Project/Area Number |
19K13011
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 01060:History of arts-related
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
柏崎 諒 早稲田大学, 會津八一記念博物館, その他(招聘研究員) (10779078)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2021)
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Budget Amount *help |
¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2020: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2019: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
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Keywords | 狩野派 / 山下狩野家 / 狩野春笑亮信 / 表絵師 / 藩絵師 / 御抱え絵師 / 狩野岑信 / 粉本 / 深川水場狩野家 / 狩野元俊 / 狩野了承 / 出羽久保田藩(秋田藩) / 狩野春雪 |
Outline of Research at the Start |
本研究では、江戸時代に画壇の中心であった狩野派の組織がいかなる道程によって成形され、変遷していったのかという点について論じる。これまでの狩野派研究では、指導的な立場や中心的な役割を果たしたとされる棟梁等の個々の絵師に注目が集まりがちであった。狩野派という大きな組織を考えるとき、組織の構成員であった表絵師や後に表絵師へと繋がる家系の絵師たち、あるいは諸国各藩の御抱え絵師の動向にも目を向けることが必要である。本研究では主に狩野派という組織の一員であった絵師たちについて考察し、本研究を狩野派の組織についての研究や表絵師や諸国各藩の御抱え絵師などの組織の構成員であった絵師ついての研究の端緒としたい。
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Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は、出羽久保田藩佐竹家(秋田藩)の藩絵師であった狩野秀水家の御子孫が所蔵する粉本群(出羽久保田藩佐竹家御絵師狩野秀水家資料)についての研究を進展させ、成果発表の準備を行った。 狩野秀水家は表絵師である浅草猿屋町代地狩野分家の狩野洞琳波信(延宝7年―宝暦4年〔1679―1754〕)の次男である秀水尊信の名跡を継いだ狩野秀水求信(安永2年―天保8年〔1773―1837〕)に始まる家系である。秀水求信が文化2年(1805)に佐竹家に召し抱えられて以来、代々佐竹家に藩絵師として仕えた。 本研究では、約600点の粉本類からなる本資料の整理、及び研究を2018年度より継続的に実施し、これまでに2本の論考を発表した。2022年4月に早稲田大学會津八一記念博物館において、2021年度までの研究成果を基にした、企画展『お殿様と狩野派ー秋田藩主佐竹氏と藩絵師狩野秀水家ー』が開催された。同展では、本資料から約80点の粉本等を展示し、粉本の活用状況や藩絵師の活動について紹介した。また、同展図録に「狩野秀水家資料の概要と粉本に関わる諸問題―木挽町狩野家及び大名家関係の粉本についての一考察を兼ねて―」を寄稿し、本資料の概要と粉本の役割等について論じた。加えて同展図録には、本資料の全点を収録した「狩野秀水家資料一覧表」が掲載された。同展の開催、及び図録の発行により、本資料の概要を公表する事が出来た。本資料は、一つの家で代々伝わってきた粉本群という点で非常に重要な資料である。本研究成果が、今後の狩野派や藩絵師等についての研究において、基礎資料として広く活用される事を期待したい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2021年度は、2020年度に新型コロナウイルス感染症拡大の影響で実施できなかった狩野秀水作品の調査を予定していた。しかし、引き続く感染症拡大の影響により調査の受入が許可されない場合もあった。そのため、実際に調査が出来たのは秋田市立千秋美術館のみであった。しかし、2018年度から継続していた出羽久保田藩狩野秀水家資料の整理、調査、及び写真撮影を完了し、一覧表を公表する事が出来た。このため、本資料についての研究は一段落したと言える。 また、2021年度は表絵師の家系である山下狩野家3代目の春笑亮信(正保3年―正徳5年〔1646―1715〕)の新出作品の調査をする事が出来た。山下狩野家は元俊秀信(天正16年―寛文12年〔1588―1672〕)にはじまる家系である。元俊は狩野派の中でも特徴的な画風を有していた。その画風が子の春雪信之(慶長19年―元禄4年〔1614―1691〕)、孫の春笑亮信と継承されていたことが確認出来た。 なお当初の計画になかったが、新出作品を調査する事が出来た狩野随川岑信(寛文2年―宝永5年〔1662―1709〕)及び、岑信を初祖とする奥絵師の家系である浜町狩野家の研究も2021年度に引き続き進展させた。 当初の予定では、本研究の成果は2021年度に成果を発表する予定であった。発表が遅れた理由としては、感染症拡大によって調査が行えなかった事、出羽久保田藩狩野秀水家資料が予想を超える情報量であった事と、新出作品の発見が挙げられる。しかし2022年4月現在で、いずれの研究も既に成果を発表済み、あるいは発表の準備が整いつつある段階である。そのため、研究の進捗状況はやや遅れているとした。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、これまでの研究成果の発表を中心に研究を進めていく事とする。2020年度に予定していた狩野秀水作品の調査については、今後も調査受入の可否の見通しが立たない。そのため、作品調査は一端取りやめる事とする。ただし、情勢の変化と受入先の判断によっては、調査を行う。 そのほか、2020年度と2021年度に調査出来た2点の新出作品の研究を通して、江戸時代中期の狩野派の画風および組織構造の研究を進展させたい。岑信は、後の徳川六代将軍家宣の西の丸入城に従い、狩野総上席とされる。しかし岑信没後の浜町狩野家は、小普請組入りしている時期がある等、幕府内での格付けが安定していなかった。浜町狩野家の格付けの変遷について考察することは、表絵師や藩絵師といった狩野派の組織構造を考察する上で重要と言えよう。また春笑亮信の新出作品を通して、江戸時代中期の狩野派の画風についての研究も進展させる予定である。 元禄期の狩野派については、これまで研究対象とされることが少ない分野であったが、近年は研究が進展しつつある。最終的には、本研究を江戸時代中期の狩野派の組織構造及び、画風についての研究につなげることを目標とする。
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Report
(3 results)
Research Products
(3 results)