Project/Area Number |
19K12414
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 64040:Social-ecological systems-related
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Research Institution | Shiga University |
Principal Investigator |
石川 俊之 滋賀大学, 教育学系, 教授 (50396313)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,600,000 (Direct Cost: ¥2,000,000、Indirect Cost: ¥600,000)
Fiscal Year 2022: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2021: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2020: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2019: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
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Keywords | セルロース分解 / 水生生物 / 淡水域 / 陸上と水域 / 底生動物 / 湖沼 / デトリタス / 落葉 / 湖沼沿岸域 / 森林と水域 / 学校教育 / ヨコエビ類 / 湖沼生態系 / 貧酸素 |
Outline of Research at the Start |
湖沼の湖岸では樹木などからの落葉リターの供給は酸欠をまねく。さらに、ほかに藻類などの餌資源が大量にあるため、湖沼ではリターを餌資源として注目してこなかった。 一方、河川や集水域の樹木や草からの落葉リター供給は系外からの餌資源として重要視され、河口域でも同様の現象が注目されてきている。湖においても、リターが豊富な湖岸には、特定の生物(甲殻類など)が蝟集しているため、貧酸素耐性をもつ生物であればリターを資源として利用している可能性が考えられる。 そこで、湖岸域の底生動物のセルロース分解能と貧酸素耐性を測定し、さらに分布との対応関係を明らかにし、湖沼におけるリターの資源利用可能性を評価する。
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Outline of Annual Research Achievements |
2020年度、2021年度に淡水生物(主に底生生物)のセルロース分解酵素検出系を用いて、琵琶湖に生息する底生生物に加え、ザリガニの生息地間×成長段階の比較をし、淡水水生生物の食性評価をすすめることができた。琵琶湖やその周辺に生息するヨコエビ類のうち、砂礫によくみられるビワカマカは、他のヨコエビ類と異なりセルロース分解能が検出されなかった。採集場所ではデトリタスの集積は見られず、餌環境との対応が考えられた。アメリカザリガニのセルロース分解能は、成長に伴い低下がみられており、肉食性が高まった可能性が示唆された。過去の研究では胃内容物を根拠に成長に伴い草食性が高まるという見方と安定同位体を用いて肉食性が高まるという見方があったが、成長に伴いセルロース分解能が低下をすることから、大きな個体の消化管内に消化しにくい植物片が残りやすいという解釈を提示することができた。 一方、セルロースを多く含む有機物が環境中に多いか少ないかは落葉リターの供給源の有無のみで評価するにとどまっており定量的な評価ができていなかった。そこで、デトリタス中のセルロース含量の評価方法の検討を2021年度末から検討に着手した。 2022年度はセルロース含量の定量について文献レビューを行い、水中の有機物のα-グリコシド結合とβ-グリコシド結合の比率のデータの収集や、アミロース・アミロペクチンとグルコースの分画方法について、食品分析の方法を参照し分析方法の絞り込みを進めた。 2023年度は文献調査では藻類の工業的な培養においていくつかのセルロース含有量の測定例を見出した。水中の有機物のセルロースの分画をSouthgate法に従って行い、分析の目途がたった。一方、デンプン画分の分離に課題があることもわかった。なお、2020年度から2022年度までの研究成果を日本陸水学会大会において発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2022年度までに、琵琶湖や周辺水域に生息する水生動物や、日本全国に分布する外来生物であるザリガニについて、セルロース分解酵素活性の測定を行ってきた。 2023年度は環境中に存在する水生動物の餌候補となる有機物について、セルロース含量の多寡について実測や文献調査を進めた。 セルロース含量の測定は、食品分析で使われるSouthgate法により分画と分析するところまで進めることができた。琵琶湖南湖で採集した底泥と懸濁有機物(主に植物プランクトン)を分析に供した結果、デンプンとの比率で表すと底泥のほうがセルロース含量が高い結果となった。ただし、Southgate法による分画の初期段階であるデンプンの除去で用いるジアスターゼ酵素反応に課題がある。回収率や、酵素自身に含まれる有機物の影響を小さくするために、適切な添加量を探索し、測定値を確実なものにしていく必要がある。 既存の文献による調査では、水生維管束植物のセルロース量はいくつかの研究を確認することができた。一方、植物プランクトン(微小藻類)のセルロース量は、実測された研究は極めて少なく、セルロース材料を得るために培養された種のものであった。セルロース材料の探索のためのレビューが複数見つかったが、取り上げられていた種は数種であり、植物プランクトンのほんの一部が特定の培養条件で生成したセルロース量が評価された値がほとんどであると結論付けられた。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は、環境中の有機物のセルロース量と水生動物の分解能について野外調査を行い明らかにしていく。まず、2023年度に検討が終了しなかった有機物中のデンプン/セルロース量の分析の確立を行う。並行して、環境中の有機物試料を、定点(琵琶湖南湖流出河川)で毎月サンプリングする。微細藻類と陸上由来のデトリタスの寄与を議論するため、メッシュ分画を行ったサンプルを調整する。また、懸濁物よりも地点間の差が大きいと考えらえる底泥のセルロース量の比較をするため同時期に採泥試料をヨシ原からの距離や水深の違いを考慮して採集する。試料を採集する際には、底生動物を集めるための採泥も行い、得られた動物のセルロース分解能を測定し、同一種の異なる餌環境での比較を行う。これらの試料について、有機物中のデンプン/セルロース量の分析を行い、餌に含まれるセルロース量と食べる動物のセルロース分解能の対応を検討し、これまで測定してきた動物のセルロース分解能の違いが餌を反映したものであるという推測の根拠を示す。 また、これまで扱った水生動物の貧酸素耐性について文献値を整理するとともに必要な追加実験を行い、セルロース含量が高い環境、例えばヨシ帯においては貧酸素耐性とセルロース分解能を兼ね備えた生物が優占するという研究当初の仮説について、検証可能なデータをそろえていく。
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