神経難病看護師による症状看護の促進に向けた新たなリフレクションプログラムの構築
Project/Area Number |
19K10866
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 58060:Clinical nursing-related
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Research Institution | Setsunan University |
Principal Investigator |
森谷 利香 摂南大学, 看護学部, 教授 (20549381)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 裕子 畿央大学, 健康科学部, 教授 (40263272)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥3,770,000 (Direct Cost: ¥2,900,000、Indirect Cost: ¥870,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2021: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2020: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2019: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
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Keywords | 神経難病看護 / 症状緩和 / 看護師 / 感情 / 暗黙知 / リフレクション / 感情体験 / 神経難病 / 教育プログラム |
Outline of Research at the Start |
我々は、神経難病患者の症状の実態を報告し、看護師に対する患者のニーズも明らかにしてきた。一方で、神経難病患者のケアに携わる看護師(以下、「神経難病看護師」とする)のバーンアウントなどの問題もある中、看護師の経験に着目したリフレクションを用いた支援プログラムを行い、一定の成果を挙げてきた。これらの取り組みの中で、神経難病看護師に、看護実践のための知識基盤の不足、負の感情体験、患者理解の困難さという課題があった。本研究は、上記の課題に対応するために、「経験の継続性」と「相互作用」を方法論に取り入れた新たなリフレクションプログラムを再構築し神経難病看護の充実を通して、患者のQOL向上に寄与する。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、①神経難病看護師の症状看護における暗黙知を明らかにする、②神経難病看護師の感情体験・管理について明らかにする、③神経難病看護師の症状看護を促進する新たなリフレクションプログラムを再構築し、暗黙知の共有、感情管理、患者理解の促進、主体的な振り返りの状況の視点で評価する。本研究は「神経難病患者の痛みの看護を促進するための神経内科看護師への支援プログラムの開発(16K12046)」から継続して取り組んでいる。これまでの経過として2019年度に、中堅看護師を対象として症状看護を促進するためのパイロットスタディを実施した。結果、参加者に共通して患者理解の促進や、自身の実践への意味に関する気づきがあり、さらに個人での振り返りに加えてグループで共有することで内省が深まり、視野が広がるという結果を得た。これらから、本研究のプログラムの方向性として適切であることを確認した。 2021年度は①の症状看護における暗黙知を明らかにすることを目指し、神経難病患者への看護の中でも特に困難が生じやすいALS患者の体位変換について焦点を当て、その暗黙知を明らかにする計画を立てていた。しかし、臨床の看護実践者においてCOVID-19の影響が未だ強く、この計画は延期の状態であった。②の神経難病看護師の感情体験を明らかにするインタビューを、参加者17名を対象にリモート会議システムにて行った。結果として、肯定的的感情では、『患者の肯定的変化や反応に対して抱く嬉しさ』『満足のいく看護を提供できた時に抱く喜び』など9カテゴリーが生成された。否定的感情では『患者に対して抱く怒りや苦しさ』『十分なケアが提供できたかという後悔や不安』など13カテゴリーが生成された。難病という疾患特性による無力感や意思決定といった重大場面に関わる苦悩などの感情も明らかとなった。これらは、本研究が初めて明らかにしたことであり難病看護に特有の感情と推察できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度は上記計画のうち①の症状看護における暗黙知を明らかにすることを目指し、神経難病患者への看護の中でも特に困難が生じやすいALS患者の体位変換について焦点を当て、その暗黙知を明らかにする計画を洗練し、準備する期間とした。まず暗黙知の関連概念として実践知や経験知などがあるため、これらの用語の整理をしたところ次のことを明確にし、共有した。「実践知」とは状況に依存したワザや判断などの経験的な知識で、言葉として十分に表現できない知識であること、そして「実践知」は経験の中に埋め込まれたノウハウやコツである「暗黙知」を獲得し、仕事における課題解決にその知識を適用する能力を支えているとされていた(金井ら, 2021)。つまり、暗黙知と形式知の円環(やりとり)により実践知が獲得されることを明確にした。また文献レビューによって、看護の論文においてこれらの用語の区別は明瞭ではないことも判明し、本研究では区別して使用する計画とした。さらに、職業能力開発の専門家であり職人の技能伝承を研究テーマとした森(2013)は暗黙知(実践知)を明らかにする視点として、視覚・聴覚、動作、コミュニケーション、判断を挙げており、これらを参考にインタビューガイドを作成することとした。これらの計画に沿ってALSの事例を設定し、難病看護師として神経難病患者の訪問看護経験が豊富なエキスパートに対して、ALSの体位変換における暗黙知を明らかにするためのプレインタビューを行った。事例の設定の具体性について助言を得て、さらに計画を洗練することができた。現在は、本計画の参加者を難病看護師に募っており、準備が整い次第、オンラインでのインタビューを開始する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度中には、本研究の最終段階として「神経難病患者の痛みの看護を促進するための神経内科看護師への支援プログラム」を作成予定である。本プログラムではリフレクションを基本的な手法としながらも、従来から我々が課題としていた、神経難病看護師の「感情体験」や「暗黙知」について明らかにした知見を加えた計画とする。 そのために、神経難病看護師の暗黙知に関して計画通りに研究を進め、明らかにする。暗黙知とは、看護師個人や一部の看護組織では保有・活用しているが、言語化が困難、または言語化されていないために体験的にしか伝授・共有ができず、場や関わる人の構成という状況に依存して成り立っている知識である。暗黙知については、看護研究の論文のみではく経営学等の他の学問分野でも着目されている概念であり、組織での伝承プロセスが課題となっている。これらの論文を参考にしながら、神経難病看護の暗黙知について検討し、神経難病看護の実際を明らかにするとともに暗黙知の表現方法や伝承の在り方にも注目して成果を公表していく。以上について対面形式での研究方法を計画していたが、引き続き対面でのコンタクトが難しい場合、リモート会議システムを用いた方法も併用する。 これらを通して「神経難病患者の痛みの看護を促進するための神経内科看護師への支援プログラム」を充実したものへとブラッシュアップを図る。
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Report
(4 results)
Research Products
(8 results)