チベット初期中観思想の形成とその歴史的展開に関する基礎的研究:二諦説を基軸として
Project/Area Number |
19K12951
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 01020:Chinese philosophy, Indian philosophy and Buddhist philosophy-related
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Research Institution | Rissho University |
Principal Investigator |
西沢 史仁 立正大学, 法華経文化研究所, 研究員 (50646643)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2021: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2020: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2019: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
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Keywords | チベット中観思想 / チャパ・チューキセンゲ / パツァプ翻訳師ニマタク / 二諦 / 中観派の分類 / 帰謬派 / 自立派 / 中観東方三論提要 / パツァプ / 離一多 / 離辺中観 / 不住中観 / パツァプ飜訳師ニマタク / 初期チベット人学者 / 二諦説 / サキャ派 / シャーキャチョクデン / コラムパ / チベット初期中観思想 / トルンパ / ギャマルワ / チャパ |
Outline of Research at the Start |
本研究は,インドにおいて成立した中観思想が如何にチベットに導入・受容され,独自の展開を見せたのかということを,中観思想の諸主題のうち,特にその枢要となる《二諦説》を分析の基軸に据えて解明することを主題とする.具体的には,後伝期における仏教教学復興に主導的な役割を果たした初期チベット人学者の著作を主資料として,①彼らが如何なる仕方でインド中観思想を受容し自らの教学を確立したのか,②後代サキャ派やゲルク派等の中観思想の形成に如何なる影響を及ぼしたのかということを二諦説を主題として分析することを通じて,これまで殆ど未知であったチベットにおける中観思想の形成とその歴史的展開に光を当てることを目指す.
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Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,主に,12世紀初頭にサンプ寺を拠点としてチベット仏教教学復興に多大な貢献を果たしたチャパ・チューキセンゲ(Phya pa Chos kyi seng ge, 1109-1169)の二諦説について研究を遂行した.具体的には,彼の中観綱要書『中観東方三論提要』を資料として,1.同書の構成と内容概観,2.六項目からなる二諦の科段設定の起源,3.二諦の一般的設定,4.チャパの二諦説の文献的思想的背景:智蔵の二種の二諦説,5.空性は知の対象であるのか否か:チャパのトルンパ批判,6.中観派には主張があるのか否か:チャパの月称批判,7.空性と中観理解に関するチャパの密意,8.チャパは空性を「真実成立」と見做していたのか否か等について考察を加え,チャパの中観思想の独創性と文献点思想的背景について光を当てることを試みた.その研究成果は,「チャパ・チューキセンゲの二諦説:『中観東方三論提要』を資料として」『大崎学報』178として公表した. さらに,昨年度に遂行した,パツァプ翻訳師ニマタク(ca. 1070-1140)の中観思想研究から派生して,中観派の分類として一般的に受容されている中観派を帰謬派(thal 'gyur ba)と自立派(rang rgyud pa)に分ける流儀がインド起源ではなく,チベット起源であり,具体的には,パツァプ翻訳師が,1105年頃にカシュミールで著作したと推定される『根本中論』の註釈に始めてこの二つの用語を創出し,さらには,それを中観派の分類として設定したことに起源することを明らかにした.その研究成果は,日本印度学仏教学会第73回学術大会(2022/9/4, 東京外国語大学)において口頭発表し,同学会誌(『印仏研』71-1)に掲載された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
当初の計画では,本年度に同科研研究を完了し,その成果発表を書籍の形で纏める予定であったが,特にコロナパンデミックの影響と体調不良のため当初予定していた研究計画に少なからぬ遅延が生じ,研究計画の修正と研究期間の延長をせざるを得なかった. 具体的には,初期チベット人学者の二諦説については,トルンパ,ギャマルワ,チャパ,パツァプ翻訳師等の一連の原典を資料として,また初期サキャ派の二諦説については,ソナムツェモの『入菩薩行論』の註釈を資料として一定の成果を上げたが,ギャマルワの『二諦分別論解説』のテキスト校訂とゲルク派の二諦説研究には遅延が生じている.
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は,引き続きこれまでの研究成果を取り纏める方向に入る予定である.ギャマルワの『二諦分別論解説』のテキスト校訂については,その二諦概説を纏めた箇所の校訂テキストは既に公開したが,その残りの部分を期間内で完了することは時間的に困難であることを鑑み,その完成は機会を改める方向に切り替えた.そこで本年度は,上記進捗状況を鑑み,特にサキャ派及びゲルク派の二諦説研究に集中し,年度内にその成果発表の取り纏めに入ることに務めたい.
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Report
(4 results)
Research Products
(11 results)