Project/Area Number |
19K06211
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 40030:Aquatic bioproduction science-related
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
吉川 毅 鹿児島大学, 農水産獣医学域水産学系, 教授 (10295280)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥3,640,000 (Direct Cost: ¥2,800,000、Indirect Cost: ¥840,000)
Fiscal Year 2022: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2021: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2020: ¥390,000 (Direct Cost: ¥300,000、Indirect Cost: ¥90,000)
Fiscal Year 2019: ¥1,820,000 (Direct Cost: ¥1,400,000、Indirect Cost: ¥420,000)
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Keywords | 好低温性赤潮 / 生活環 / 休眠細胞 / 赤潮予測 / 遺伝子発現 / 定量PCR / シスト |
Outline of Research at the Start |
赤潮原因藻類の一種、ディクチオカ藻Pseudochattonella verruculosaは高い魚毒性を示す。その好低温性から、冬季にも漁業被害を引き起こす。今後、本藻の日本近海域への定着が危惧される。本研究では、分子指標を用いた本藻シストのモニタリングと発芽能の評価法を確立する。この技法を赤潮現場海域に適用して赤潮予測技術を開発し、シストの発芽抑制、発芽阻害による赤潮防除法の確立につなげる。本研究は、より高感度かつ早期に赤潮藻類を検出し、赤潮の発生を予測するための技術開発に資するものである。また、冬季発生型赤潮の分布域拡大、それに伴う漁業被害の軽減に貢献するものと期待される。
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Outline of Annual Research Achievements |
高い魚毒性を示す好低温性赤潮原因藻類の一種、ディクチオカ藻綱Pseudochattonella verruculosaについて、その無菌培養株の確立、生活環の観察、および生活環各段階での遺伝子発現の推移を解明すべく取り組んだ。 P. verruculosaの制菌培養株の確立を目的として、本藻培養株の共存細菌に対する各種抗生物質の制菌効果について調べた。その結果、ストレプトマイシンに最も高い制菌効果が観察された。ストレプトマイシン存在下培養したP. verruculosaの経時的観察により、共存細菌の増殖による本藻細胞の溶藻が軽減されること、その結果単細胞遊泳期から細胞集塊形成期、遊泳細胞再形成期に至るまで本藻の生活環を進行させることができることを確認した。 生活環の各段階にある本藻細胞を回収し、光合成関連遺伝子の一種、光化学系II D1タンパク質遺伝子psbAの発現量を逆転写定量PCR(RT-qPCR)にて定量化した。その結果、細胞集塊形成期にその発現量が増加する傾向を認めた。休眠シスト形成能を持つ微細藻類では、休眠期に光合成などのエネルギー代謝活性が低下する。一方、本藻では、休眠期と推定される細胞集塊形成期にむしろ光合成が促進されていることとなる。その他の光合成関連遺伝子の結果を待たなければならないが、この結果は本藻における細胞集塊形成の意義を考える上で興味深い。 遊泳期と細胞集塊形成期にあるP. verruculosaの培養細胞からRNAを調製し、遺伝子発現の網羅的解析(トランスクリプトーム解析、RNA-Seq解析)に供した。細胞集塊形成期には顕著なRNA分解が生じたため、RNA-Seq解析には至っていない。単細胞遊泳期のRNAについては、RNA-Seq解析により得られたRNAコンティグを順次相同性検索に供し、発現遺伝子のアノテーションを進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和4年度は、以下について実施する予定であった。1) 赤潮原因藻Pseudochattonella verruculosaの無菌培養株の確立およびin vitroでの本藻生活環の完結 2) 本藻における生活環と光合成関連遺伝子発現量の相互関係の解明 3) 休眠期での発現抑制が予想される遺伝子のクローニングおよび生活環各期での発現量の比較 4) 生活環各期での遺伝子発現の網羅的解析 1) については、本藻培養株の制菌化が可能となった。その結果、生活環のうち単細胞遊泳期から細胞集塊形成期、遊泳細胞再形成期までの過程が確認できた。しかしながら、生活環の完結、すなわち細胞集塊からの遊泳細胞の放出を観察するには至っていない。回分培養においては、細胞集塊形成期は増殖の定常期から死滅期に相当し、そのため細胞集塊が死滅している可能性が考えられる。今後、形成された細胞集塊の分離培養法を検討する必要がある。 2) については、光化学系II D1タンパク質遺伝子psbAの解析に留まっている。リボソームRNA遺伝子を除くと、入手可能な遺伝子の塩基配列情報がP. verruculosaではごく限られている。光合成活性全体の発現を捉えるためには、psbAに加えて、4) の網羅的解析により得られる発現遺伝子の塩基配列情報を待たなければならない。同様の理由により、3) の対象となる遺伝子群のクローニングも4) の結果を待つこととなる。 4) のトランスクリプトーム解析(RNA-Seq解析)については、単細胞遊泳期で発現している遺伝子の機能アノテーションを進めている。一方、細胞集塊形成期については、RNAの分解によりRNA-Seq解析が困難であった。その要因と考えられる、共存する定常期から死滅期にある細胞から細胞集塊を分離した上でRNA-Seq解析に供する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
1) 赤潮原因藻Pseudochattonella verruculosaの制菌培養株を用い、生活環のうち細胞集塊内に形成された遊泳細胞の遊離を誘導する培養条件を明らかにし、in vitroで生活環を完結させる。特に、遊泳細胞の遊離を観察するに際し、細胞集塊を分離し培養する方法を確立する必要がある。そこで、微細藻類細胞の分離に用いられるキャピラリーピペット法や限界希釈法の応用を検討する。 2) 1) にて得られる生活環各段階の本藻培養細胞について、トランスクリプトーム解析(RNA-Seq解析)を行う。解析結果から、各段階で特異的に発現が誘導または抑制される遺伝子群を特定する。これらの遺伝子群のうち、休眠期と推定される細胞集塊形成期、および赤潮ブルーム形成の端緒となりうる遊泳細胞再形成期に特異的に遺伝子発現が制御される遺伝子について、逆転写定量PCR(RT-qPCR)法を用いた発現量の定量化法を確立し、これを赤潮ブルーム形成のポテンシャルを評価する分子指標とする。 3) 2) のトランスクリプトーム解析により得られた遺伝子情報に基づき、休眠シスト形成性微細藻類のシストにおいて発現抑制が報告されている鞭毛関連遺伝子、植物ホルモン生合成遺伝子、エネルギー代謝関連遺伝子などのP. verruculosaからのクローニングを試みる。これらの遺伝子について、2) と同様赤潮ブルーム形成の分子指標として確立する。 4) P. verruculosaを原因種とする赤潮現場海域を模したモデル系(ミクロコスム)を構築する。そのモデル系より環境RNAを調製し、分子指標として確立した本藻遺伝子の発現量をRT-qPCRにより評価する。モデル系内での本藻の動態と分子指標の評価結果との相関性から、分子指標の赤潮現場海域への応用可能性を考察する。
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