在、地域は東日本大震災以降、運転が停止されてきた原発の再稼働をめぐる問題や、老朽化した原発の廃炉問題、使用済み核燃料の乾式保管をめぐる問題など、多くの課題の前に置かれている。「原発は地域に幸せを運んできたと果たして言えるのか」「今後に夢を抱かせてくれる可能性は、どれほどあるのか」。資料が示す事実を紐解きながら、原発の生末をじっくり考え、環境社会学研究で進められている「公共社会学」との関わりについての研究をおこない、その成果を論文にまとめる作業に取り組んでいる。 また、高レベル放射性廃棄物処理の立地選定をめぐって「文献調査」応じた北海道寿都町、中国電力が計画している中間処理施設の立地を計画する山口県上関町での調査を行い、各地に共通する問題と地域特有の問題を抽出し、環境社会学研究の先行研究を援用しながら分析を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日本における原子力発電政策の大きな課題として残されているのが、原発から出る「核のごみ」の最終処分である。処分候補地選定の第1段階として、「文献調査」の実施が、全国で初めて北海道の2つの自治体でスタートした。 NUMOが住民に地層処分への理解を求め、町当局と協力して住民との対話会議を定期的に開いているにもかかわらず、「対話の場としての活動は定着してきているが、町民への輪の広がりはない」いう声や「住民が対話をしづらい“空気”がある」という。まずは、こうした状況がなぜ生じるのかを「問い」にして研究を進めてきた。 その際、中部電力浜岡原子力発電所と地域社会、反対運動との関係をまとめた「環境年表」から分析した課題なども用いながら調査、分析を行った。 先進性をもち、地層処分の実用が始まったスウェーデンのSKB社やフィンランドのホシヴァ社の報告書の内容を分析し、日本のケースとの比較を試みている。現地調査を計画していたが、コロナなどの影響で実現することができなかった。2024年度に実施する方向で準備を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
作成した「中部電力浜岡原子力発電所」と地域社会の対応、反対運動の展開などの実態をまとめた「環境年表」をもとに行った調査の結果を分析し、論文として『社会学評論』や『環境社会学研究』などの学会誌にて発表する。 また、これまでに行ってきた、先進性をもち、地層処分の実用が始まったスウェーデンのSKB社やフィンランドのホシヴァ社の報告書の内容の分析を踏まえ、スウェーデン、フィンランドでの調査を実行し、その成果を現在、日本国内で行われている高レベル放射性廃棄物の最終処分地選定をめぐって生じている社会的な問題・課題の整理に活用する。 こうした原子力発電所の立地や「原発のごみ」の廃棄物処理・処分施設をめぐる社会的問題(社会的必要性は理解しながらも、自分の裏庭には欲しくないという考え方や態度(ニンビィ:Not-In-My-Backyard)を争点にするような問題)は、電力・エネルギー政策のなかで、普段「意識の外」に送り出されることが多く、想像力を働かせなければ認知し難いような「日常的現実」を基盤に平衡・平等・必要といった「公正」を相互承認することが解決の道筋をつけるという仮説を検証し、「理解と納得」の観点から実際の問題の解決にむけた「新しい合意形成」の提案に繋げたい。
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