To Construct the Way of Thinking about Completion of the Life;by Perusing Hagakure
Project/Area Number |
19K12928
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 01010:Philosophy and ethics-related
|
Research Institution | Kanda University of International Studies |
Principal Investigator |
上野 太祐 神田外語大学, グローバル・リベラルアーツ学部, 准教授 (30835012)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2025-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
|
Budget Amount *help |
¥3,380,000 (Direct Cost: ¥2,600,000、Indirect Cost: ¥780,000)
Fiscal Year 2022: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2021: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2020: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2019: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
|
Keywords | 『葉隠』 / 武士道 / 尽くすこと / 騎士道 / 時間 / 死 / 武 / 葉隠 / 生 / 倫理 / 思想史 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、人生の究極的課題であり、現代の日本社会において喫緊の課題ともされている人間の幸せな死の在り方について、日本倫理思想史の重要文献『葉隠』を素材とした新たな倫理思想を生み出すことにある。『葉隠』解釈史の構築と『葉隠』成立過程の検証という二つの基礎作業を踏まえて『葉隠』の武士が己のあるべき死をいかにして見出し成し遂げようとしたのかという点を明らかにし、そこから幸せな死の在り方を考える。とりわけ、人間の生を問い直すために、あえて「いかに死ぬか」という問題視角から出発し、日本思想に立脚して幸せに死ぬことを正面から捉える新たな倫理思想の構築を目指す。
|
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は、7月31日から8月3日まで『葉隠』成立の地である佐賀県佐賀市を訪れ、特に『葉隠』序・聞書一に関係する要地、および近代に入り『葉隠』を顕彰する風潮のなかで指定された史跡の一部を丁寧に調査した。主に佐賀城、山本常朝住居跡および墓地、田代陣基墓地、山本常朝庵跡とされた場所などを巡見した。また、8月29日から31日にかけて実施された研究合宿で栗原剛氏の論文「『葉隠』における覚悟と実践」の書評が行われ、その報告担当を務めた。具体的には、栗原氏の先行論文「『葉隠』「聞書第一」第二項における死:「喧嘩打返」の理想形に即して」から展開が予期されるはずの論旨から、当該論文の展開をあらためて検証・批判し、倫理学・日本倫理思想史の先行研究である相良亨の成果からの距離を確認した。9月29日には、日本倫理学会第74回大会のワークショップ「徳倫理学ワークショップ6──西洋との対話で考える日本の徳」に登壇し、「武士における徳の問題――忠と孝を起点に」の題目で報告を行った。本報告では、日本の武士道の徳(忠孝)の特質を西洋の騎士道の徳(loyalty)との対比から論じた。両者の徳の共通点を「尽くすことdevotion」として抽象化し、ともすれば主君のための盲目的な「死」の思想として一面的におさえられがちな『葉隠』の「尽くすこと」のなかに、「諫言」を通じて主君を諫める営みが含まれている点に注目し、西洋の騎士道における「尽くすこと」(「死」)が神への献身や贖いに集約されうることとの対比を通じ、日本の武士の徳の内実の一端を論じた。また、本報告内容をさらに充実させた英語論文の草稿を2024年1月に仕上げ編者に提出した。2024年の3月末日には、近代以降の『葉隠』の「読まれ」方に注目した論考「『葉隠』はどう読まれたか」の草稿を完成し、編者に提出した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2023年度は、コロナ禍でペースを崩され叶わなかった佐賀巡見が実施できたこと、研究計画当初からの目途としていた近代以降の『葉隠』の受容研究に関する論文草稿が、不十分ながらも、倫理学・日本倫思想史の研究的観点を意識しながら完成できたこと、またその課題を追究する中で新たに、人間の幸せな生と死を思索する上では、武士の思想のみに限らず、広く中世・近世の日本の思想を倫理学・日本倫理思想史の方法論から見つめ直す必要があること(またその方途がきわめて重要かつ有力であること)が自覚できたこと、学会での報告を経た後に英語論文を執筆する過程で西洋の騎士道の先行研究に複数目を通した結果、あらためて日本の武士の置かれた実態やそのなかで理想化された徳の特質について見直す機会があったこと、などこれまで滞っていた諸点の研究を前進させると共に、新たな研究課題に結び付く着想を得ることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
『葉隠』の受容を研究する上では、先の論文草稿で扱えなかった他の論考や記事についても引き続き丁寧に追跡する必要がある。同時に、『葉隠』聞書群に直接関係する要地のみならず、戦前の『葉隠』顕彰の風潮において取り沙汰された葉隠の他の史跡の追跡をはじめ、まだ十分に踏査できていない顕彰地などを巡見することも、受容研究には必要である。また、最善本とされる小山本に拠りながら『葉隠』の成立研究を進めたい。その際、①過去の武士から連綿とつながった武士像の伝統の問題(例えば、世阿弥の謡曲などに描かれている武士の姿、それらは『平家物語』などの先行する軍記から一種の理念形として描かれたものとおさえられる)、②歴史的実相としての武士の在り方(特に、同じ戦闘者であった騎士の在り方の実相との差から浮かび上がる目指された「徳」の質差や超越(神/神仏)との関係性)、③『葉隠』聞書一・二の口述者である山本常朝の思想形成、④江戸時代の前・中期に広がっていた他の思想(特に倫理学・日本倫理思想史の観点からすれば、伊藤仁斎、近松門左衛門らの思想)との質的連続性、などが今後の関心として浮上しており、これら諸点について総合的に研究を遂行していく。
|
Report
(5 results)
Research Products
(10 results)