西欧中世の『フィシオログス』写本―挿絵の展開と受容に関する美術史的研究
Project/Area Number |
19K12999
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 01060:History of arts-related
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Research Institution | Tokyo National University of Fine Arts and Music |
Principal Investigator |
川瀬 瑞絵 (長友瑞絵) 東京藝術大学, 学内共同利用施設等, 講師 (60422523)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2022: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2021: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2020: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2019: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
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Keywords | 西洋中世美術 / キリスト教美術 / 写本挿絵 / 動物シンボリズム / 聖書と象徴 / ベスティアリ / 修道院文化 / 幻想の動物 / 博物誌 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、西欧中世のキリスト教的博物譚『フィシオログス』(Physiologus)の伝統の流れを汲む写本群を取り上げ、その挿絵の成立と展開について、機能・受容という新たな視点を加え考察するものである。 同書は古代アレキサンドリアで2世紀ごろ成立、古代末期以降西欧に伝播し、挿絵が豊富に付された写本が多数伝来するが、その挿絵の成立や展開に関する研究は未だ等閑な状態にある。また美術史上は同書の挿絵の意義として、キリスト教美術の図像典拠としての機能を認めてきた。しかし申請者は、同書の挿絵の諸相はそれに留まらず、神学や教育分野における多面的受容により生じた必然的帰結と考え、その重層的意義を明らかにする。
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Outline of Annual Research Achievements |
令和5年度においても前年度に引き続き、キリスト教的博物誌『フィシオログス』写本のうち、本研究課題の研究対象であるDicita Chrysostomi版(DC版)を中心に、比較対象となるPhillipe de Thaon版(PT版)など、他のヴァージョンの関連写本の考察も含めて調査分析を進めた。 新型コロナウイルス流行以降、長期間調査に遅れが生じていたこともあり、前年度までに主要なDC版の写本の分析とともに、異なるテキスト系統でも挿絵について関連性がある他の版の挿絵入り写本(セカンド・ファミリー『ベスティアリー』 など)についても調査を進めてきた。その成果として『フィシオログス』からその後継にあたる『ベスティアリウム』も射程に入れての挿絵の変化に関する分析を2023年度西洋中世学会全国大会シンポジウム「西洋中世における人と動物」での発表(「西洋中世における動物表象のトポスについて-動物寓意集(ベスティアリウム)を中心に」)にまとめ、学際的な問題へと繋げることができた。 また当該年度にはコロナ禍で調査が遅れていた、DC版のうち最古の挿絵入り写本であるニューヨーク、ピアポント・モーガン・ライブラリーM.832(12世紀)の現地調査を行なった。本写本についてはこれまでにも準備調査を進め2022年度に研究発表を行っていたが、今回の現地調査で得られた最新情報をもとに、論文を執筆した(大貫俊夫、赤江雄一ほか編『修道制と中世書物 メディアの比較宗教史に向けて』 、2024年所収)。 上述のような調査を進めるなか、《ラインの画帖》(オーストリア国立図書館 Cod. 507、13世紀)のようにDC版を断片的に収録する写本の存在も見出されることとなった。DC版を中心とする『フィシオログス』の包括的写本データベース完成に向けて、最終年度はこのようなDC版関連写本も取り上げ、追加分析を課題としたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウイルスの流行後、海外の研究機関も体制が様々に変更しており、昨年度まで画像資料収集や現地調査に時間を要する状況があったが、現在では各研究機関も通常の体制に戻り、研究対象写本の未入手の画像について、海外からの申請対応も比較的すみやかに進むようになった。コロナ禍をきっかけにこれまでデジタル化されていなかった写本についても、デジタル化が進み、準備的調査が海外からも行いやすくなったこと、参考文献などのデータベースが拡充されたことで、順調に調査を進めることができた。一方デジタル化が進んだことで、中世の貴重な作例である写本のオリジナルを調査することについては、より詳細な研究計画が要求されることとなったが、昨年はコロナ期間中の準備調査を経て、『フィシオログス』DC版写本として最古の作例であるニューヨーク、ピアポント・モーガン・ライブラリーの写本(M.832)を調査することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度にあたる令和6年度は、当初の研究計画に沿って調査研究を行い、データベースの完成へ向けて追加修正を進める予定である。 これまでにデータベースの基礎部分となるDicita Chrysostomi版(DC版)の写本収集と現地調査を優先的に進め、また比較対象としてPhillipe de Thaon版(PT版)写本をはじめとする他のヴァージョンの写本も画像収集と調査を進めてきた。基礎的データベースは完成したが、これらの調査や考察を進める中で、《ラインの画帖》など、従来看過されてきたDC版に関連する写本の存在が明らかとなった。そこで本年は追加調査としてDC版に関連する写本についても調査範囲に入れて包括的なデータベースの完成を目指したい。
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Report
(5 results)
Research Products
(4 results)