回転分子モーター蛋白質の駆動力伝達部位の弾性が回転速度・トルクに与える影響
Project/Area Number |
19K03776
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 13040:Biophysics, chemical physics and soft matter physics-related
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Research Institution | Osaka Medical and Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
古池 晶 大阪医科薬科大学, 医学部, 准教授 (60392875)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥4,290,000 (Direct Cost: ¥3,300,000、Indirect Cost: ¥990,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2020: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2019: ¥2,340,000 (Direct Cost: ¥1,800,000、Indirect Cost: ¥540,000)
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Keywords | ATP合成酵素 / 分子機械 / 分子モーター / 1分子観察 / 1分子生理学 / タンパク質の弾性 / 1分子観察 / 1分子生理学 / 回転分子モーター / タンパク質 / 弾性 |
Outline of Research at the Start |
生命活動に不可欠なATP合成酵素は、2つの回転分子モーターが共通の回転軸で連結されたユニークな構造をもつ。構造・機能への理解が最も進んだ蛋白質のひとつだが、機械的な動作原理は未だ不明である。 共通の回転軸(駆動力伝達部位)の弾性率だけを変化させ、不可分だった分子内のトルク伝達、回転速度制御という情報の分離を試みる。一般に分子機械は、慣性・重力を利用できない上に、激しい熱運動に晒されながらも精巧な運動を行う。その実現には、共通の機械的な動作原理が存在するはずである。ATP合成酵素をモデルに、「駆動力伝達部位の弾性が、どのように運動(機能)に影響するのか」という視点から、その動作原理を見出したい。
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Outline of Annual Research Achievements |
ATP合成酵素(FoF1)の構造はユニークで,2つの回転分子モーターFoとF1が共通の回転軸γで連結されている。回転軸γの棒状部分(反平行αヘリカルヘリックス構造)は,F1の円筒型の固定子(α3β3リング)に深く刺さり,リング上部領域と下部領域のみで接触している。リングと接触していない中間領域は,回転の駆動力伝達だけを担うドライブシャフトと考えられる。本研究では,この回転軸(駆動力伝達部位)の弾性率(物理的性質)が,分子内のトルク発生(力と方向)や回転速度へ与える影響を,ATP駆動で回転するF1を観察することで調べた。FoF1のみならず,タンパク質の弾性とその機能との関係を明らかにするという意味でも新しい試みである。 回転軸の弾性率を変えた2通りのF1変異体を作製した。回転軸の中間領域を構成する2本のαヘリックスの両方ともに自由回転領域を導入した「ドライブシャフトの弾性がゼロの変異体N」と,片方にだけに導入した「ドライブシャフトの弾性を弱めた変異体A」である。本年度は,負荷(溶液からの粘性抵抗)をかけた状態の回転速度を解析した。平均の回転トルクを見積もると,野生型F1と比較して,変異体Aでは~3/4に,変異体Nでは~1/3に減少した。また,回転軸の下部接触領域を全て欠いたF1変異体では,~1/10へと減少することを考慮すると,下部接触領域はトルク発生あるいは伝達に重要である。シンプルにこれらの結果を解釈すると,弾性がゼロの回転軸であっても相当の駆動力を伝達していることになる。ミクロのモーターでは,回転速度だけではなく「駆動力発生・伝達の役割も固定子と回転子の両方が担う」可能性を示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2020~21年度の2年間,新型コロナウィルス(COVID-19)の断続的な感染拡大に伴う教育エフォートの急増等によって,研究時間の確保が難しくなり,研究の遂行状況は遅れた。2022年度は,当初の研究期間を延長して取り組んだが,海外情勢の不安定化に伴い実験に必要な試薬の輸入が半年以上も遅れたこと,停止していた実験機器の立ち上げに予想以上に手間取ったことなどが原因で,実験の遅れを取り戻すことはできなかった。再度の期間延長を申請し承認された。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究計画の遅れは,新型コロナウィルス(COVID-19)の感染拡大や国際情勢の不安定化に伴うものであり,研究計画自体に問題が生じたわけではない。当初の計画に沿って,遅れの出ている実験を追加し,丁寧な解析を行う。具体的には,変異体作製・精製やATP分解/合成速度の測定を補う。特に,回転軸の弾性がゼロのF1変異体と野生型Foの複合体の作製,そのATP合成活性の有無の確認は昨年度に行えなかった。本年度は,その実験を主に推進させ,回転軸の弾性が,ATP合成酵素におけるトルクの発生・伝達や回転速度の制御にどのような役割を果たすのかを明らかにしていく。
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Report
(4 results)
Research Products
(5 results)