プラズマモデリングの高精度化を目指した電子衝突断面積の精密定量測定
Project/Area Number |
19K03812
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 14030:Applied plasma science-related
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
星野 正光 上智大学, 理工学部, 教授 (40392112)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2021: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2020: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2019: ¥2,470,000 (Direct Cost: ¥1,900,000、Indirect Cost: ¥570,000)
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Keywords | 電子衝突 / プラズマ素過程 / 衝突断面積 / 低エネルギー電子分光 |
Outline of Research at the Start |
現在、半導体プロセスや核融合反応におけるプラズマモデリング入力のための素過程データとして利用される電子衝突断面積データセットは、大半が理論計算に基づき予測されている。しかしながら、計算値が実験的に測定された衝突断面積と大きくかけ離れた値を示すことも少なくない。そこで、本研究では、プラズマモデリングに必要不可欠な衝突断面積を実験的に精密測定し、理論計算の有用性を検証し、より現実に近い高精度なモデリングを行うための衝突断面積データベースを構築する。これにより理論計算の正当性を検証できるだけでなく、実験値を用いたより現実に近いプラズマモデリングの実現が見込まれる。
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Outline of Annual Research Achievements |
本申請課題では、より現実に近い半導体プロセスや核融合プラズマの挙動解明のために行われるプラズマモデリングで利用される電子衝突断面積データを定量的に測定・評価することで、より現実に近い高精度なモデリングを目指し、さらに近年利用される理論値の妥当性も合わせて検証することを大きな目的とした。特にプラズマモデリングで重要な電子と気相原子・分子との1回衝突における各散乱過程の積分断面積と運動量移行断面積の定量的な値を得るために、標的の終状態を選別した角度微分断面積を測定してきた。しかしながら、実際の実験において、実験装置の幾何学的制約から測定可能な角度範囲が、低エネルギー領域では約30度から130度に限定され、それ以外の角度は理論計算や実験データのフィッティングによる外挿を用いるのが一般的であり、得られた積分・運動量移行断面積には大きな不確かさが含まれていた。そこで実験的により広角度範囲に散乱された電子を検出、評価するための工夫を重ねてきた。 令和2度の新型コロナウィルス感染拡大による入構制限から当初の計画から大幅な遅れが生じ、令和3年度から令和4度にかけて行ったビーム軌道シミュレーションに基づく前方散乱の検出に関する改良とそれに伴う知見、極性分子特有の回転励起を考慮した前方散乱に対する精密な外挿方法を新たに提案し、測定の困難な測定データの慎重に検証を重ねてきた。また令和4度は、より精密な衝突断面積測定の前方散乱、及び後方散乱のデータについての考察・検証の結果をさまざまなプラズマ関連分子へと拡張し、弾性散乱のみならず振動励起や電子励起過程などの比弾性散乱過程対しても、幅広い電子エネルギー範囲に対して当初の目的であった断面積データセットの実験的な評価を行い、いくつかの成果報告を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
令和2度の新型コロナウィルス感染拡大による計画の大幅な遅れを受け、令和3年度に行った電子ビーム軌道シミュレーションの最適条件を用いた電子ビーム調整を行うことでより前方の測定まで可能となった。さらに、令和3年度に行った極性分子の回転励起と理論計算を組み合わせたより厳密な散乱角度0度方向への微分断面積の外挿方法について、令和4年度はより詳細に検証し、弾性散乱のみならず非弾性散乱にまで拡張することでさまざまなプラズマ関連分子の測定、及び断面積の評価を行った。 当初の計画であった後方散乱断面積の検証については、理論的な検証とこれまでのデータに関する評価を行うことでその重要性について議論を行った。 採択期間延期後の最終年度の段階で当初の計画で予定していた全ての問題点を解決するにはまだ至っておらず、引き続き検討や測定に時間を要する箇所が残っていることから、さらに実施期間を1年間延長してさらに本課題を進め、成果をまとめる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年からの新型コロナウィルス感染拡大の影響を受け、約半年以上におよぶ実験室への立ち入り制限から、当初の計画より計画が大幅に遅れた。しかしながら、令和3年度は、前方散乱用の電子ビーム制御と散乱電子分析器の部分的な改良により、弾性散乱微分断面積の前方散乱の検出については従来から大きく改善され、アンモニア分子に加えて、いくつかのプラズマ関連分子の前方散乱の測定・検証を行うことができた。また、1年間の期間延長が認められた令和4年度には、前方散乱に加え後方散乱にも着目し、積分断面積と運動量移行断面積の検証と評価を引き続き行った。特に、弾性散乱微分断面積の前方散乱の解析・評価が困難であった極性分子に対し、分子の回転励起と双極子モーメントを考慮したより厳密な理論計算を用いた外挿法を使い高精度な衝突断面積の導出について、様々な分子標的へ拡張し検討を進めた。これからの結果は、本課題の関連内容の成果報告として現在投稿論文として公表するための準備を進めている。加えて令和4年度は、弾性散乱のみならず非弾性散乱にまで測定と外挿の評価を拡張することでさまざまなプラズマ関連分子の断面積を得ることができた。 これまでの研究計画の遅れに伴う研究成果をまとめ、公表するための期間として、さらに実施期間を1年間再延長した。令和5年度は、最終年度として、延長期間中に新たに定量測定された微分断面積とこれまで得た外挿法を組み合わせ、全散乱角度を積分することで導出された各散乱過程についての衝突断面積を既存の測定データや理論計算と比較・検討する。特に、不確定さが大きくばらつきの大きかったプラズマモデリングに必要な分子標的の基礎データに対して実験的に新たに評価・検証し、本申請者の所属する日本物理学会及び原子衝突学会などの国内学会始め、プラズマプロセスや核融合プラズマに関する諸会議にて順次報告し、投稿論文として公表する。
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Report
(4 results)
Research Products
(10 results)