Project/Area Number |
19K12690
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 90010:Design-related
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Research Institution | Kyoto Women's University |
Principal Investigator |
前川 正実 京都女子大学, 家政学部, 教授 (80753920)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥3,640,000 (Direct Cost: ¥2,800,000、Indirect Cost: ¥840,000)
Fiscal Year 2021: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2020: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2019: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
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Keywords | アブダクション / デザイン推論 / デザイン方法論 / プロトタイピング / 創造力 / 批判的思考態度 / NIRS / 探求の理論 / 試行錯誤 / 不便益 / 創造性 / デザイン思考 |
Outline of Research at the Start |
所与の正解が無いデザイン問題を解く過程の特徴は、試行錯誤を経ることでゴールの概念と実体を明確化していくことすなわちサイクリックアブダクションである。ここでは「失敗してこれを有効に活かすプロセス」こそが重要である。このプロセスを高度(合目的的で創造的な結論を合理的な試行錯誤で得る)に行うための要素を探索し、その条件を解明し検証することによって、デザイン問題におけるサイクリックアブダクションを高度化する方法について研究する。
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Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、昨年度に実施した実験(二種類の異なる条件下)で取得した一見矛盾するデータに対して合理的な解釈を可能とする仮説の構築を行った。この成果は2023年7月30日に投稿し、2023年10月に査読付き学術論文として採択され、2024年3月に発行された。 本年度の検討により構築した仮説の概要を以下に示す。デザイン活動のサイクリック・アブダクションにおいて、1.主に抽象的な内容を思考する「探索のサイクル」と、主に具体的な内容を思考する「解決のサイクル」における脳前頭前野の賦活量は異なり、抽象度の高い思考の方が大きい脳賦活である傾向がある。2.前後のアイデア創出タスクでは後のタスクでの脳賦活は低下する傾向がある。3.上記の傾向は、アイデアを多く出しやすい被験者群において生じるものであり、アイデアを出しにくい被験者群では見られない。発表した仮説は今後の検証作業によって確度を高める必要はあるが、デザイン活動における抽象度の異なる推論の間の脳賦活に違いが存在することを示唆し、またアイデア創出力の違いによって脳賦活の仕方が異なることを示唆するとの結論を得られたことは学術的に意義がある。サイクリック・アブダクションを高度化するために有効性のあるヒントとなる結論を得られたといえる。 本年度の実績により、申請書記載の目的Cと目的Dに関して一定の成果を得られたと考える。 このほか、以下の研究を行った。デザイナーがサイクリック・アブダクションを高度に行うためには、あるアイデアに対して批判的に評価し、別のフレームを適用するなどして異なる仮説を生成する必要がある。近年は、マインドワンダリングが創造性に関連するとの報告があるため、この性質と批判的思考態度との関連性について実験を行った。取得したデータの十分な分析と解釈は未実施である。 以上、大別して2種類の研究を行ない、1報は査読付き学術論文として発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度の研究成果により、申請書記載の目的Cと目的Dに関して一定の成果を得られたと考えられるため、研究は着実に進捗している。しかし、2021年度の実績報告において、目的Cのデータ分析を通じて達成することが望ましいと記した目的Bについては、これまでの実験と分析において、アイデアを変容させていく過程を十分に検知できるデータを取得できなかったため、今後、新規の実験を計画して実施する必要がある。 現在までの進捗状況がやや遅れている理由をまとめると、昨年度までの報告書に記載される、調査及び実験対象とするデザイン課題の選定に時間を要したこと、生理データを取得する機材の運用と取得データの後処理に関する知見の収集、機材の故障による中断、また取得データの解釈に不可欠な神経科学および生理学に関する諸知見の収集と理解に時間を要したことを挙げられ、むろん、COVID19によって被験者を用いた実験の延期が大きく影響した結果である。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度内に、申請書記載の目的Bを達成することを目的とした実験計画を行い、分析と解釈、考察までを実施し、学術論文投稿までを予定する。これまで本研究で用いた生理データ(NIRS、RRI)の取得と後処理および分析の方法には既に習熟したため、データの後処理から分析、解釈までに要する時間は短縮可能と予測されることから、年度内に一定の結論を導出することを予定する。また、既に複数の生理データ取得機材を取得済みのため、それらのデータを併用した多面的な思考状態観測が可能な体制を整えてある。 また、これまでの研究成果により、被験者を、アイデアを多く出す(創造性が高い)群とそうでない群に予め分けて実験を計画するといった方策を採ることにより、これまでのように暗中模索に時間を要することは最少化できる可能性があるため、確度の高い実験計画を策定可能となる。また、被験者群を、批判的思考態度やマインドワンダリング傾向によって区分するといった実験バリエーションも追加することにより、サイクリック・アブダクションを多面的に理解し、高度化するための知見の創出につなげることを計画する。
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