Project/Area Number |
19K12465
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 64060:Environmental policy and social systems-related
|
Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
伊達 浩憲 龍谷大学, 経済学部, 教授 (30278501)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2025-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
|
Budget Amount *help |
¥3,380,000 (Direct Cost: ¥2,600,000、Indirect Cost: ¥780,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2020: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2019: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
|
Keywords | 生態系サービス / IPBES / 潜在能力アプローチ / 東日本大震災 / 復興政策 / 自然に関する多様な価値観 / 生態系サービスを利用・享受する能力 / エージェンシー / ウェルビーイング / 生態系サービスを享受する能力 / 岩手県 / 滋賀県 / 京都府 / 生物多様性 / エコトーン / well-being / 琵琶湖 / 潜在能力 |
Outline of Research at the Start |
人びとの「生態系サービスの享受」に関する選択、その背後にある動機や理由、選択をなすために必要な力の修得機会、経験などについて、「潜在能力アプローチ」や「生物多様性と生態系サービスの経済学」に関する先行研究をもとに複数の経路モデルを構築した上で、住民ヒアリングおよびアンケート調査を実施し、その結果を潜在能力アプローチの諸概念を用いて分析する。調査対象は、滋賀県近江八幡市・東近江市の琵琶湖・内湖湖岸および岩手県陸前高田市の広田湾沿岸の漁業地区の高齢者と小中学生である。
|
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度前半期には、IPBESを舞台に展開されている、「自然に関する多様な価値観」や「生態系サービス」に関する欧米・南米諸国の環境経済学およびエコロジカル・エコノミクスの研究動向をフォローした。 その結果、(1)IPBESの学際的な議論において、従来の「生態系サービスの経済学」の狭隘な情報的基礎が問題視されてきていること、また、(2)環境保全をめぐる公共的討議の場面においては、各利害関係者が、自らの「自然に関する価値観」や信念にもとづき、意見を闘わせる場面が頻繁に生じていること、(3)利害関係者の相互理解や合意形成を促進するためには、「自然に関する多様な価値観」を環境政策の意思決定過程の中に埋め込んでいく必要があること、(4)以上をふまえて、環境経済学およびエコロジカル・エコノミクスは、「自然に関する多様な価値観」を包含する情報的基礎を持つ必要があること、などが明らかになってきた。 後半期には、上記の(2)(3)に焦点をあて、3つの地域で現地調査を実施した。具体的には、①岩手県陸前高田市の農協関係者、特定非営利活動法人「高田松原を守る会」への聞き取り調査、および干潟再生事業が進められている小友浦地区の実態調査、②宮城県気仙沼市の内湾地区、小泉海岸、大谷海水浴場、大島田中浜において、防潮堤建設の際に住民合意形成に携わった関係者への聞き取り調査、現地調査、③奄美大島において、「自然の権利訴訟」(アマミノクロウサギ訴訟)原告代理人への聞き取り調査、国立公園内でアマミノクロウサギの生態・生息地調査を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナは「5類感染症」移行したが、地域的な諸事情により、2023年度に実施予定であった岩手県陸前高田市での生態系サービス享受能力に関するヒアリング調査・アンケート調査は、実施できなかった。オンラインや郵送を利用したアンケート調査の実施も模索したが、本研究の調査対象が高齢者や小・中学生であるため、実施は困難であった。 今年度は、対面実施が困難だった場合には、相手方の協力を得て、オンラインでのヒアリングや郵送でのアンケート調査に切り替えたい。
|
Strategy for Future Research Activity |
「生態系サービスの経済学」は、主に効用を情報的基礎とする一元的な価値論に傾斜してきた。そこでは、(選択の帰結としての)効用以外の情報、例えば、「行為主体」の性質、選択の「過程」などの、人の生の状態を左右する重要な情報は除外されてきた。このような狭隘な情報的基礎にもとづくならば、人の生や、「自然についての多様な価値観」を豊かに捉えることは困難だろう。 その一方で、アマルティア・センの潜在能力アプローチ(Capability Approach)が有する包括期な情報的基礎(2つの「自由」)を拡張することで、「自然に関する多様な価値観」を包含することが可能になるのではないか。センの「潜在能力」とは、人が価値をおく理由のある生(行いや在りよう)の様々な組み合わせを達成する能力のことであり、彼によれば、「自由」には、1)人の福祉の(実際の、帰結的な)達成と(達成する)自由を意味する「福祉(well-being)的自由」と、2)「(責任ある、能動的な)行為主体としての(実際の)達成と(達成する)自由を意味する「行為主体的自由」との2種類がある。 以上のような問題意識をベースとして、今年度の前半期に、潜在能力アプローチを用いた「自然に関する多様な価値観」の把握に関する論文を執筆し、発表したい。 また、夏休みの前後を利用し、岩手県陸前高田市において、生態系サービス享受能力に関するヒアリング調査・アンケート調査を実施する予定である。その後、得られたデータの質的・量的分析を実施し、論文を作成し投稿する。
|