mGluR5異所性発現による神経変性疾患発症メカニズムの解明
Project/Area Number |
19K07971
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 52020:Neurology-related
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中尾 晴美 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 助教 (50535424)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥4,550,000 (Direct Cost: ¥3,500,000、Indirect Cost: ¥1,050,000)
Fiscal Year 2023: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2022: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2021: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2020: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2019: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
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Keywords | 代謝型グルタミン酸受容体 / 小脳プルキンエ細胞 / mGluR5 / mGuR1 / シグナル伝達 / 神経変性疾患 / 老化 / 遺伝子組換えマウス / 小脳 / mGluR1 / シナプス形成 / 瞬目反射条件付け学習 / GRM5 / トランスジェニックマウス / レスキュー / 神経変性 / cerebellum / transgenic / mouse / L7 / neurodegeneration / 遺伝子操作マウス / 神経疾患 / グルタミン酸受容体 |
Outline of Research at the Start |
代謝型グルタミン酸受容体であるmGluR5は脊髄小脳変性症(SCA1)、てんかん、パーキンソン病、脆弱X症候群、精神遅滞、自閉症、統合失調症、アルツハイマー病などの社会性障害に深く関わっている分子である。特に、脊髄小脳変性症(SCA1)の患者では、小脳プルキンエ細胞のmGluR5の発現が亢進していることが報告されている。本研究では、mGluR5を小脳プルキンエ細胞特異的かつ時期特異的に発現させたマウスを用いて、異常たんぱく質の蓄積や神経細胞死、シナプス可塑性、神経回路形成、認知機能等について解析を行う。本研究は神経変性疾患の予防法・治療法開発に大いに役立つと考えられ、社会的に大きな意義をもつ。
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Outline of Annual Research Achievements |
代謝型グルタミン酸受容体mGluRはGタンパク質共役型受容体であり、グループIに属するmGluR1とmGluR5はGqを介してシグナル伝達を行う。mGluR1は主に成体マウスの海馬歯状回、視床、小脳皮質で、mGluR5は大脳皮質、線状体、海馬CA1-CA3領域で多く発現しており、相互排他的な発現をしている。小脳ではmGluR5 の発現量が発達期から成熟期へ向けて減少し、それとは対照的にmGluR1の発現量は発達期から成熟期へ向けて増加していく。脊髄小脳変性症のモデルマウスでは、成体の小脳プルキンエ細胞において、mGluR1の発現量が減少するとともに、mGluR5の発現量が増加していることが報告されており、mGluR1やmGluR5が様々な精神疾患や神経変性疾患と関連していることも数多く報告されている。 本研究では、小脳プルキンエ細胞特異的にmGluR5を発現するようなマウスを作製し、このマウスをmGluR1ノックアウトマウス(mGluR1 KO)と掛け合わせた。mGluR1 KOマウスでは、シナプス形成の異常、小脳運動失調、瞬目反射条件付け学習の異常などが見られるが、mGluR5トランスジーンによりこれらの表現型すべてが回復することがわかり、小脳プルキンエ細胞ではmGluR5がmGluR1の機能を代替できることがわかった。しかしながら、mGluR5をmGluR1のかわりに発現するマウスでは、mGluRの足場タンパク質であるHomerとの結合量が少ないことが観察され、シグナル伝達効率に違いがあることが示唆された。また、これらのマウスでは加齢に伴って体重減少や寿命の短縮が見られ、特に雄個体では雌個体よりも早い9ヶ月齢あたりから、それらの表現型が見られた。摂食量や、協調運動能には異常がないことも確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
小脳プルキンエ細胞特異的にrat mGluR5を発現するようなトランスジェニックマウス(L7-mGluR5a Tg)を、mGluR1 KOマウスと交配することにより、mGluR1 KOの小脳プルキンエ細胞でmGluR5を発現するようなmGluR5-rescueマウスを作製し、mGluR1 KOマウスで 見られる小脳運動失調が、mGluR5の発現量に依存して改善することを確認した。さらに、小脳運動失調以外の、登上繊維―プルキンエ細胞シナプス間のシナプス除去異常や、瞬目反射条件付け学習の異常などの表現型についても解析を行い、これらの事象においてもmGluR5がmGluR1の機能を代替できることを明らかにした(Harbers, M., et al., Cells, 2022)。 上記のようにmGluR1 KOマウスの表現型をレスキューできたことから、トランジーンからのmGluR5の発現量が十分であることが確認できた。一方で、内在性のmGluR1が欠損している状態でmGluR5を発現するマウスではmGluRの足場タンパク質であるHomerとの結合量が少ないことが観察され、シグナル伝達効率の違いが示唆された。また、L7-mGluR5 Tgマウスでは、加齢に伴い、体重減少も観察された。雄個体では雌個体よりも早い9ヶ月齢あたりから、体重減少や毛色の変化および生存率の低下が見られた。まだ解析に用いた個体数が少ないものの、9-10ヶ月齢では摂食量や、協調運動能には異常がないことも確認できた。体重に有意な差のある12ヶ月齢のマウスの小脳のRNA-seq解析も実施した。 これらのことから、おおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
L7-mGluR5a Tg雄個体では、体重減少が9ヶ月齢から起こり始め、12ヶ月齢では野生型マウスと有意な差が認められた。9-10ヶ月齢では摂食量や協調運動能には異常がないことをマルチフィーダーを使用した摂食量測定や、ロタロッドによる運動テストで確認した。12ヶ月齢のマウスの小脳をサンプリングしてRNA-seq解析を行なったところ、老化に関わると思われる多くの遺伝子に変化があったが、サンプリングの際の脈絡叢の取りこぼしなどが原因と考えられたため、脈絡叢の取りこぼしを防ぐようなサンプリング方法に変更し、10ヶ月齢と12ヶ月齢の小脳を含むサンプルを用いて再度RNA-seq解析を行う。 摂食障害や運動失調の可能性については、さらに個体数を増やし、より高齢マウスでの確認を行う予定である。また、神経変性のマーカーを用いた組織学的解析及び記憶・学習・認知に関わる行動解析を行うため、野生型マウスとL7-mGluR5a Tgマウスが得られる組み合わせの受精卵を作製し、仮親に移植済みである。 雌個体は雄個体に比べて、体重減少や毛色の変化、寿命の短縮が遅い時期に現れるが、こちらについても解析を行う予定である。
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Report
(4 results)
Research Products
(6 results)