エルサレム会議のデザイン史研究―現代社会の課題に対応力のあるデザインを求めて
Project/Area Number |
19K12668
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 90010:Design-related
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Research Institution | Ferris University |
Principal Investigator |
近藤 存志 フェリス女学院大学, 文学部, 教授 (00323288)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥2,080,000 (Direct Cost: ¥1,600,000、Indirect Cost: ¥480,000)
Fiscal Year 2021: ¥390,000 (Direct Cost: ¥300,000、Indirect Cost: ¥90,000)
Fiscal Year 2020: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2019: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
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Keywords | 福祉社会 / モダン・デザイン / エルサレム会議 / 機能主義 / ニコラウス・ぺヴスナー / ゲニウス・ロキ / 寛容 / ジョン・ロック / エルサレム会議都市計画小委員会 / モダニズム / エルサレム観 / キリスト教 / シオニスト運動 / ヴァナキュラリズム / ニコラウス・ペヴスナー / モシェ・サフディ / デザイン史 / 20世紀建築 / 都市計画 / デザイン学 / 建築史・意匠 / 美術史 / 都市計画・建築計画 |
Outline of Research at the Start |
1969年に発足したエルサレム会議は、政治的・民族的・宗教的な諸対立を抱えるエルサレムの平和的発展をモダン・デザインによる市街地の整備・美化・拡張の観点から議論する国際会議であった。この会議は、世界各国から20世紀を代表する建築家、デザイナー、芸術家、デザイン史研究者を招聘し、冷戦時代に他の類例を見ない野心的な試みを遂行した。本研究は、これまでデザイン学・デザイン史学の分野で学術的検討が十分になされてこなかったこの会議の全容を明らかにしたうえで、国際的枠組みにおいてデザインを議論した意義と成果を把握し、エルサレム会議の提言が今なお諸対立を抱える現代世界に対して持つ意義について考察する。
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Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は、第1回エルサレム会議(1969年7月)、第2回エルサレム会議(1973年6月)、第3回エルサレム会議(1975年12月)がそれぞれ会期終了後に発表した声明等を手掛かりに、エルサレム会議におけるモダン・デザインの意味について主として考察した。 第1回エルサレム会議では、イスラエルのモダニズム建築家たちによってまとめられていた基本計画について、計画全体を貫くテーマが欠如している、遠大な夢・構想に基づく計画が必要である、といった批判的な見解が表明された。他方、エルサレム市当局が目標としたのは、最新の基盤施設と交通網を整備することで、多様な宗教的、民族的背景を持つ複数の集団が、それぞれの特性や異質性を維持しながらひとつの共同体を形成する「モザイク都市エルサレム」を実現することであった。エルサレムを構成する各民族集団の生活水準を向上させ、健やかで文化的な生活を保障する福祉社会を実現することで、モザイク状態の都市に生じ得る住民間の分裂と対立を克服する可能性を模索していたのである。 1970年代前半当時、モダニズム色の強い近代都市の建設は既に魅力を失っていた。しかしそうした時代にあってもなお、エルサレム会議に携わったモダン・デザインの信奉者たち・機能主義者たち(ペヴスナー、リッチフィールド、サフディ、コレック他)は、モダン・デザインの機能主義の理念に福祉社会を前進させる原動力を見出していた。彼らが同会議の活動に果たした積極的な役割は、その確信に基づいていた。 2022年度の研究成果は、「戦禍の中での福祉社会の実現とモダン・デザインの意味―第3次中東戦争停戦後のエルサレムの試み」との表題のもと、2023年6月に開催される藝術学関連学会連合第17回公開シンポジウムにおいて発表される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2022年度も海外での現地・一次資料調査を行うことが困難な状況が続いた。昨年度に引き続き予定していたエルサレムでの一次資料調査は実施できず、本研究課題のエフォート率も低下したため、研究の進捗状況には引き続き遅れが生じた。 成果発表については、2023年6月に開催される藝術学関連学会連合第17回公開シンポジウムにおいて研究報告を行う予定にしている。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、本研究課題が掲げた3つの「核心をなす問い」の中から、特に「エルサレム会議の提言とその現代的意義」について考察を継続したい。 グローバル化が日々急速に拡大をつづける現代にあって、宗教的、民族的対立の構図を鮮明に残したまま、現世的福祉を確保し、維持し、促進することで紛争都市の建築的・都市計画的発展をめざした1970年代のエルサレム会議の挑戦に、現代的意義を指摘したい。 2023年度は、8月上旬にエルサレムでの資料収集(イスラエル国立図書館他)および一次資料等の撮影を行う計画である。
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Report
(4 results)
Research Products
(11 results)